美月と宙希 ラブラブな日々しかし 別れの不安は2人を泣かせてしまう
第7章 忘れない思い出
肉じゃがとカレーと とん汁
クリスマスの夜から半年が経ちふたりは出会ってから
2回目の誕生日を迎えます。
あの日から二人は、何か吹っ切れたようにいつも笑って
毎日楽しく過ごしています。朝ごはんを食べる時と夕食を
食べる時それから、夜寝る時と違う講義を受ける時以外は
ほとんど一緒にいます。
大学に行く時は、改札口で待ち合わせだったけれど 今は
美月が乗る駅の隣りの本屋さんで待ち合わせすることも
度々ありました。
週末は 美月の家、七夕の日に一緒に過ごしたお家。
宙希が 美月に告白したあのお家です。
そこは唯一 二人になれる場所でした。
二人でご飯を作って食べたり、勉強したり音楽を聴いたり
DVDを見たり…後は、ダンスしたり。
それから、夜空を観察するサークルに参加しています。
将来の夢を語ることは ほとんどありません。
なぜなら 夢を語ることによって現実に戻り会話が途切れ
二人は何も話さず時間が過ぎていきます。
話し合い、相談したわけではなく自然と今のこの瞬間を
大切に 楽しく、喜んで心から幸せな気分になり
「いつか来る『別れ』が 夢だったんだ!」って思える
くらい忘れたい2人でした。
今日は、2人だけで誕生日会を計画しました。
2人は、まずスーパーで買い物からです。
宙希と美月は、仲良く並んで買い物カートを押して…
「宙希!」と美月は、宙希の顔を見ながら
「肉じゃが食べる?カレーにする?それともとん汁!」と
口を閉め目線は天井、少し考えて宙希は
「うん!とん汁がいい!」と、
「とん汁ね!」と美月は、じゃがいもを手にとり品定め。
そんな美月の姿を見ながら宙希は
「美月!じゃがいもが食べたいの?」って、
聞くと じゃがいもをカゴに入れながら
「なんで〜!」と美月は 答えました。
美月は玉ねぎを手にとり 宙希も、玉ねぎを選びながら
「肉じゃがも、カレーも、とん汁も」と宙希はそう言い
ながら玉ねぎをカゴに入れ
「みんなジャガイモ入ってるょ!」と美月の顔を見て、
言いました。美月は頬を膨らませ 宙希の顔を見て、
「そんなこと言ったら〜!!みんな」と 美月、
「肉じゃがも!カレーも!とん汁も!」と少し考えて、
「お肉も入ってるよ!」と 美月は言いました。
「やぁ〜!」と笑いながら 宙希、
「肉じゃがは 牛肉だけど!」と 宙希は答えました。
美月も、うふふって笑いながら
「カレーも牛肉で作れば ビーフカレーになるよ!」と、
仲良く肉売り場に行きました。
美月は、豚肉のバラとカレー用の肉を両手に持ち
「とん汁だけだね豚肉は!」と 言いながら考えました。
「宙希は 豚肉食べたいの?」と 宙希に聞き、
宙希は 肉売り場から少し離れて振り返り
「ぅ~ん!焼きそば!かな」と 言って、
美月の悩んでいる顔を見て好きだな〜って思いました。
「とん汁と焼きそば あわないょ!」と美月、
「うっそ!!とん汁がいい!豚の肉のね!」と宙希、
美月も負けず
「牛肉で作って牛汁にしてあげる!」と 言いながら、
豚バラをカゴに入れました。
人参を手に宙希は「ごめん!」と そして、
「美月の困った顔 少し怒ってる顔が好き!」と微笑み
「私も時々めんどくさいことを言う宙希の顔が好き!」
と 美月もニコリ微笑みました。
「そういえばさー!宙希」と、
両手を腰の上で組んで歩く美月
「ぅ~ん!」と相槌をする宙希
「肉じゃがもカレーもとん汁も玉ねぎ入ってない?」と、
美月は 振り向き宙希を見る
「あっ!そういえばそうだね!」と宙希、
「あっ!人参も入ってるよ!」と 言い
美月は ひらめいたかのように
「じゃがいも人参玉ねぎとお肉があれば」と、そして
振り向き「何でもできるね!」って言いました。
宙希は 軽くうなずき、
「糸こんにゃくも買おう!」と言い、1人でカートを
押して進む宙希。追いかけ背中に顔をあてて 美月は、
「あと生姜ね!」と、
「肉じゃがもカレーもとん汁も作ろうか!」と宙希、
「肉じゃがは豚肉にして カレーに糸こん入れる!」
と美月は 宙希の背中から顔を出して言いました。
そんな甘える美月を嬉しく感じ そのまま美月に
「ごめんなさい 参りました!」と 言う宙希でした。
ギリシャ神話と星座
10月、登山のサークルに参加した2人。
澄みきった秋の山の上 風もなく静かなログハウスに2人。
寒いけど手を繋いでいれば そんなに寒くない気がします。
大きな宇宙 ウッドデッキで夜空を見上げ本物の、自然の
プラネタリウム。
恋人繋ぎされた手は 宙希の大きな上着のポケットの中に
美月は 繋いだ右手に時々力を入れて握り、
「宙希!」と、
宙希は 握り返さずポケットの中でトントンと合図して、
「ぅ~ん!」と、返事をします。
「ギリシャ神話って誰が作ったの?」と 星空を見ながら
美月は 宙希に聞きます。
「ギリシャの人!」と 宙希も星空を見ながら答えます。
「もしその時代に生まれていたらどんな物語作ったかな?」
と、美月は頭を左に傾け 2〜3秒目を閉じます。宙希は、
「僕はそんな才能ないから読んで楽しむだけでいいな!」
と、星を見つめながら 笑うこともなく言いました。
美月も、星を見つめながら、
「私は!ぅ~ん!作る!そして宙希に読んでもらう!」と
言い、2人は2分ほど静かに星空を見ていました。
宙希は ポケットから手を出して、冷たくなった反対の手
と暖かい手をこすりながら美月の方を向いて、
「美月!星座好き!」と、
美月も 宙希の方を向いて、
「好きだょ!」と言いました。
「そっか!」と、
宙希は ニコリとして美月の左側に行きました。
「物語作って! 星座も作って!」と美月、
宙希は 美月の左手を取り 自然に恋人繋ぎをして今度は
右ポケットに入れました。
美月は、嬉しそうに宙希の手をギュと握り替しました。
「自信ないけど お月様も星だよね!」と美月は、
半月を指差し言いました。
宙希は、美月が指差している半月を見て
「うん!まぁ〜ね!」と言い 苦笑いをしました。
半月を指差した手を降ろし美月は、
「アルテミスは月の女神だったよね?」と 言いました。
「そう!アポロンと双子」と宙希は 一言つぶやくように
「白鳥に姿を変えたゼウスが何かしたんだよね?」と、
美月は 宙希の横顔を見て聞くと、
「セレネと言う月の女神もいるょ!」と 美月の視線を
感じながら宙希は 秋の星座を見つめ言いました。
半月の月の光に照らされている宙希の顔を見て
「月の女神は 何人もいるの?」と美月、
宙希は 少し微笑みながら楽しそうに
「いろんな説があるから楽しいんだ!」と、
「太陽の神もいる?」と美月、
「アポロンも太陽の神だよ」と宙希、
「あそうだった!」と 美月は宙希の前に立ち
「太陽の神も何人もいるの?」と 聞きました。
宙希は、美月と視線を合わせず ただ星座を見て
「『アポロン、ヒュペリオン、ヘリオス』って」と宙希、
楽しそうに星空を見ている宙希の表情が好きな美月、
「宙希は 太陽の神で誰が好き」と、
「アポロンかな」と、宙希は 美月の顔を見て言います。
「じゃあ私がアルテミス 宙希はアポロンね」と、
「双子だよ?」と、不思議そうに宙希は言いました。
美月は 考えながら「こう言うお話しはどう?」と、
「『血の繋がってない双子として育てられた 二人!
いつしか二人は恋に落ちる その事を知った父親が
二人を引き離しました。それを知った母親は可哀想に
思い アルテミスを月の神 女神にしした。元々
太陽の神だったアポロンが 太陽の光でアルテミスを
照らす 月が輝くことでアポロはアルテミスの存在を
確認し アルテミスもアポロの存在を確認する で!
アポロがいないとアルテミスは姿を見せることができ
ない 月を照らすことでアルテミスと会える』」って
楽しそうに物語を話している美月を 宙希は何も言わず
見ていました。
バレンタインデーの外泊
今日は2月14日 世の中はバレンタインの日。
女の子が好きな男の子に告白する日。
チョコレートを渡す日。『あんまり関係ないなー』って
思ってる2人でしたが やっぱり一緒に居たい日でした。
クリスマスや記念日、カップルが一緒に居たいなぁーと
思う日って1年間に何日あるのかな?
2人で宙希の家でお泊まりの準備をしていました。
「行って来ます。」と言い、出かけようと思って玄関で
ドアを開けようとした時、
「ちょっと待って」と 宙希のお姉さんが玄関に、
「宙希!ここに来て!」と 声をかけました。
「なに?お姉ちゃん」と 振り返る宙希と美月、
「今日 美月ちゃんと2人だけでお泊まりでしょ」と、
優しく言葉をかけるお姉さん
「お母さんが いいって」と宙希は 少し口を尖らせて、
「私も いいと思う」と お姉さんは話し始めました。
「産婦人科の女医としてはやっぱり」と お姉さん、
そして 美月の顔を見てにこり
「美月さんも聞いてね!」と お姉さんはいました。
宙希と美月、両手に荷物を持ち お姉さんの顔を見て
宙希が低い声で言いました。
「お姉ちゃん 変なこと言わないよね」とドキドキして、
「うるさいことは 言わない でもね」と真面目な顔で
お姉さんは話しの続きを、
「いい雰囲気になって 盛り上がった時」と、ポケット
からスキンの箱を出し
「やっぱり これは必要よね!準備してあった?」と、
宙希は 下を向き顔が赤くなり怒った表情に、
「分かったからさ!」と宙希、
スキンの箱を受け取り カバンの中に
「宙希だけに伝えてるわけじゃないのょ!」と、
まだ 話し続けるお姉さん。
「女性として必要なことだから!男性には わからない
世界だから女性の身体」と、お姉さん。
美月の顔を見て『分かった!』と 優しく心でつぶやき
「2人だけの外泊 行く前に伝えたほうがいいから」と、
そうお姉さんは言って 宙希の頭をなぜて、
心の中で『ごめんね 宙希!』と 思っていたのです。
「それだけ いってらっしゃい 楽しい夜を」と言って、
お姉さんは部屋に入ってきました。
宙希と美月は 静かにドアを開け外に出て 並んで歩き
美月のお家に向かいました。
夜、月が真上で輝いている時間 同じ布団の中にいる
二人。お姉さんの言っていた通り盛り上がったのかな?
宙希の右肩に頭をのせ 肩枕をしてもらっている美月は
月明かりに照らされている宙希の横顔を見て、
「宙希!あったかいね!」と、
宙希は 右腕を美月の右肩にのせ屋根裏部屋の窓から
見える月を見て、
「美月も あったかい!」と言い 左手を自分の頭に、
美月は 宙希側に寝返り右腕を宙希の胸の上に置いて、
「今 何考えてる!」と、
「キスしたい!」と、宙希は一言 言いました。
言った後 深呼吸をしら美月の方に向きを変え左親指で
美月の唇に触れ 美月の唇を見つめました。
それから先は お月様だけが知っています。
少し肌寒い朝が来ました。月が沈み 太陽が昇り太陽
の光が宙希と美月に『起きなさい朝ですよ』と言ってる
ように差しました。
宙希は 美月の寝顔を見て 優しい声で
「美月!」と、声をかけました。
美月は 誰かと間違えたのか宙希に抱きつき
「ぅ~ん!」と、答えました。
宙希も美月の背中に腕を回し 美月の左の耳元で、
「月が沈んだよ!」と 言いました。
目覚めた時美月は 誰に抱きついたのか分からなかった
けど 宙希の優しい声で起こされました。
「よかった!宙希も消えていなくなるのかな?って不安
だったから!」と美月は ほっとして幸せな表情で言い、
宙希も 嬉しそうな顔でニコリとほほえみ
「僕は消えないよ!消えるのは美月!」と言いました。
次第に不安な表情に変わる宙希、美月を見つめます。
そんな不安そうな宙希の顔にそっと手を置いて美月は、
「私!?」と、聞きました。
「うん!」と うなずき宙希は、
「突然 いなくなるのかなって!眠れなかった」っと、
小さな声で言いました。
「宙希!ずっと起きていたの!」と、
「うん!ずっと美月の寝顔見てた!」と、
よく見ると少し目が腫れている宙希の顔を両手で包み
「泣いてた?」と、美月は聞きました。
宙希は 隠すことなく、
「ぅ~ん!泣いてたわけじゃないけど!」と、
「けど!」と 美月、
「涙が出る!」と、鼻水をすすり宙希は答えました。
美月は お父さんとお母さんのことを思い出して、
「私も ここで泣いたわけじゃないけど涙がいっぱい
出た!」と、言いました。
宙希は 美月のおデコに唇を近づけ、
「今も 月に行きたい?」と聞き、
「月に帰えり お母さんに会いたい!お父さんにも?
僕が ずっとそばにいるって言っても!」と、
美月の顔を見ることなく 話し続けました。
「行かないで!僕と一緒にいて欲しいと言っても」と、
「何を言っても!月に行きたいんだよね!」と 宙希、
まだ 宙希が話し終わらないうちに美月は、
「分からない どうしたいのか!」と 言いました。
「私もずっと 宙希のそばにいたい!でも!」と、
涙声になる美月に宙希は隠していた思いが、感情が出て
しまい 珍しくきつい口調で、
「でも!」と 答えました。そんな怒った顔を美月に
見られないよう 美月を抱きよせました。
美月は 宙希の胸に顔を埋めて、
「もし 私の所にも月行の切符が届いたら」と小声で、
「届いたら?」と 宙希も涙声で、
「やっぱり 月に行きたい」と美月は 本当の気持ちを
大きな声で 泣きながら言いました。
2ヶ月か3ヶ月に1回 2人はこの部屋で自然と流れる
涙と心の葛藤、お互いを思う気持ち 夢から現実に戻る
日がありました。
月に行くという話しも 夢のような話しですが......。