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魔導高校生の魔王様  作者: 伊吹わなご
第二章:都市伝説編
23/75

⓵ボクに任せて!

 西暦二〇八一年。五月下旬。


 オレが中部魔導高校に入学して一か月以上が過ぎた。

 あれから呪詛関連については何事もなく、栞さんに魔法を教えたぐらいで、平和な学校生活を送れていた。

 のだが、一つだけ理解しがたいことが起きている。


「それでは二人ともいきますよー、せーの!!」


「「「零一様ぁぁ!! 頑張ってー!!」」」


 授業中だというのに、いきなり聞こえてくる黄色い声援がオレに送られた。

 声援が来た方向を見ると、戌井さんを真ん中にして、その両脇に二人の女子生徒が、校舎の廊下の窓から手を振っていた。


 なんと、オレのファンクラブなるものを作ってしまったらしい。

 きっかけは、戌井さんを助けた時のオレが恭介の魔弾を蹴った動画が校内で出回ったらしく、それを見惚れてしまった両脇の二人が加わって部活動らしきものができた。そう奏から聞いた。

 しかも、栞さんの許可済みという絶対的な権力で守られているとの噂もあるとかないとか。


「はいはい。今は目の前ことに集中する!」


 ベンチに座って手を叩いて喝を入れてくる奏の声で我に返る。

 オレたちのクラスは体育の授業中だった。

 

 今日の授業はポイントボール。

 

 ドッヂボールから派生した競技で、長方形に区切られたコートの真ん中を境にして内野六人、外野三人のチームに分かれ、お互いの陣地に得点が書かれたホログラムが複数現れるので、それに向かってボールを投げ、ホログラムを壊せばその書かれた得点が入るようになっている。そして、合計点数を百点にするか、二十分間の内に多く点を取ったチームが勝利する競技。

 

 この競技は魔導使用禁止な部分もあってなかなかに面白い。


「さて、どれ狙ってくると思う零一?」


 ホログラムはランダムにコートを動き回っていてそれを守らなければならないが、キャッチできずにボールに当たってしまうと一分間退場になるので、話し合いをしながら攻守を切り替えていく。

 点数表をチラリと見ると、オレたちのチームが八十五点、相手チームが六十六点となっている。

残り時間は五分か。


「二十点か十五点だな。相手は早く追いつきたい一心だろうからな」


「オーケー」


「投げてくるよ集中して!」


 それにしても、奏は体育になると性格が変わるな。

 スカイラクロス部に入っているだけあって、スポーツに対する熱意がひしひしと伝わってくる。

 ここでどうでもいいことに気づいたが、女子の体育は体育館でしてなかったか?


「そこだ!」


 敵チームの男子生徒が狙いやすくなった十五点表記のホログラムを狙って投げてきた。


「恭介!」


「おうよ! ってあら?」


 投げられたボールはあらぬ方向に飛んでいった。かに見えたが、ボールの回転を見れば斜めに回転をしている。


「カーブ回転かよ!」


 本当の狙いは敵の外野近くで動いている二十点が狙いだったか。オレが今から走っても間に合わないな。


「恭介飛べ!」


「おりゃ!! って届かねー!」


「ボクに任せて!」


 恭介の巨体で飛んでも届かない距離を、細身で恭介よりも二十センチは背が低い男子生徒? が、軽々とした跳躍でボールを抱えるようにキャッチした。


「はい柊君。パス!」


 そのまま空中でオレに向かってボールを投げてくる。 

 オレが取りやすいように投げてくれたおかげで、勢いを殺さずに十五点表記のホログラムに向かってボールを投げ、見事に得点して百点に届くと終了のブザーが鳴った。


「零一様のチームが勝ちましたわー!」


「零一様が最後を締めくくったのも素敵でしたね」


「まさに零一様の至高なるお力のおかげですね!」


 手を取り合って三人が喜んでいるのはいいとして、コートの外で汗を拭いている見事な跳躍をした男子生徒? にオレは近づいた。


「なぁ、柴咲」


「何? 柊君?」


「女子の体育はいいのか?」


「あー、それはね」


 柴咲は茶髪のショートヘアーで前髪が片眼だけ隠れている特徴的な髪型に、顔つきは中性的で、可愛いと言うよりもカッコイイに分類されても違和感はない。喋り方も男子生徒の様な軽快な印象なので見た目は男子に見えるが、立派な女子生徒だ。

 それに、


「姫子、助っ人サンキュー」


 柴咲姫子(しばさきひめこ)というフルネームを聞けば、誤解もしないだろう。


「奏っち。ちゃんと活躍したんだから、お昼ちゃんと奢ってよー?」


「わかってますよー」


「ということだから、いいんだよ」


 屈託のない笑顔をオレに見せてきた。

 それでもダメだろうと言いたかったが言葉を吞んだ。


「それにしても、最後のジャンプは凄かったよな」


「恭介君より飛んでたよね」


 二人が柴咲を褒めると、自信気に両腕を組んで言った。


「ボクの力にかかればあんなの当然さ」


「すげー自信だな」


「まぁね」


 なぜ恭介より二十センチ低い柴咲が高い跳躍できたのかをオレは知っているけどな。


「反発魔導使っただろ」


「ア……アハハ、なんてこと言うのかなぁ、柊君はー」


 オレの言葉に、さっきの自身気な顔から豹変して焦りだす柴咲。


「しかも柴咲は土系統魔導(ボーデン)が得意らしいから、自分の足が付いてる地面だけ上に反発させて跳躍できたんだろ」


「ま、魔導陣は見たのかい?」


「グラウンドの地中に隠しただろ」


「な、なんでわかったのー!? ハッ!!」


 墓穴を掘った柴咲の顔はオレではなく、奏に向いていた。

 その奏は、歯を出して鬼のような形相をしていた。


「ひーめーこー? 魔導使用禁止競技なのにぃー、魔導使うとはー、うへへ! 許さぁぁん!!!」


「わー奏っちが怒ったー!!」


 グラウンドで追いかけっこが始まった。

 やはりスポーツに対する熱意があるので、ルール違反した味方にも怒るんだな。


「あーもう、いいじゃないか勝ったんだからさー!」


「昼休みの奢るのなしじゃああぁぁ!!」


「そんなぁぁぁぁぁ!!!」


「それにしてもよ零一、なんですぐ相手の得意な属性系統(エレメンタル)が判るんだ?」


 追いかけっこをしている二人を他所に、恭介が訊いてくる。


「俺の時もそうだったけどよ、まさかその魔眼で見えてんのか?」


「いや? なくても大体は判るぞ」


「どうやって?」


 オレを恭介の目を指さした。


「瞳の色だよ」


「瞳の色?」


「魔力を扱える人間は、得意な属性を所持して生まれてくるのは知ってるな?」


 恭介はオレの言葉を邪魔しないように無言で頷く。


「生まれた時に医療魔導師は火、水、風、雷、土、氷、光、闇の中のどれかを簡易的に判断する際に、瞳を見ることが多いぞ」


「へぇ、知らなかったぜ」


「この地球だとパーソナルカラーって言われているな。火は赤く、水は青、風は緑で、雷は黄色に見えるが光ってるせいで金色に見える。土は茶色と灰色のどちらかで、氷は白色として見えるし、光は白銀だ。闇は黒に思われるが、実際は紫色。という見分け方だ。純な日本人は色が濃く出ないからわかりにくいが、恭介は瞳が大きいおかげ見やすくなって、風系統魔導(ウィンドウ)の魔弾を頼めたんだよ」


「定期健診でわかるもんだと思ってたが、そういう知り方もあるのか」


「そっちのほうが確実にわかるが、手っ取り早いのは瞳を見ればいい。オレの瞳の色は魔眼で真紅な色をしている訳じゃないぞ。火属性を持って生まれたから赤いだけだ」


 魔力がある世界に共通することだったりもするが、そこは関係ないから説明しなくてもいいだろう。


「てことは、奏は……青が見えるから水属性ってことか?」


「そういうことだ」


 暴れ走っている奏の瞳の色を見れるとは、動体視力がいいんだな恭介。


「なるほどな、勉強になったぜ。サンキュー、零一」


「どういたしまして、そろそろ着替えに戻るか」


「おう、そうだな」


 オレ達が更衣室へと足を向けると、柴咲がこっちに気づいた。


「ちょ、ちょっとー! ボクのこと助けてよー! ボクも着替えたいんだからさー!」


 まぁ、無理だろうな。


「シャー! 待たんか小娘ー!」


 恭介によると、この後追いかけっこは次の授業は始まるまで続き、そして体操着のまま授業を受けていたらしい。

目隠れボクっ娘っていいすよね。


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