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第2話「ゴネる」


『貴方のスキルは「手料理」です』

「…………え?」




 キラキラと眼前に輝いているスキルのクリスタル────。

 それに触れれば、2つ目のスキルを得られるというのだが……。




「………………えっ、とぉ? 『手料理』?────その『手料理』って言いました……よね?」


『そうですよ──』


 ふわりと、花が咲くような柔和な笑みをみせるスキルの女神。

 常人ならば、威光がまぶしくて思わず首を垂れそうになるだろう。


 だが、


 だが……。


 だが──!!




  「分かってるんだろうな?──疫病神

   疫病神のテメェをパーティにおいてやってるんだ。

   …………もぉし、くだらねぇスキルを授与されたら



   その時は──」




 ゾクリと、ジャンの言葉が脳裏に蘇る。




「……あ、あの──!!」

『はい……?』


 ──レイルは唯々諾々とそのスキルを受け取るわけにはいかなかった。


 だって……。


 だって……!!


「……て、手料理って────あの手料理ですよね?」

『あの手料理が何か存じませんが、『手料理』は手料理ですよ』


 ニッコリ。


「いや、その……。『手料理』って、戦闘用スキルじゃないですよね?」

『そうですね』


 ニコッ。


(いや、ニコッ──じゃねぇよ!)

 動揺するレイルとは裏腹に、スキルの女神はレイルの質問に嫌な顔一つせずに答えてくれる。


『手料理はとても素晴らしいスキルですよ……。食べるものの心を癒し、口にしたものに郷愁を誘う心優しいス──』




「えっと……。俺──戦闘用のスキルを願ったんですけど?」




『………………はい。存じておりますよ。貴方の半生を見て、このスキルが適切だと判断しました』



 ………………。


 …………。





「は……?」

 ……………………な、何、言ってんのコイツ??



『戦闘スキルがないがために、つらい思いをしてきたのですね。それが原因で幼馴染と喧嘩をしたことも──そして……』


 的確にレイルの過去を読んだスキルの女神は目に涙を浮かべて語る。


 しかし、

 じゃあ、

 だったら、



「──なら、どうして!?」


 どうして?


 どうして??


「どーーーーしてぇぇええ?!」


 お、俺の半生を見たんだろ?

 な、なら────!!」


『はい。今も辛く、そして過去には痛ましい経験がおありのようです。…………だからこそ、「手料理」なのです!』



 ニッコォォッォリ♪





「──…………はぁぁぁあ~??」


 何を言ってんだ、このクソ女神様は?



「……いや、意味わかんねーですよ」


 真面目に『手料理』とかいらないから。


 っていうか、






「…………アンタ、頭大丈夫か??」




 ………………。



 …………。





『…………………………あ゛?』





 柔和な笑みを浮かべていた女神の表情が一瞬、ピキスと揺れる。


「……いや、マジで! マジで『手料理』とかいらない! そんなんじゃなくて、俺に戦闘スキルをくださいよ!」


 『あ゛……?』じゃねーから!


 マジで、そーゆーのいいから。

 ジョーダンきついから!



 手料理で人の心を癒すぅぅぅぅうううう??




 …………アホか馬鹿か、と。



「頭わいてんのか? アンタ……?」


 こっちは現在進行形でピンチなんだよ!!

 せめて、戦闘用スキルとか、……有用なものがないと困るっつってんだよ!!


「…………チェンジ」


『…………………………あ゛?』


「いや、いやいや。『手料理』はないっすわー!! 別の!──別のにして!! んねっ!!」


 そう。

 そうなんだよ!!


 戦闘に使えるスキルなら……ぶっちゃけなんでもいい!!


「…………あ、そうですよ! ほらほら、贅沢は言いませんから!!」

 冒険者として、クエストに使えるくらいの戦闘用スキルなら何でも──……!


「ほらほら! 『下級魔法』とか、『剣術』とか、なんつーの? そーゆー適当なのでもいいですから!!」

『──て、適当? 適当だと?? い、今、適当つったか、貴ッ様ぁ…………』


 プルプルと震え始めたスキルの女神。

 その様子に手ごたえありと感じたレイル。


 ここぞとばかりに畳みかける!


「そうっすよ!! なんでもいいんです! 戦闘スキルなら何でも! なんかあるじゃん? 簡単な奴──。そーいうのでいいからさ。…………だけど、」


 うんうん。

 ないわ。ないない。


「──『手料理』はない! ないわー! アンタ、センスないわー」


 …………。


 ……。


『……………………んだと、ごらぁ』


 女神様の顔が何か引きつっているようにも見えるけど──。

(熟考中かな?)


「はい。これ(手料理のスキル)────いらないから」


 プルプルプル……!


  ピキピキピキ……!


(……お、これいけるんじゃね?)


 押し黙った女神を見て、さらなる手ごたえを感じたレイル。

 あと一押しで行けそうだ!!


(──よし!)


「じゃー……! ほら、早くスキルくださいよ!! 安いのでいいから戦闘用のスキルを!…………ね?」


 これだけ言えば通じるだろう。

 神様だっていうからビビってたけど、言葉通じるし────うんうん。


『………………チッ』


 ん?

 いま舌打ち──…………?


 まさかね?


「あの……、め、女神様! 早くしてくださいよ。仲間待ってるんです」


『……………………』


 ニッコリ笑った顔のまま硬直しているスキルの女神。

 なんか、額に青筋が立っているようにも見えるけど──……?


 ま、こんな優しそうな女神様が怒るわけないか──。


「──お願いします。早く、ちょっ(ぱや)で、ポンとスキルくださいよー!!」

 ピキピキ……!

 ビキス……!

『…………ちょ、ちょっぱや』


 いえす!


「はい。なるはやで(なるべく早く)おなしゃーーーーす(お願いします)!」

 ブチブチブチ……!

 ブッチン……!

『……なるはや──』


 はーい!


『おなしゃす…………』







 おほほほ




 ほほぅ







 …………………………ぶっ殺すぞ、クソ人間。









「え?」












『────────………………ぶっ殺すって言ったんだよ』(ボソッ)





 ()ほわっつ(What’s)

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