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魔導高校生の魔王様  作者: 伊吹わなご
第一章:魔導高校入学編
20/75

⑲色々吹っ切れた女は怖いのよ?

「さてと、色々と直しておくか」


オレは邸内を歩いて吹き飛ばした門や、大穴を開けた壁を魔法で直していく。

すると、昼間だとというのに空から妙に明るい一筋の光が、目の前を照らした。


「お疲れ様。レイスティール」


 その光から舞い降りてきたのは、ヴェレンティアナだった。


「いいのか、地球外の女神が地に降りてきて?」


「今回は特別に許可をもらったわ。見られてもいいように、貴方と同じ体の大きさにもさせてもらったしね」


 天界の神装束をひらひらと見せるヴェレンティアナ。


「で、何しに来たんだ?」


「もう、地上の私もよく言ってるけど、ちょっとは褒めなさいよ」


「いいから早くしろ」


「え~そんなこと言っていいの~?魔眼の制御を今後一切なしにしてあげようと~思ったんだけどな~?」


「ヴェレンティアナは美しいな。あぁ本当に美しいな。今まで出会った女神で一番美しいと言えよう」


 早口で褒めるオレに、ヴェレンティアナは若干引いた笑いを見せながら、魔眼の制御が書かれた天界文字をオレの目から抜き取り、払い消した。

 これでいつでも魔眼が使えるな。


「私を褒めるより、魔眼の方が大事なのね……」


「当たり前だ。魔力だけしか見えんのは不憫すぎたからな」


「だと思ったから解除しにあげたのよ。それに」


「それに?」


「呪詛の分子はまだ学校の生徒たちに残ってるから、完全に消してね♪」


 笑って言うことじゃないだろう……つまりこれは……


「魔法を使い過ぎた罰か……」


「この世界風に言うと、YES!」


 親指を立てて言うヴェレンティアナは、本当に女神なのか疑いたくなるほど性格が軽い気がする。

 まぁ、晴香を見てればそんなのすぐにわかるがな。


「わかった。明日からやるよ」


「頑張ってねレイスティール。それじゃ、辰弦さんをよろしくね、零一」


 そう言い終えると、また空から一筋の光がヴェレンティアナを照らすと浮かび上がり、天界へと帰っていった。


「零一くん?」


 空を眺めていたオレを呼んだ声に振り向くと、縁側に栞が立っていた。

 〈英魂修正(モストフェレア)〉が終了したんだな。どれ、栞の魂は……ちゃんと書き換えられているようだ。


「上手くいったな。どうだ痛かったか?」


「ううん、全然痛くなかった。逆に痛くなさ過ぎて、応援できちゃったぐらいよ」


「そうか、良かったな無事に終わって」


「う……うん……本当に、良かったよ……!」


 栞の魔眼ではない美しい金色の瞳から、大粒の涙が零れた。


「ご、ごめんね! こ、こんな奇跡……本当に起こるなんて……思いもしなかったから……」


「思う存分に泣くといい」


「ん……」


 栞が一言だけ発して、両手を広げてきた。

 全く、仕方がないお姫様だ。

 オレはゆっくり栞に近づき、優しく抱きしめた。


「本当に……本当に……ありがとう……零一くん……」


 涙を流す栞の頭を、オレは優しく撫でる。


「お、おい……どういうことだ……瀧矢……」


「し、知るか……竜崎……このまま寝たふりだ寝たふり……栞お嬢様が凄く幸せそうだからいいじゃねーかー……」


 普通に聞こえてるぞ、そこの二人……ほら、栞がオレから離れて歩いていくぞ。


「ま、それも、そう……か……ひぃっ!?」


 寝たふりをしようと話し合っていた瀧矢と竜崎の前に、腰に手を当て、顔を真っ赤にして睨む栞が仁王立ちしていた。


「瀧矢ぁぁぁ!? 竜崎ぃぃぃ!?」


「「栞お嬢様すみませぇぇぇぇん!!!」」


 なんとも微笑ましい光景だな。

 ぼんやり様子を眺めていると、栞は振り向いて、オレに近づいて胸に顔埋めて抱きついた。


「続き」


「いや、もう十分……」


「つ・づ・き!」


「はいはい。わかったよ」


 やることがまだあるんだが、少々のことはいいか。

 栞が満足するまでオレは頭を撫で続けた。


「それじゃあ、いいか?」


「うん……お願い……」


 そして最後の仕上げを二人で始めた。

 気絶している栞の母親の額に、オレの人差し指を置いて、小さな魔法陣を描く。


「〈記憶放出(ムンクイユ)〉」


 魔法陣は淡い光を放つと、魔法陣の真ん中から光の玉が出てくる。それをオレは指で摘まみ、栞の手に持っている袋に入れた。


「これで、全員だな栞」


「うん」


 袋の中を見れば、同じく光る玉が袋の口いっぱいに入っている。

 この光る玉の正体は、魔法で取り出した人の記憶になる。

 取り出した記憶は呪詛に関する全ての事柄に関して。

 それを壊せば、一生そのことに関しては思い出せないし、覚えられなくなる効果がある。

 後は栞がどういう思いで――


「ふん!!」


 思いっきりに床に叩きつけ、踏みつけて破壊した。


「威勢がいいな」


 栞はスッキリとした表情で言った。


「色々吹っ切れた女は怖いのよ? 覚えておいてね、魔王様」


「……覚えておこう」

次でエピローグです。

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