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魔導高校生の魔王様  作者: 伊吹わなご
第二章:都市伝説編
33/75

⑪私の名前はギリザイエよ。

 偽りの魔力を吸っていかれる金桐を再び魔眼で見ると、ノイズが徐々に収まっていくのがわかる。

 しかし、吸い出した魔力はどうなるのだろうか?


「んん、はぁ……こんなものかしらね」


 偽りの魔力を吸い切ったらしく、喉元から口を離して口元に垂れる血を指で拭った。


「超小型発信機も一緒に抜いてあげたから、二度としないと約束できる?」


 金桐は必死になって何回も頷くのを見た女性は、ニコリと笑って光系統魔導リュミエールを発動した。


「ま、まだ何かする気なの!?」


「ちょっと質問に答えてほしいから嘘をつけない魔導を発動しただけよ」


 そう言うと、金桐の瞳が無気力状態となり、それを確認した女性は質問をしていく。


「偽りの魔力の持ち主は誰なのかしら?」


「わかりません……朝起きたら急に手に入ってました……」


「……はぁ、またか……毎回その答えで飽きちゃうわね……ありがとう、そのまま眠ってなさい」


 そう言うと、金桐に向かい光の粒子を撒いた。

 降りかかる光の粒子を浴びた金桐は、ゆっくりと瞳を閉じてそのまま座り込み眠りにつく。


「これでこの子は悪い夢を見てたと思うわね。あとは……っていつの間にか駅が綺麗になってるのだけど? 貴方がやったの?」


 突き刺さった車両や、粉々にした車両も元の状態になっていることを訊かれたが、魔法だと知られないようにオレは肩をすくめてはぐらかした。


「……へぇ……お姉さんにそういう態度を取っちゃうんだ君は」


 妖美な言葉使いに上目遣いをして男を誘うような仕草をしてくるが、そんなこと気することもなくオレは訊いた。


「それで、偽りの魔力とはなんだ?」


「もう、少しはドギマギしてほしいのだけど……いいわ教えてあげる。偽りの魔力というのは、有魔力者メイジスト無魔力者ノーメイジ関係なく魔導師が分け与えた魔力のことよ。そんなことをしてしまえば、有魔力者メイジストは性質の違う魔力同士がぶつかって体を壊してしまうし、無魔力者ノーメイジは慣れない魔力のせいで精神が崩壊してしまうわ」

 

 なるほど。だから金桐の体にノイズが走っていたのは、自分ではないダレカの魔力を入れらているせいで精神が乱れていたということか。


「だが、その魔導師が見つからなくて困っているようだな」


 オレの質問に女性はどこかやるせない顔をして頷く。

 

「この子を合わせてこれで五件目になるけど、他の人たちもこの子が言っていた答えをしてくるから中々尻尾を捕まえさせてもらえないの。わかっているのは都市伝説サイトを使ってやり取りしていたということだけ。この子も護符を作りたいが為に、掲示板に質問を投稿していたの。そしたらその魔導師が、魔力を貸してあげるからここに来てほしいって誘惑していたから、昨日超小型発信機を埋め込んで見張ってみたけど、あの後直接家に帰ってしまって接触した記録がないの」


 あのサイトにそんなことが起きていたのか。奏にも注意しておかなければな。


「それで私は吸血をすることで誰の魔力かを認知できる『希少能力者ゼルテン』なのだけど、それを使ってもいまいちわからないのよね……ってどうしたの君?」


「いいのか? 希少能力者ゼルテンはあまり人に言いふらすようなことではないと思うが?」


「その真紅に光らせたままの魔眼で、そんなこと言われたくないわ」


 軽い調子で女性は言った。

 何だバレていたのか。


「自己紹介遅れたけど、私の名前はギリザイエよ。柊零一くん」


 握手を求めてくるギリザイエと名乗った女性は、なぜかオレの名前を知っていた。


「どこでオレの名前を?」


「え? あ、あれ~? な、何で知ってたんだろうね?」


 アハハ、と乾いた笑いをオレに向けてくるギリザイエに違和感を覚える。

 なんだろうか、見た目と言動を無理やり年上に引き上げているような感覚だ。


「まぁいいか。それでギリザイエは日本魔導管理局の者なのか?」


「いえ、違うわ。私はイギリス魔導管理局所属よ。とは言っても依託だけどね。こういった特殊な事例にしか呼ばれない魔導師なの」


「なら、詮索は控えた方がいいな」


「そうしてくれるとありがたいけど、何か気づいたら連絡してほしいわ。はい、私のプライベートナンバーよ」


 ギリザイエはそう言って携帯端末の番号が書かれた紙切れを渡してくる。

 しかも、ハートマークが散りばめられたファンシーな紙切れを。


「それじゃあね、レ――柊くん♪」


 ギリザイエはオレに投げキッスをすると、飛行魔導を発動して駅のホームから飛び去っていった。

 それを眺めていたオレに、何か冷たい目線が突き刺さってくる。


「鼻の下伸びてるわよ? 魔王様?」


 栞がホームに上がってくるなりジト目を向けて言ってきた。


「してないだろ」


「ギリザイエさんだっけ? 綺麗な人だったね?」


「あのな栞――」


「あ、亜沙美ちゃん!?」


 遅れてホームに上がってきた楯宮がオレの言葉を遮るように叫んで、眠っている金桐に急いで近寄った。


「大丈夫寝ているだけだ。起きたら伝えてやれ、悪い夢でも見ていたと」


 オレの言葉に楯宮は静かに頷いて金桐を抱きかかえた。

偽りの魔力を分け与えた魔導師とは一体誰なのか?

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