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魔導高校生の魔王様  作者: 伊吹わなご
第二章:都市伝説編
38/75

⑯なんか雰囲気が怖いね

「あれー? お兄ちゃんなんで制服なんか着てるの……? 学校行くの……?」


 スカイラクロス部練習試合当日。大きな欠伸をして、ピンク柄のパジャマを着たライオン――もとい寝癖がそこらかしこにできている椛がリビングに入ってきた。


「今日は零君のお友達が部活動の練習試合に出るから、それの応援なんだって」


「へぇー……」


 母さんの言葉に気のない返事をしながら、朝食を食べているオレの横の席に座ると、眠たそうにオレに寄りかかってきた。


「起きろ、椛。食べにくいんだが」


「いいじゃーん……お兄ちゃんあったかいんだもん……」


 全く、休みの日の寝起きはいつもこうだから困ったものだ。


「あらあら、朝ごはん食べれる椛ちゃん?」


「うーん……もうちょっと起きたら食べる……ところでさ……お兄ちゃんの友達って何部なの……?」


「スカイラクロス部だよ」 


「へぇー……相手の高校は?」


 ……しまったな、奏から訊くのを忘れていた。


「すまん、どこの高校かわからない」


「珍しい……まぁどこでもいいか……スカイラクロスで中部魔導高校に勝てる魔導高校なんて県内にいないから……はぁ~……眠い……」


 中学校で魔導運動部に入っているだけあって、そういった情報は詳しいんだな。


「そこまで強いとは知らなかった」


「機械いじりとか……家の駐車場を改造してばかりのお兄ちゃんとは違うのさー……へへー……」


 ……どこか勝ち誇って笑っている椛には、少しばかり痛い目に遭ってもらい目覚めてもらおうか。


「母さんごちそうさま。行ってくるよ」


「あ!? あーあーあー! あだーーー!!!!」


 オレが急に立ち上がったので、寄りかかっていた椛は盛大に椅子から転げ落ちた。


「はーい、気をつけていってらっしゃい。ほら椛ちゃんも寝てないで、ちゃんと起きて朝ごはん食べてね」


「お、お兄ちゃんのせいなんだけど……」


 いつもの登校時と同様、ロードバイクを玄関横の駐車場から出して学校へと向かった。

 

 休みの日おかげもあり交通量が少なく快適にロードバイクを漕ぎ進めていき、いつもの登校時間よりも早く学校についてしまった。


「あ、零一君だ。おはよー!」


 どこで暇をつぶそうかと考えながら校庭を歩いていると、スカイラクロスのユニフォームを着た奏が、試合前のウォーミングアップでランニング中だったのか走りながら挨拶をしてきた。


「あれが魔弾を蹴って分裂させた一年生……」


「近くで見るとかっこいいじゃん!」


「紅林の彼氏はイケメン、と」


 奏と同じユニフォームを着た数人の女子部員たちが、足を止めてオレをまじまじと見てきた


「あーもう! 違いますよ先輩! 友達です友達!!!」


 顔を真っ赤にしている奏に、女子部員たちはニヤニヤ笑っていた。

 冗談を言われて遊ばれているのが目に見えているが、奏が真面目に返答するので面白がっているんだろうな。


「こらー! サボってんじゃなーい!」


「うわ! キャプテンじゃん!」


「ほらほら、ランニングに戻りますよ!」


 大慌てでランニングに戻る女子部員たちを横目に、奏はオレに軽く手を振ってからランニングに戻っていった。


「なるほど、柊君が朝からモテモテになっている……っと」


 柴咲の声がする方に向くと、携帯端末のカメラでオレを撮影していた。

 

「あのな、柴咲。オレを撮っても何もないぞ」


「えっ? 結構需要あるよ?」


「どこに?」


「それはプライバシー保護のため言えないよー♪」


 軽々とした口調ではぐらかしてくる柴咲にオレは足を向けた。


「なぁ柴咲」


「あ、ちょ、ちょ柊君?」


 柴咲は何かを察知したのか後ずさりしていくが、校舎の壁に背中が付いて冷や汗を掻き始めた。

 それでもオレは歩みを止めることなく近づいて、柴咲を覆うように校舎の壁に片腕を付けた。

 

「プライバシーの保護というなら、オレの写真を撮るのもそうなるよな?」


「は、はひ、そうでしゅね……」


「なら、消してくれるか?」


「わ、わかりましゅた……」


 頬のあたりを朱色に染めている柴咲が活舌悪く言うと、持っている携帯端末からなぜか音が鳴った。


「……お前な……」


「見せないから! 絶対見せないから!」


 ったく。


「一枚だけだぞ?」


 オレの言葉に首が折れてしまいそうな勢いで何度も縦に振ると、柴咲から離れた。


「さてと、練習試合の開始までどうする――っ!?」


 ドックン! と不愉快な感覚がどこからか強烈に伝わってきた。


「どうしたの柊君……? 凄い怖い顔してるけど……本当は撮ったこと怒ってる?」


「いや、そうじゃない……」


 何だ今の感覚は……まるで悪魔でも呼び起こしたような感覚に似ているぞ。

 

 気を張って周囲を見渡すが、それらしい人物はいなかった。

 すると、一台のバスが中部魔導高校に入ってきた。


「あ、練習試合相手の高校だね。愛和魔導高校……だったかな?」


 バスが校庭で止まると、規律よく愛和魔導高校の女子生徒たちが降りてきた。

 緊張でもしているのか、降りてくる女子生徒全員が無表情で、無駄な雑談もなく黙々と道具をバスから降ろしていた。


「なんか雰囲気が怖いね」


「そうだな」


 すると、さっき奏たちに叱っていたラクロス部のキャプテンと栞さんが、対戦相手校の顧問らしき大人の女性に挨拶をしに近づいていった。


 互いに会釈をして話し始める栞さんたち。

 しばらく眺めていたら、栞さんが頻りにオレを見てきていた。


〈何かありましたか?〉


 〈魔法念話コールディング〉でどうしたのか訊いてみたが、栞さんから返答がなかった。

 話に集中したいのか? ならどうしてオレを見てくるんだ?


「…………」


 オレが栞さんたちに近づこうとしたが、その前に会話が終わったようで顧問の女性から離れていった。


「後で訊いてみるか……」

栞さんはなんで零一を見ていたんでしょうね?

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