⑭ある!すっごいあるよー!バーンってぐらいあるよ!
食事も終わり次の授業までの時間を、オレは恭介から預かった黒い魔導デバイスを解析をすることにした。
「誰の魔導デバイスですか?」
生徒会室の端末機を借りて準備をしていたら、栞さんが後ろから覗いてきた。
「恭介が朝拾ってきたんですよ。偽りの魔力を持った者と魔導師が戦ってたらしくて、事が収まった時に落ちてたらしいですよ」
桐島先輩や戌井さんがいたので、ギリザイエの名前は出さないので、濁しながら栞さんと会話をしていく。
「ということは、魔力を分け与えた魔導師がわかるかもしれませんね?」
栞さんと話しながら、チラッと北上先輩を見ると、何かを呟きながら小刻みに首を横に振っていた。
「それは中身を見ないとわからないですね。恭介はどっちが落としていったか知らないと言ってたので、早速見てみ――」
「――レイレイくん。ちょっと質問なんだけどさー?」
いきなり魔導デバイスとオレを遮るように北上先輩が顔を出してきた。
「北上さん、近いですよ?」
「は、はひぃ!」
青ざめながら返事をした北上先輩は、サッと身を引いた。
一体どんな顔して言ったのか興味はあるが、見ないほうがいいと本能が訴えているので、オレは北上先輩のほうを向いた。
「それで? 質問とは?」
「あー、えーっと、ね?」
人差し指を頭につけて首を傾げるポーズをするぐらい余裕のある態度をしてくるのだが、今は普通に手に顎を乗せて考えている。
「ないんですか? だったらこれの――」
「――ある! すっごいあるよー! バーンってぐらいあるよ!」
今度はオーバーアクションをして、魔導デバイスから目を離すようにしてくる北上先輩は必死そのものだった。
「その、バーンってぐらいある質問はなんですか?」
「えーっと……ねぇ?」
同じことの繰り返しだな。そんなにこの魔導デバイスに触れてほしくないのか、しょうがない。
「はい、北上先輩」
オレは魔導デバイスを持って北上先輩に差し出した。
「…………」
何を呆けているんだ? 早く受け取ってほしんだが。
「北上先輩の魔導デバイスなんですよね? 恭介がこれを渡す前に、北上先輩みたいな人も避難誘導手伝ってくれたから遅刻せずにすんだと言ってたので、もしかしたらと思って訊いてみたんですが?」
もちろん嘘である。
「え? そ、そうなんだよー! 避難誘導してたらさー、人とぶつかって落としちゃったんだよねー。そーかそーかキョウキョウくんが拾ってくれたのかー」
酷過ぎる棒読みに栞さんは何か気づいた面持ちなのはいいが、長机でお茶を飲んでいる戌井さんと桐島先輩は怪訝な顔をしてオレたちのやり取りを見ていた。
強引すぎるが、渡してしまえば問題はないだろう。
〈次は落とすなよ、ギリザイエ〉
「えっ!?」
オレは魔導デバイスを渡すと同時に〈魔法念話〉を使って忠告すると、北上先輩は目を見開いて受け取った。
「えっ? えっ? 何、今の?」
自身のもう一つの顔が知られてしまったことよりも、〈魔法念話〉で話されたことに意識が向いているようで、右へ左へと顔が激しく動いている。
オレが何をしたのかわかった栞さんは、口に手を当てクスクスと笑っていた。
「どうしたんですか北上先輩?」
「なんでも……ないよ?」
少々悪戯が過ぎたようだ。
「そうですか。なら少し早ですけどオレは教室に戻りますね」
「う、うん。ありがとうね、レイレイくん」
オレは席に立ち、北上先輩の横を通り過ぎる瞬間に、
「……放課後に校舎の屋上に来い。ギリザイエとしてな……」
「っ!!」
それだけを言ってオレは生徒会室を後にした。
露骨に邪魔するからバレちゃったやーつ




