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魔導高校生の魔王様  作者: 伊吹わなご
第一章:魔導高校入学編
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⓶それは……秘密です♪

 国立魔導大学付属中部魔導高校。

 魔導師育成に特化して創立された高等魔導教育機関。


 魔導科と機械科の二つの科が創設されており、魔導大学の進学率、魔導系企業への就職率、そのどちらも全国トップクラスをほこるエリート魔導高校にオレは入学した。

 校風は実力主義な面があり、以前体験入学で訪れた際に魔族衛士の血気盛んな訓練所と雰囲気が似ていたというのが第一印象だった。


 それだけ競争力を促すために厳しく教え育てるというのは、どの世界も原理は同じなんだろうな。

そんなことを思いながら、入学式の時間まで校内を一人で歩いていると、背後から視線を感じて足を止めた。


「なにか用ですか?」


「えぇ、そうです。新入生ですね? 入学式が行われる講堂は反対側ですよ」


 注意はされているが、棘が全くない美声に振り向くと、腰まで届きそうな直線的な艶やかな黒髪に、金色の瞳。鼻筋はとても整っていて、顔立ちに欠点が見当たらない美少女が、凛々しく歩いてこちらに近づいてきた。


「すみません。今、戻ります」


「待ってください。まだ、時間がありますから、折角ですしお話しながら戻りませんか?」


 優しい笑みを向けながら、提案されるのはいいとしよう。興味があるというのがひしひしと伝わってくるのだが、まぁいいだろう時間があると言っているのだから付き合うか。


「まずは自己紹介といきましょう。私は中部魔導高校の生徒会長をしています辰弦栞、書き方は干支の辰と弓の弦と書いて辰弦です」


 そう名乗る辰弦栞(しんげんしおり)


 オレは辰弦という名に思い当たる節があった

この世界には、魔導に優れている血を持つ家系というのが各国に点在している。そして、この日本にも存在し、苗字に干支が入っている家系がそれにあたる。


 そして彼女は五番目の干支、辰の名を持つご令嬢ということだ。


 一般家庭の子として生きる今のオレにとっては、普通なら門前払いされるような相手に自己紹介されたのか。これは光栄なことだ。

 なら、誠意を持って名乗り返すしかないだろう。日本の古き家柄の人間は礼を重んじているらしいからな。


「自分は、機械科に入学した柊零一です」


「えぇ知ってるわ」


 でなければ話してこないだろう。と言葉では遮らず心の中で呟き、生徒会長の言葉に聞き入る。


「中部魔導高校史上初。自由創作試験でメイジカートリッジだけを制作して、満点合格した新入生……ですからね」


 この地球は魔導を刹那的に使用するために発展した魔導具が二つある。

 一つ目は、魔導の詠唱を高速処理して発動権を譲渡させる、魔導デバイス(正式名称・メイジインカンテーションデバイス)という魔導具。

 二つ目が、魔導を作るための魔力文字(メイジ)を内包させるデバイスの記憶部品、メイジカートリッジまたはストレージと呼ばれる魔導具だ。


 なぜ魔道具によって発動させたり、内包しないといけないのか、不思議に思っていた。

 地球の人間は記憶力の限界値の低さ、体躯の悪さがあって魔導具に頼っているのかと思ったが、その考えは実際に使ってみて間違いだと気づいた。


 この二つを駆使して魔導を発動させた場合、かつて魔王をしていた世界での一般魔族による魔法の詠唱と発動の時間に比べ何十秒――何分も上回り、かつ発動した時の魔力消費がより少ない量で済んでいたのだ。

 実に画期的な進歩をした世界なのだと、衝撃を受けた。

 それにしても、型式の古いメイジカートリッジを手本として制作しただけで満点だったのか。しかも、史上初ということなら嫌でも興味が湧いて、生徒会長が直々に話しかけてくるのは道理だな。


「とてもスムーズに魔導文字(メイジ)が読み込まれ、発動中の放熱も少量でとても扱いやすい。そう先生方が褒めていましたよ」


「上手くいってよかったです」


「ただ……」


「?」


「魔導実技試験が、合格ラインのちょっと上、というのはいただけませんけどね」


「あぁ、それは……ですね」


 事情が事情だから適当に――


「――適当に言い訳しようと思っても駄目ですよ」


 と、思っていたことを的確に指摘された。

 心を読んだのか?魔導の発動はしてないはずだが……あぁなるほど……ここは素知らぬ振りでもしておこうか。


「なにか、しましたか?」


「それは……秘密です♪」


 にこりと笑ってはぐらかす生徒会長。

 そういう態度を取るということは、深く追及しないでという意味だろう。なら追及はしないのが礼儀だ。


「生徒会長の様なお綺麗な方にそう言われてしまえば、それ以上は聞けませんね」


「へっ!?」


 美声の持ち主の素っ頓狂な声は、美声のままというのを初めて知った。


「ど、どうしよう……面と向かって……綺麗って……あぁ……」


 母さんから「綺麗なことやもの、人を見たら素直に褒めてあげなさい」と教わっていたから褒めてみたが、これはダメだったようだ。顔を真っ赤に染めて髪の一部分を指でクルクル回しながらボソボソと喋ってしまっている。


『新入生およびそのご家族の方に連絡いたします。まもなく入学式の時間となりましたので、まだ講堂に入られていない方がいましたら速やかにご入場くださるようお願いいたします』


 入学式の時間が迫っている知らせの校内放送が流れると、生徒会長はハッと我に返り、


「え、あ、もうそんな時間だったのね! ひ、柊君! 私は先に行く――行きますから遅れないようにしてくださいね!」


 言葉に詰まりながらも、生徒会長の足元にはいつの間にか加速魔導を展開していて、颯爽と講堂に向かっていってしまう。

 いくら完璧に見える人でも、焦ることは焦るんだなと思いながら、オレも遅刻しないように軽めに走って講堂に向かった。


ヒロインは年上のお嬢様です

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