㉕ほぉ、オレに挑戦状か
屋上に足を運ぶと、北上先輩はベンチに座って雲一つない快晴の空を眺めていた。
「来ましたよ北上先輩」
「お友達のお見舞い中なのにごめんね、レイレイ」
「いいんですよ」
オレは北上先輩の隣に座ると缶の紅茶を差し出してきた。
「フェリスちゃんの奢りだよ」
「どうも」
それを受け取ると、北上先輩は深いため息を出して言った。
「まさかさ、偽りの魔力じゃなくて〈深層支配〉だったなんてね……レイレイから聞いた時は愕然としちゃった……」
「そういう時だってありますよ」
「犯人は魔術師でした……ってイギリス魔導管理局に報告したら大目玉だったしさ……いるわけないだろう魔術師なんて寝言は寝て言え。って言われたし……」
どうやらオレを呼んだ理由が上司に叱られたのでそれを愚痴を聞いてほしいようだ。なら、静かに話を聞いていよう。
「しかも、事件のことよりアタシが上級魔導使ったことに話を置き換えるしさ……日本魔導管理局なんか愛和魔導高校のスカイラクロス部員たちの事情聴取を行わないとか言うんだよ? 信じられるレイレイ? アタシに何をさせたかったのか意味わかんなくなるよね?」
まぁ確かにおかしい話ではあるが……
憤慨している北上先輩は既に蓋が空いている缶の紅茶を一口飲む。
「やってくれたことは都市伝説サイト閉鎖をしただけだし」
「……閉鎖されてないですよ? 都市伝説サイト」
「はぇ? 嘘?」
北上先輩は急いで携帯端末で都市伝説サイトを検索をした。
「……出てくるのは仕方がないけど……なんで中に入れるの?」
ページが更新されて今までと変わりなく都市伝説を閲覧できるようになっていた。
「なんで? 話と違う……即刻閉鎖すると聞いたのに……」
「まだ申請されてないとかでは?」
「アタシ、この管理者と直接離して昨日の内に閉鎖を行うことは可能だって言ってたのに……」
「なら、そこのフェンスの上に立ってる奴に聞いてみるといいぞ」
オレは視線を移して睨む。
「えっ!?」
オレたちの座っている正面のフェンスの上に、真っ赤なフード付きローブを着た者がこちらを静かに見ていた。
「貴方が、〈深層支配〉を使う魔術師ですか?」
「…………」
北上先輩のままその者に問うが、何も答えない赤いフードの者。
「力づくで話を聞いた方が良さそうですね!」
北上先輩は黒い魔導デバイスを操作すると、ギリザイエへと姿を変えて奴に魔弾を放った。
魔弾は奴の腹部に当たるも、そのままローブに穴を開けて貫通していってしまう。
「中に人がいない?」
「そのようだな」
それでも崩れることなく人が着ているように佇む赤いローブから、何かをこちらに向けて発射してきた。
飛んで来るものは、オレとギリザイエの間を通ってベンチの背もたれに突き刺さると、赤いローブは燃えて消え去った。
「何が飛んできたの?」
「紙のようだな。しかもなにか書かれている」
オレが抜き取って書かれている内容を読んだ。
「……ほぉ、オレに挑戦状か……」
「何? なんて書いてあるの? ……柊零一君へ…………君の全てがほしい……八月に東京で待っている……君の秘密を知っているから逃げても無駄だ……影の主よりって誰?」
影の主……まさかとは思うが……一応は知らないふりをしておくか。
「さあな。オレがほしくば、向こうから今すぐ来てほしい話なんだがな」
オレはその紙を燃やして投げ捨てる。
「いいだろう。行ってやろうではないか東京に」
この次でこの章は終わります




