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魔導高校生の魔王様  作者: 伊吹わなご
第二章:都市伝説編
35/75

⑬てへっ☆

 一時限目が終わり、二時限目は実習室での授業のオレは席を立って教室を出た。

 廊下を少し歩くと、北上先輩が何か探るように向こう側から歩いてくる。


「どうしたんですか? 北上先輩?」


「ひゃあ!? レイレイくん!? どうしてここに!?」


 酷い言われようだ。ここは一年生の階なのだがな。


「あ、ごめんね。ここは一年生の階だったね。てへっ☆」


 コツンと頭に拳を置いてウインクする北上先輩。

 その表現の仕方は古くないのか? と思ったが口出すのをやめた。


「それで? 一年生の階に何か用なんですか?」


「えっと、レイレイくんのお友達のキョウキョウくんは教室にいる?」


 恐々とは? いや違うな、オレの友達だから恭介のことか。


「あいつなら実技魔導の授業なんで闘技場なはずですよ」


「よしっ――じゃなくて、ありがとーレイレイくん!」


 北上先輩は妙に嬉しそうな表情で、オレに手を振りながら廊下を走っていった。


「……なんなんだ?」


 疑問に思いながらも、授業に遅れないように廊下を再び歩き出す。


「…………」


 今度は栞さんが廊下の柱の陰に身を隠し、顔だけ出してこちらを覗いている。そこを通り過ぎる生徒からは好奇の眼差しを向けられているも、本人は全く気にもしてない様子に、オレはため息をついた。


「本当になんなんだ……栞さん、何してるんですか?」


「零一くんに謝りたくて……」


「何をですか?」


「昨日酷い態度取ったから……」


 酷い態度? ……あぁ、あれが酷い態度になるのか。可愛い人だな。


「気にしてませんよ」


「本当に……?」


 怒られて反省している猫。とでも表現すればいいのか、今の栞さんはそんな感じになっている。


「はい」


「お昼も生徒会室で一緒に食べてくれる?」


「行きますよ」


 そう言うと、パッと笑顔に戻って身を隠していた柱の陰から出てきた。


「じゃ生徒会室で待ってるからね♪」


 栞さんは機嫌良く廊下を歩いていくと、戌井さんがすれ違って歩いてくる。


「あら、零一様ごきげんようですわ。どうして会長様がここにいらっしゃっていたのですか?」


 うぅ……どうしよう……


「ん?」


 今何か聞こえたようなしたが、気のせいか?


「どうなされたのですか零一様?」


「あ、いや、なんでもない。さっきの質問だけど、栞さんはお昼の約束をしに来ただけだよ」


 オレの言葉に、微笑みを見せる戌井さんが言った。


「本当に仲がよろしいのですね」


「そうか?」


 どうやって言い出せばいいんだろう……


「…………」

 

 また何か聞こえたな。


「零一様? ご気分でも優れないのですか?」


「そうじゃないんだが……戌井さん、頼みごとしていいか?」


「はうあ!? 零一様が直々に申し出をしていただけるなんて……この飛鳥に何なりとお申し付けください!!」


「そ、そうか。じゃあ、オレたちのことをコソコソと見ている人を連れてきてほしいんだけどいいか?」


 ヤ、ヤバい! バレた!


「そこですわね! この飛鳥から逃れられませんわよ!! オホホホホ!!」


 加速魔導を使って追う必要があるのか? というぐらいに洗礼された加速魔導で廊下を疾走する戌井さんはあっという間にいなくなった。

 桐島先輩に捕まらないようにヴェレンティアナに祈っておこう。


「ふぅ、これで授業に行けそうだな」


 なんとか遅れずに授業を受けることはできたが、


「全く、魔導を使って廊下を走るとは言語道断だぞ戌井」


「すみませんでした……」


 やはりヴェレンティアナ程度の女神に祈っても無駄だったか。戌井さんは桐島先輩に捕まってしまい昼休みに生徒会室で叱られていた。


「悠子。戌井さんも十分反省しているからここで終わらせて、お昼ご飯食べましょう?」


 栞さんが優しく宥めると、桐島先輩は一つため息を出して言った。


「そうだな。戌井、次は気を付けろよ?」


「はい、わかりました」


 桐島先輩は鋭い目つきを、オレに向けてきた。


「それで、柊くんは何かしたのかい?」


「さぁ? 知りません」


 素直に答えると、鋭い目つきが緩んだ。


「ほ、本当か?」


「ないですね」


 珍しく生徒会室で昼ご飯をせわしく食べている北上先輩が、オレに何か言いたそうな目を向けているがな。

 

「話は変わりますが、栞さんに伺いたいことがあったんですよ」


「なにかしら?」


「今週の土曜日に予定ってありますか?」


「土曜日ですか? 何かあったかしら……少し待ってくださいね」


 栞さんは箸を置いて席を立ち、事務机に置いてある携帯端末を手に持って予定を確認した。


「何もないですね」


「じゃあ、その日にスカイラクロス部が他校を呼んで練習試合を行うらしくて、奏が試合に出るんですよ。一緒に応援しませんか?」


 オレの誘いに栞さんは満面の笑みで頷くと、戌井さんも桐島先輩もにこやかな表情でオレを見ていた。

 ただ、北上先輩だけはまだ落ち着かない様子をしてソワソワしている。


「飛鳥たちも応援に参加しますわ」


「紅林は朝早く学校に来て、夜遅く帰っているぐらい真剣に部活動をしていたのを見ているからな。私も応援しに行こうかな」


「それでは土曜日は紅林さんの応援をしましょうか!」

テヘペロ☆

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