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魔導高校生の魔王様  作者: 伊吹わなご
第二章:都市伝説編
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⓷お友達ね


 昼休み。

 チャイムと同時に戌井さん達がB組の教室に迎えに来て、彼女たちのクラブ活動室へ向かった。

 場所は校内らしく廊下を歩くが、見知った道筋となっていた。

 それは奏と恭介も分かっていたようで、オレを見てくる。


「零一、この先ってよ……」


「あぁ、生徒会室だな……」


 何かの間違いではない限り、生徒会室がクラブ活動室になることはないだろうが、戌井さん達は迷うことなく生徒会室に向かって前を歩いている。


「さぁ着きましたわ。ここが飛鳥たちのクラブ活動室ですわ」


 戌井さんが両手を広げて自慢するが、生徒会備品室とネームプレートには書かれていた。

 横を見れば当然、生徒会室がある。

 つまりここは、学校で扱われた資料や、学校行事などで使う道具などをしまっておく場所ということになるよな? 狭くないのか?


「こんな人数入れるの?」


 奏がオレの思っていたことを訊くと、戌井さんは自信たっぷりに頷き扉を開けた。


「うん、美味しい。いつも美味しい紅茶をありがとう、佐伯さん」


 白のテーブルに白い椅子に座る栞さんが優雅に紅茶を飲んで、メイド服を着た女性に褒めていた。


「「「生徒会長ーーーー!?」」」



 しかも、都会にありそうなカフェの内装をそのまま持ってきたような雰囲気に生徒会備品室はなっていた。



「あら? 来ましたね」



「い、いつからこんなことに!?」


「私も使用してもいいという条件で、ゴールデンウイーク中に改装しました」


「ほぼ毎日お昼食べに来てたのに気づかなかった……」


 職権乱用どころの騒ぎじゃない、勝手に校舎を改造していいのか?


「火の使用は禁止ですが、ちゃんと校長先生にも許可を得ていますよ」


 きらりと栞さんの金色の瞳が光る。

 奏の言っていた噂は本当みたいだな。

  

「ということですから、どうぞ遠慮なくお入りください」


「やったー! こんなことにカフェだなんてサイコー!」


 柴咲が一番にカウンター席らしく作ってある机に座り、オレたちはテーブル席らしく作ってある背もたれが付いた長椅子に座った。


 全員が着席を確認した戌井さんは咳払い一つして喋り始めた。


「それでは、皆さん。『零一様を敬う会』に起こしいただき、ありがとうございます」


 そんな名前が付いているのか、背中がむずがゆいな。

 

「ここで改めて自己紹介を。部長は私、戌井飛鳥ですわ」


「副部長の雉幡英里子と申します」


「記録係の猿島奈々でございます」

 

 三人は上品にスカートを持ってお辞儀を交えての自己紹介をすると拍手が起きた。

 

「そして後見人の辰弦栞様です!」


 紹介をされた栞さんは笑顔で軽く手を振る。


「なるほど、なるほどー?」


 そこに柴咲がタブレット端末を片手に持って、栞さんにニヤニヤしながら近づいていく。


「初めまして生徒会長。ボクは、一年B組の柴咲姫子です。後、新聞部にも所属しているのですが、新聞部部員として一つ質問してもよろしいでしょうか?」


「なんでしょうか?」


「このファンクラブの後見人ということですが、柊君とはどんな関係で?」


 新聞部の血が騒いだのだろうか、柴咲がマイクを持ってる風に見せた手を栞さんに向けた。


「そうね……」


 栞さんは顎に手を当て、一瞬だけオレを見て答えた。


「お友達ね」


「本当は――」


「――お友達ね」


 間髪入れずに答える栞さんに柴咲は粘ろとしたが、


「こーら。主役の邪魔をしないの!」


「アハハ、すみませんでしたー」 


 奏に制服の襟首を掴まれて引きずられていく。


「そして、雉幡さんのメイドで佐伯千聖さんです」


 メイド服姿の女性がお辞儀をした。


「自己紹介も終えて早速ですが、遂に『零一様を敬う会』に、零一様をお呼びできたことを嬉しく思います!」


「零一様をお近くで拝見できてわたくしも嬉しいです……」


「あぁ、近くで見れば見るほど美麗な真紅の瞳……素敵です……」


 気持ちが舞いがっている三人に奏が手を上げて質問した。


「雉幡さんと猿島さんは、どこで零一君の魅力を感じたの?」


「あたくしは魔弾を蹴った動画を拝見したからですよ。最初はそんな馬鹿馬鹿しい事が出来るはずがないと思っていたのですが、あの動画を見てからは心を撃ち抜かれてしまったんです」


「わたくしも同じ理由ですが、零一様が登下校時に自転車を颯爽と乗りこなしているお姿に、その……一目惚れしてしまったのです……あぁなんて恥ずかしいこと言ってしまったのでしょうかわたくしは……」


「お嬢様、素敵ですよ!」


 メイドの佐伯さんが恥ずかしがっている雉畑さんを励ましも込めて称賛した。


「あー、あの動画撮ったのボクだよー」


「そうなのですか?」


「うん、暴れまわってる生徒を最初は撮影してたんだけどね。そしたら柊君が急に走り出したと思ったら、いきなりジャンプしながら回転して桂木君の撃った魔弾を蹴るわ、その蹴った魔弾が分裂して当てるわで、ホントにビックリしちゃったよ」

 


 柴咲の話に、チラリと栞さんに目を移すと少しだけ暗い表情をしていた。

 だが栞さんは目を瞑って首を小さく横に振ると、再び柴咲を見据える。


「本当に見事ですよね、さすがは零一様です。あのような魔導使用はあたくしには出来ません」


「猿島さんでもできるぞ。あのぐらいは」


 オレがそう言うと、猿島さんたちは目を輝かせた。


「わ、わたくしにもですか?」


「もちろん。それが証拠に」


「私もできるようになりましたよ。ジャンプしながら回転をして蹴る。というのは難しいですが、正面からなら蹴って分裂させることはできます」


 魔法念話を教えるついでに教えたら、二時間足らずでやってのけてしまっているがな。

 晴香もこの事に関しては驚愕していたのをよく覚えている。


「では、もしかして……」


「えぇ、もしかしてですわ猿島さん……」


「零一様とご一緒に練習できるということですか!?」


「まぁ知りたいなら」


「「「きゃーーーー!!! 零一様直々のご教授なんて素敵すぎますわーー!!!」」」


 悲鳴ような声が上げる戌井さんたち三人は興奮で震えていた。


「ボクも良かったら……なんて大変だよね?」


「構わないぞ。一人増えたぐらい大差ないだろ」


「わーい!」


 柴咲が喜ぶ横で恭介が浮かない顔をしている。


「なぁ、零一」


「どうした恭介?」


「もしかしなくても、俺が魔弾撃たなきゃダメか?」


「まぁ、そうだな。四つ一斉に撃てる魔弾は殺傷性が高くなって、大怪我でもされたら困るからな。それと」


「それと?」


「お前に試してもらいたいことがある」


「な、なにする気なんだ?」


 恭介の引きつった顔を見て、オレはニヤリと笑った。

会長恐るべし

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