⑬私は南田周作。
「じゃあ、どうしたいのか内容を話してくれる?」
シャッテンのアジトに向かう車内で、晴香が訊いてきた。
「シャッテンのリーダーを殺すのが、最終目的だな」
「もう、高校生が殺すとか物騒なこと言わないの」
オレの忠告を無視したのだからいいだろう。とはいえずに黙って晴香の話を聞くことにした。
「契約忘れてないわよね?〈年齢に見合った言動・行動をする〉って」
「忘れてないよ」
股間を蹴ったり、手首を捻って折って銃を奪ったりと、年齢に見合ってないような行動をしてると思うが、そこはいいんだな。
「なんだけど、今回ばかりは危険性が高くて学校を無地に救ったから許すと、天界の私も言ってるから許します」
「そうか、それはありがたい」
「だから、シャッテンのリーダーを肉体的には殺していいことにしたから」
肉体的には殺していい……それはつまり…………
「魂は消すな、と言っているんだな?」
「えぇそうよ。天界で裁いてあげることにしたから」
それは人間の拷問よりも、きつい拷問だな。
「だったら魔法を使うことになるぞ?魔導にそんなものはないからな」
「〈魔法を使わない〉という契約を一時的に無効にするわ。だけど、制限付きね」
「制限?」
「二回、しかも小規模魔法だったら地球に害はないはずよ」
二回か……一回は必ず使うとして、もう一回はどこで使うか考えるか。
「それで他は?」
「あとは近隣になるべく迷惑かけないようにね。ってだけね。なにかご要望はあるかしら魔王様?」
そうだな……魔法も使えるのなら、残るはこれしかないな。
「魔眼の制限を解除してくれ。呪詛がどんなものか見てみたい」
「それぐらいならいいわよ。アジトに着いたら解除してあげるわ」
よし、あとは始末すれば学校生活に支障きたす奴はいないな。
そして、話し終えてから車に乗ること四十分。廃工場の前までやってきた。
昼間だというのに人の気配もない、車も全く走っていない閑散とした地域に廃工場は建っている。
車を降りて、鎖で何十にも固く閉ざされた門から中を窺うと、窓ガラスが不規則に割れている建物や、屋根も所々穴が開いている倉庫もあったりと、放置されてから数年は経っているような廃工場だった。
「それじゃ、頼む」
「はーい」
晴香も車から降りて、オレの前まで歩いてくる。
「それじゃ魔眼を解除するわよ」
晴香は人差し指と中指だけを突き出し、オレの目元を横一直線に軽く流した。
すると、目から力が湧くような感覚が伝わってくる。それが証拠に、晴香の突き出していた指が神々しく光っているのが判り始めた。
「どう?」
「晴香の神の力が見えるから大丈夫だ」
「それじゃ、思う存分気分を晴らしてきなさい」
「そうするよ」
オレはそれだけ言い残し、門を魔眼の力で増幅させた爆破魔導で吹き飛ばして、廃工場の敷地に足を踏み入れた。
トラック二台横並びで置いても余裕がある大きさの道路を歩くと、さっそく敵の気配を感じる。
数は三人。建物を使って隠れているつもりなのだろうが、魔眼が解放されているから無駄だ。
「そこだな」
二棟連なった建物の間に、親指を人差し指で握り込んで親指の力だけで魔弾を放ち、心臓を貫通させた。
「がぁっ!!」
男の呻く声が聞こえたので、次の隠れている敵を狙う。
「壁に隠れても見えているぞ」
さっきと同じ要領で、反対側の建物に魔弾を撃って壁を貫通させて心臓を狙うと、人が倒れる音が聞こえる。
「うらあああああ!! このガキがぁぁぁぁぁぁ!!」
最後に残った一人が、小型ナイフを持ってなりふり構わず突撃してくるが、
「魔術師なんだろ?魔術を使え阿呆が」
頭に魔弾を貫通させてやると、突撃した勢いのまま倒れた。
『お見事だよ。柊零一君』
今のを見ていたのか、オレを称賛する耳障りな声が、廃工場内の至る箇所に設置されているスピーカーから聞こえてきた。
『私はシャッテンのリーダー。南田しゅ――』
うるさいので目に付くスピーカー全てを魔眼を使って破壊してやった。
「さて、行くか」
どこにいるのかわかっているので、オレは迷わず足を進める。
途中途中襲い掛かってくる魔術師がいるも、一向に魔術を使う気配がないので魔弾だけで蹴散らしていた。
「名ばかり集団か?」
『そのものた――』
「うるさい奴だな」
またスピーカーを壊して足を運ぼうとしたたが、
『その者たちは魔力を上手く扱えない人間なんだ、すまないね。柊君』
スピーカーがないのにも関わらず声が響いた。
「これが魔術か?」
『あぁそうとも。驚いた――』
オレの真上をハエの様に飛行していたドローンを魔弾で撃ち抜くと、声が聞こえなくなり火花を散らしながら落下してきた。
「何が魔術師だ」
地面に落ちたドローンを蹴っ飛ばして、南田とかいうリーダーの所に歩みを再開させる。
「ここだな……」
一際大きな倉庫の前にオレは歩みを止めて、周りを見渡した。
外には敵は見えないな……倉庫内には……十六人か。
それと……三人その奥にいるが………まぁいい。
「さっさと終わらせるか」
ドアを吹き飛ばして倉庫内に入ると、フロアには律儀に整列したシャッテンの魔術師たちが銃を構えて待っていた。
「ようこそ、柊零一君」
唯一銃を持っていない真ん中にいる、頭脳明晰そうな眼鏡の男が今からダンスでもするかのようなお辞儀をしてくる。
「私は南田周作。シャッテンのリーダーです」
こいつがシャッテンのリーダーか。あんな雑な態度をとってもまだ平常心でいられるのか、なかなか図太い性格を持っているんだな。
「そっか、じゃあ殺していいか?」
「これを見ても、そのような強気な態度を取れるとお思いで?」
南田が手に持っている物をオレに見せてきた。
それは生徒会室に置いてきたはずのAMWだった。よく見れば学校で使われたAMWよりも、一回り小さいAMWに答えがすぐに出た。
「そうか、二機あったのか」
「えぇ、そうですとも。こちらは試作機なので範囲は狭いですが、君と対峙する範囲であれば十分な機能を果たしてくれます。それに」
南田が優雅に指を鳴らすと、後ろにいる手下三人が倉庫奥へと向かい、すぐさま戻ってきた。
奏と、恭介と、栞さんを縛った状態で連れて。
「こうやって子猫ちゃんたちを捕まえるのにも役に立ってますから、試作機でも馬鹿にはできませんよ?」
「アハハ……ごめん、零一君……」
「わりぃ零一……」
「……また捕まってしまって、すみません……」
「さ、これでも私を殺すと、言えますか?我々に手を貸せば、子猫ちゃんたちは解放しまよう」
だから、そんな余裕な態度でいたのか、じゃあハッキリと言ってやらないとな。
「あぁ、殺してやるよ」
南田さんに少し辛辣~




