⑱〈海龍連脚(かいりゅうれんきゃく)〉
重い空気が漂うスタジアムに、柴咲の叫び声が轟いた。
「ひ、姫子……」
「奏っちは動いたらダメだよ……」
片足を上げて構える柴咲は奏に攻撃しようとした選手を睨む。
「悠子と戌井さんたちは、我が校の選手たちの避難をさせてほしいの頼める?」
「わかった」
「「「わかりましたわ」」」」
桐島先輩たちは空を飛んで避難誘導を始めた。
だが、それを阻止しようと愛和魔導高校の選手たちが、クロスデバイスを使って桐島先輩たちに攻撃しようとしていた。
「させないわ! 〈電撃連槍〉」
電撃を纏った小型の槍たちを飛ばして阻んでいくと、桐島先輩から栞に目線が機械のように次々と動き襲いかかる。
「行かせないよ! 〈岩砕一蹴〉!」
柴咲が睨んでいた選手も栞に襲い掛かろうとしたが、地面を勢いよく踏みならした前蹴りをお見舞いしフィールドの壁まで吹き飛ばした。
「…………」
「なっ!?」
壁が荒々しくへこみ、普通なら骨折して泣き叫んでもおかしくないほどの格闘魔導だったのだが、痛がる素振りも見せないでジッと柴咲を見ていた。
「……ぽいうytれwq……」
ボソリと何かを呟くと、彼女の右腕から血のような赤黒い液体が吹き出した。
その吹き出た液体が右腕に纏わりつくように覆っていき、指先が鋭く尖った槍のような右腕に変貌した。
「zxcvbんm」
また何を言ってるのかわからない言葉を発しながら、変貌した右腕を前に差し出して柴咲に向かって飛行魔導で突っ込んでいく。
「くっ!?」
あまりの速さに間一髪のところで避ける柴咲。
「危ない危ない……殺す気満々じゃないか……なら!」
柴咲は精神を集中させて魔導陣が展開をして、地面を力強く踏み込み構える。
「行くよ……第三十式柴咲流格闘魔導〈轟流岩連波〉!!」
空虚に蹴り込むと地面が大きく揺れ、尖った岩が次々と波のように生えていき右腕が槍となった選手を襲いかかる。
「…………」
〈轟流岩連波〉を右腕の槍で突くも、強固な岩の波に傷一つ付けることなくあっけなく空に吹き飛ばされた。
「ゆjhmn」
空に舞い上がりながら言葉を発し体勢を整えると、今度は赤黒い液体が全身に纏わせた槍に変貌させて柴咲に向かって落下していく。
「全く、何なんだろうねその力は……特ダネ級の秘密がありそうだから取材したぐらいだよ。でもね……」
柴咲に多大な量の魔力が集まっていく。
「そんなことが出来ないほど、ボクは怒ってるよ……!!」
前髪で隠れていた片眼が青く光ると、〈轟流岩突波〉の魔導陣よりも一回り大きい魔導陣が足元に展開された。
そして、また片足を上げる構えをとって柴咲は言った。
「姫ノ神式格闘魔導〈海龍連脚〉!! はあああ!!!」
落下してくる槍に一撃の蹴りを入れ込むと、そこから二撃目、三撃目、四撃目と目にもとまらぬ速さで槍を浮かせたまま蹴っていき、纏っていた赤黒いモノが粉々になって剥れていく。
「これでー! 最後―!」
纏うものがなくなり、体が露となった選手の腹部に向かって飛び蹴って、腹部に足を入れた状態で高く上りあがると締めかかりにかかと落としで蹴って地面に叩きつけた。
「よっと」
綺麗に着地した柴咲は、白目を向いて口から泡を吹く愛和魔導高校の選手に向かって軽い口調で言った。
「まだ、本気じゃないから安心して」
姫子かっこいい!!




