心が整わないのです
一体誰が悪いのか……誰も悪くはない。ただ、そういう日だったのです。
こんにちは、聖属性エッセイストひだまりのねこですよ〜。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
昨日、エッセイにも書きましたが、お隣で大規模戦闘がありまして、ええ、そうですよこの世界では工事ともいいます。
まあ、いい加減うんざりしましたので、そうだ! 髪を切りに行こうと思いついたんですが、今思えば、その決断が私の人生を狂わせることになるのです……。
戦闘音が鳴り止まぬ午後、私は思い立って近所の美容室へと向かう。
コロナの流行中、私は長らく美容院に行っていなかった。だが髪は伸びる。特に私は伸びるのが他の人より早い気がする。聖属性の影響だろうか?
ではどうするか? 自分で切る。それしかない。しかし、私は素人だ。最初は良い感じだったが、回を重ねるごとにおかしくなってゆく。もはやバランスが取れていない。なんとかしようとして自爆する悪循環。
そうだ。工事だとかはきっかけに過ぎず、もはや行かないという選択肢はすでになかったのだ。
そのお店は感染対策もしっかりやっていて、朝一番で予約が埋まるほどの人気店だ。一番のポイントはリーズナブルなこと。私はとても清貧なので、大変ありがたい。
問題は、予約が取れるかということ、そのお店は電話予約は受け付けておらず、店頭へ出向かなければならない。しかも、何時にという予約方式ではなく、受け付け順に案内してゆく忍耐力が試される方式だ。
「あの……まだ受付可能ですか?」
「あ~、今日は特に混んでますね~。100人以上待ちですよ?」
くっ、ふざけるな! こんな土曜日に美容院にくるなんて、一体何を考えているんだ。平日に来い、平日に。全力で自らを棚に上げながら内心憤る私。
後で知ったのだが、たまたま会員が10%OFFになる日だったらしい。くっ、ふざけるなよ? 販促しなくてもお客が来る土曜日に実施してどうする。平日にやれ、平日に。
だが、これくらいで諦めないのが私だ。
「ひゃ、100人!? ちなみにその場合、何時ごろになりそうですか?」
「うーん、17時過ぎくらいですね。どうします?」
17時か……ある意味で丁度良い時間帯といえなくもない。容赦ない日差しの中、せっかくここまで来たのだ。明日出直すのも惜しい気がしてしまう。どうしても今日がいいのだ。
「わかりました。お願いします」
「はい、外出しますよね?」
そう、このお店は外出OKなのだ。今はまだ13時30分だ。店内で待つのは厳しい。っていうか待合室は満席だ。どのみち外で時間を潰すほかないだろう。
その後、近くのマッ〇で100円コーヒー、モバイルオーダーならMサイズも100円ふふふ。を飲みながら読書して過ごす。たまにはこういうのも悪くない。
17時、店に戻る。
「どんな状況ですか?」
「えーと、順調ならあと15分から20分ですね~」
ふふふ、完璧なタイミングではないか。その程度なら誤差の範囲だ。そのまま店内で待つことにする。
――――一1時間後、
おかしい……一向に呼ばれる気配がない。しまった……またうっかりスキルを発動していたのか?
確認しに行きたいが、そのために席を立てば、二度と座ることは出来ない。先ほどから大勢の席待ちの猛獣どもが私の席を虎視眈々と狙っているのだから。
――――一2時間後、
もう限界だ……いくらなんでもおかしくないか? 私は人の善性を信じる温厚な性格だが、注文した料理が来ないことはよくある。今回もその類かもしれない。
それに時間はすでに19時、スーパーで美味しいお寿司のパックを夕食に買おうと思っていたのに、売り切れてしまう。それだけではない、洗濯物を干しっ放しなことにも気付いてしまった。予報では、夜、雷雨の可能性があったはず。
すでに私のおしりと腰は限界だ。よし、帰ろう、残念だが明日出直すのだ。
意気揚々と立ち上がる。すかさず私の席に座る中年の女性。ふふふ、まあ良い、もう私には不要のモノなのだから。
「すいません、用事があるので帰ります。予約取り消ししてください」
「申し訳ありません……あっ! ……つ、次のご案内ですけど?」
明らかに店員の様子がおかしい。あ~、やはりか。まあ良い、次なら待とう。
「あ、それなら待ってます」
そうは言ったものの、すでに席はない。店の外で待つことにする。
――――一30分後、
ちょっと待て、待たせ過ぎじゃないのか? 某ネズミの国でも、ここまで待ったことはないんだが!?
結局、無事髪を整えることは出来たのだが、当然の如くお目当ての寿司パックは売り切れ。夜から降り出した雷雨で洗濯物は濡れてしまった。部屋の中まで濡れたよ……。
髪を切ってもらう間、降り出した雨にきっと私は酷い顔をしていたことだろう。
髪型は整えられても、心を整えるのはやはり難しいのです。