⓵入学おめでと~
オレが地球に転生して、十五年と八か月。
元居た世界との様々な違いを楽しんで生きてきた。
魔族や妖精が架空の存在されているこの世界は、電子内世界――インターネット一つで様々な出来事を容易く知ることができるのは驚きを隠せなかった。おかげで一時期ネット廃人になりかけたことがあるぐらいハマってしまっていた。
ただ、インターネットの発展にも十分驚いたが、一番の驚きは地球の魔力量の少なさだ。
まだ若い星だからだろう、魔王として過ごしていた世界の千分の一ほどの量でしか成り立っていないとは思わなかった。
こればかりは人間の赤ん坊から生まれて良かったと思っている。そのまま転生しようとしてゲートを開いてしまっていたら、地球の魔力が一瞬で枯渇し、なんらかの――もしかしたら地球の破壊なんてことになっていたかもしれない。
「どうしたの、零君?」
「いや、なんでもないよ。いよいよ魔導高校いけると思うと嬉しくてね」
「昔から魔導具を作る人になりた~い。って言ってたものね」
「そんな言い方はしてたかな?」
「お母さんはちゃんと覚えてるわよ」
ふふん!と自慢げに腰に手を当てる母さん。
言ってしまうと驚かれるので言わないが、一応生まれた時点で自意識は持つように魔法を組んでいたから、父さんの鼻水がオレの顔に滴り落ちるほどの号泣した顔をちゃんと覚えているんだぞ母さん。
「そんなことよりも、いいのかな? 零君」
「なにが?」
オレの部屋に掛けてある時計に指さす母さん。
時間は七時四十分。
これはいけないな。母さんの美味しい朝食を食べずに入学式に行かないといけなくなってしまう時間だ。
「下に行こうか母さん」
「ホント、零君は遅刻しそうになっても冷静ね。母さん羨ましいわ」
「オレは慌てる母さん見たことないけど?」
最近慣れてきた他愛の会話をしながら二階から一階に下りると、リビングには先客がいた。客ではないか、魔王時代含めて初めてできたオレの妹の椛だ。
「お兄ぃおはよう」
「おはよう椛。あとお兄ぃって呼び方はどうしたんだ?」
それにどうした。椅子に片足を乗せながら食事して行儀が悪い。反抗期か?人間の反抗期というのは椛ぐらいの年齢でやってくるらしいが、今まさにそれなのか?にしては違和感があるが……
それといつもならリビングのソファーに座ってる父さんは……あぁそういうことか。
なぜ妹が普段しないことをしているのかわかった。
「椛を利用して、オレの注意を引いて後ろから電子クラッカーを鳴らしても驚かないぞ、父さん」
そう推理しながら振り向くと焦って笑うスーツ姿の父、一二三がそこにいた。その手には言ってた通りに電子クラッカーだ。
「零一くんには敵わないな~」
「ほら~あたしの言った通りにお兄ちゃんにすぐバレるって言ったじゃ~ん」
「アハハハ……」
「ほらほら~零君の入学式に遅刻しちゃうから早く食べましょう。それと」
「「「入学おめでと~」」」
パーン!と三機分の電子クラッカーから音が鳴ると同時に、立体映像の紙吹雪が電子クラッカーから再生された。
「あぁ、ありがとうみんな」
こんなにも賑やかな家族のところに転生するとは思わなかったが、まぁ悪くない。
見た目は人間、魂は魔王様です