第10章 幸せな終わり〜Happy End〜
お腹の子は誰の子~三月~
土曜日の午後2時すぎ、春夏秋冬どの季節もこの時間になると お昼寝をしたくなります。
特に幸せな時は お昼寝なのに2時間くらい寝てしまいます。
昨日は晴れだったけど今日は雨降り まさしく梅雨の真っ盛りです。
春馬のマンションに暮らす一月とウォルは 結婚しました。
籍だけで、結婚式はまだ何も決めていません。
案の定、春馬はふらり旅に行きました。
そうそう春馬は 占いの本を出版しました。題名は何だったっけな?。
今は2人りっきり、お腹の子を入れて3人で幸せに暮らしています。
ウォルは、美月と入れ替わり1ヶ月近く経ちました。
『美月』を『ウォル』に名前変更をして、泉原ウォルになりました。
ウォルは 重力という力に少しずつ慣れてきましたが お腹も少しずつ大きくなるにつれて大変なことがたくさんあります。
日中一人で生活することが難しく、7月から一月の実家へ引っ越しすることになりました。
なので春馬のマンションは ちょっと贅沢な別荘です。
ソファーの上で両足を伸ばして座り 手を口にあててあくびするウォル
「一月 今日の夜 オムライスが食べたい」と
一月の背中を見て甘えます。
「前世では こんなに寝ていたかな」と
一月は つぶやきつつ
「分かった」と
得意そうにエプロンをして 手を洗いました。
「私は 洗濯物をたたむね」と
膝の上で Tシャツをたたむウォル
玉ねぎの皮をむき みじん切りする一月
「たたむの 上手くなったね」とほめる
うれしく思いながウォルは
「教えてくれる先生が 一月きだから」と
「一月 お料理上手だね」とウォル
生姜とニンニクもみじん切りにして一月は
「一人暮らし 長いから」と答え
手を洗い振り向き ウォルの様子を見て
「でも 春馬の方がもっと上手いよな」と言いました。
一月は 冷蔵庫から鳥のササミを出して
「春馬の作るごちそうは」と
手際よくササミの筋を取り
「なんでも 美味いょ」と言いました。
「春馬 今どこにいるのかな」とウォル
「そのうち ハガキが届くよ」と一月
「なんで旅に 行ったのかな」と
ウォルは ゆっくり立ち上がり洗濯物をタンスにしまいに行きました。
「春馬がいないと さみしい?」と一月は聞き
フライパンにオリーブオイル にんにく生姜玉ねぎの順に入れ 火をつけました。
「さみしい」とウォル
「春馬に 焼き餅を焼くな」と一月
ウォルは一月の隣りに立ち 一月の真剣な横顔見て
「やきもちって 何?」と聞きました。
「ウォル 知ってんだろ」と一月
ウォルは 話をそらして
「美味しそう」と言いました。
美味しそうな匂いをお腹いっぱい吸って
「あっ お腹蹴ってる」と言いました。
「お腹蹴られるってどんな感じ」と一月
「分からない 表現できない」とウォル
春馬ほどではないが手際の良い一月、オムライスとシーザーサラダとわかめスープができました。
「できた 食べよう」と一月
幸せなふたり でも春馬がいない生活
ちょっと……さみしいなぁ
真冬の夜
時は流れました。2年くらいかしら。
ウォルのお腹にいた子は 2歳になりました。
美月と宙希が別れてから3年が経ち あの日も雪がしんしんと降っていました。
宙希は、大学の登山サークルで美月と過ごした 懐かしい山小屋にいました。
雪のしんしんと降る夜。時折風が吹き 厚い層の雲と薄そうな雲が空を覆っている。
暦では今日は満月。薄い雲の隙間から 満月の光がかすかに漏れ 雪に覆われた世界を照らしている。
数分いや7〜8分雪が止み あたりが明るくなる。満月の月は ひかり輝き一面の雪景色と僕を照らしている。
そして僕に話しかける。
「貴方に逢いたかった…だから顔を出したの…なぜなら貴方が私を見ているから…少しの間 私とお話ししましょう」と
「何の話がいい…そうだなぁ…僕は雪も好きだ…君みたいに輝いているから…そうか君が雪を輝かせているんだね」と
「今はそう…でもねあと数時間で…私は消えてしまう…次に会えるのはいつかな…新月の夜にそーっと貴方を探します」と
「会えるの楽しみにしている…僕のために姿を見せてくれて嬉しかった…必ずまた僕を探しに…そして会いに来て」と
「はい…約束です…でも約束はしません…なぜなら貴方はきっと…私が貴方を探しにくることを待ち続けるからです」と
風が流れ 雲に隠れ 姿が見えなくなり またしんしんと静かな雪の深い夜が続く……。
宙希は お月様と会話をすることが多くなりました。
今日も 満月かな?と思いながら月を見ていました。
「あっ お月様」と
三月は 宙希の隣りに行きました。
「三月ちゃん 三月転ぶょ」と
ウォルが 追いかけてきました。
三月は
「まん丸だね」と
月を指差し独り言なのか?宙希に話しかけているのか?
ウォルは月を見て
「満月はきっと 明日だよ」と言い
三月の両手をとり 手を繋ぎました。
宙希は ウォルと三月の様子を伺いながら
「今日は満月 きっと」と言いました。
ウォルは宙希を見て
「こんにちは」と
自然と美月の声になり挨拶をしました。
驚いてとっさに
「美月」と
宙希は 呼んでしまいました。
三月が 宙希のほうを見て
「はい 三月だょ」と 返事しました。
「美月 美月だよね」と
宙希は 一瞬小さい三月を見て 美月の姿を確認しました。
宙希の勘違いか 月にいる美月のいたずらなのか
「私はウォル この子が三月」と
ウォルは 驚いた宙希の顔を見て言いました。
「美月と 似ていたから」と宙希は言い
「ふーっ」と
深呼吸をした後 三月に見つめられているのに気づきました。
「どこかで」と
ウォルは考えながら 宙希を見て言うと
「満月 満月でしょ」と言い
三月は 繋いだ両手を振り 私を見てとウォルに合図をしました。
そんな三月に気づいたウォルは
「三月ちゃん お返事入っていた?」と
三月に 尋ねました。
「三月 大好きって」と
三月は 答えました。ウォルは しゃがみ三月に目線を合わせ
「良かったね」と言いました。
「誰が 居るの」と
三月は 右側に頭をかしげ
「あそこに」と三月
最近不思議に思うのか 時々そんな話をします。
「ここにいたの また雪が降ってきたよ」と
一月が ウォルと三月を呼びに来ました。
その姿を見て宙希は 泉原一月先生だと気づき声をかけました。
「もしかして 泉原先生」と
一月は 突然名前を呼ばれたので驚き
「あっ… 」と一言
一月と宙希の様子を 不思議な顔で見ていた三月は
「パパ… 」と つぶやきました。
風が吹き 月も雲に隠れてしまいました。
「寒いから 中で話そう」とウォルが 言いました。
月から月の巫女美月が 見守るように3人の再会を見ていました。
春馬が導いた 再会
大きい丸いテーブルに春馬が作った手料理。
ちらし寿司 コロッケ オムライス 肉じゃが コーンスープとオニオンスープ シーザーサラダ おつまみはチーズの盛り合わせとソーセージの盛り合わせが並んでいます。飲み物はビールとウイスキー、三月ちゃんは りんごジュースとみかんジュースです。
座る場所は 三月の左隣りに宙希、春馬 一月 ウォルの順に座りました。
春馬は 三月にりんごジュースを渡し
「さぁ 食べましょう」と 声をかけました。
一月は 立っている春馬に
「春馬 乾杯してくれる 挨拶も」と 頼みました。
「挨拶は ウォルがして お願い」と
春馬は ビールが入ったグラスをウォルに渡しながら言いました。
「挨拶!」と言い
ウォルは クラスを持って
「春馬 美味しい手料理ありがとう」と一言
みんながグラスを持ったのを確認した春馬
「さぁ 乾杯」と 声をかけました。
三月は りんごジュースをゴクゴクと美味しそうに飲んで
「今日 満月なの」と 月の話しの続きを
ウォルは 春馬の作ったオムライスを皿に取り分け
「三月 食べて」と
三月の目の前にオムライスとスプーンを置きました。
宙希は ウォルと三月のやり取りを見て
「さっきは すみません」と言いました。
「ママ」と三月は ウォルに話しかけます。
宙希は ウォルに声をかけた後一月に
「先生 パパになったんですね」と言い
春馬から寿司、コロッケとサラダが取り分けられた皿を受け取り 軽くお辞儀しました。
一月は照れくさそうに にっこりとしてビールが半分残ってるクラスを持ったまま 春馬のほうを見て
「あぁっ それより」と春馬に
「なんで」と宙希に言い
次の質問をする前に 春馬が
「彼のこと 知っているのか知りたい」と
一月に聞きました。
新しいグラスに氷を入れウイスキーをグラス 3分の2まで注ぎ
「私が行った国に 彼がいたの」と春馬
何気なく 春馬の手元を見ながら一月は
「偶然」と 一言で尋ねました。
春馬は コーラを注ぎマドラーでかき混ぜ
「偶然って」と 一月のグラスを見て言いました。
一月は コロッケを美味しそうに食べている宙希を見て
「君は ウォルに似た彼女と一緒に」と 宙希に話しかけました。
宙希の空のグラスを受け取り
「はい コークハイ」と春馬は
コークハイのグラスを宙希に手渡しました。
「一月は ジンジャエール?それともコーラ!」と
一月に聞き
「ジンジャーエール!」と答え
一月は 春馬の手際の良さに懐かしいと感じて ニコリが笑顔に変わりました。
「ジンジャーハイね!」と春馬も
嬉しそうに笑顔になりました。
「今 仕事は 先生してる?」と一月
「自宅から通える範囲の小学校で」と宙希
「彼女は元気 一緒に来ればよかったのに」と一月
宙希は苦笑いをして ウォルを見ました。
「一月 彼の事 知っていの」と春馬
「うん」と春馬を見て
「ほらっ 前さぁ」と一月
「前って」と春馬
「2年前ぐらいかな双子座のカップル」と一月
「双子座のカップルのこと」と春馬
「知ってるかって」と一月
「あっ そうそう そうなの」と春馬
宙希と3人で話していたのが いつのまにか2人で昔話を始めました。
宙希は 昔のことは考えたくなかったので 春馬の料理を美味しそうに食べていました。
ウォルは 一生懸命食べている宙希を見て
「あのぉ 美月さんに 似ていますか私」と
「三月は私」と三月
宙希は 優しく三月に
「名前 三月ちゃんって言うの?」と聞きました。
「そう」と三月は答え
コーンスープを上手に飲んでにこりとしました。
ウォルは 三月の口の周りをナプキンで拭き取り
「月にいるの 名付け親がね」と 言いました。
「名付け親?」と宙希
不思議そうに聞くと
「月の巫女とお友達」と三月が答え
じーっと宙希の顔を見ていました。
見つめられた宙希は
「えっ どういう」と
三月の瞳を見て尋ねました。
宙希と見つめ合い 何か感じるものがあったのか三月は甘えて
「抱っこ」と
心の中で 人見知りをしないのかなと 思いつつ
「抱っこ?」と聞き返し
もともと子供が好きな宙希は 笑顔で両手を出し
「今 抱っこ?」と もう1回聞きました。
「うん」と三月
三月は宙希に抱っこされ まだ小さく短い両腕で宙希の首をつつみました。
「美月の匂いがする」と宙希は
懐かしい匂いを思い出しました。
「三月だょ」と三月は
宙希が初めて自分の名前を呼んでくれたことを嬉しく思いました。
「そうだね」と
苦笑いをする宙希『みづき』違いだけど…と。
宙希に抱っこされた三月のほっぺを可愛くつんつんして 三月と遊んでいる春馬に
「大和先生 泉原一月先生のこと知ってるんですか」と聞きました。
「大和は やめて ここでは春馬」と
春馬は 宙希の目をみて言いました。
「ウォルに似た彼女」と
一月は ほろ酔いでまた同じことを宙希に聞きます。
春馬は こんなに酔った一月は初めてと思い 笑って
「思いだした 一月」と
春馬は 上手に相手をしていました。
春馬は知っていました。
宙希と美月、美月とウォル、ウォルと一月、この4人の繋がりを そして幸せを運んできたのが三月 月のスピリチュアルからの波動を感じたから。
美月から宙希へ秘密の月の箱
雪が降っています。
でも 風が吹き時々 月が顔を出します。
美月は 風に乗り様子を見に来ました。
「ウォル!ウォル!」と月の巫女美月
「美月さん」とウォル
「彼が 私の愛する宙希ょ」と月の巫女美月
床暖房で暖かい床に座り宙希とウォルは 窓から月を見ていました。
三月は 宙希に抱っこされたまま眠ってしまいました。
三月のぬくもりと美月の匂い 宙希もウトウトと目を閉じました。
「三月ちゃん」と寝言のように言う宙希
「三月 貴方の娘」とウォルの身体をかりた美月
「美月ぃっ」と声がする方に振り向く宙希
ウォルの身体をかりた美月が 右手の人差し指を口に当て
「シーっ」と
「えっ」と宙希
「驚いた 宙希」とウォルの身体をかりた美月
宙希は 寝ぼけ驚いた表情で美月を見ました。
「宙希と会えなくなった後 体調が悪くなり 宙希さんのおじいちゃんに診てもらった そしたら『おめでたですね!ってパパさんに伝えたら 喜びますよって」とウォル
三月が動いて目を開けた宙希は 夢いやそれとも
「今 美月が」とウォルに言いました。
「見えた さっきそこに」とウォル
キッチンでは一月と春馬が 久しぶりに2人きりで仲良く後片付けをしていました。
時々笑い声 時々甘えて声 怒って喧嘩して、すぐ仲直り 仲の良いカップルのようです。
「一月 ここが片付いたら 一緒にお風呂に入ろう」と春馬
「ここ お風呂があるの」と一月
「あるみたいよ 家族風呂でしかも温泉だって」と春馬
「お揃いのパジャマ持ってきたとか言わないよな」と一月
「持ってきたわよ みんなの分」と春馬
2人は 話しながら宙希とウォルの所に来ました。
宙希の膝の上で寝ている三月に一月は
「三月 お風呂入ろう」と
声をかけました。一月の後から顔を出し春馬が
「何の お話ししてるの」と
一月はウォルに 三月の着替えを頼み
「春馬、三月抱っこして」と頼みました。
春馬は 宙希に声をかけ三月を抱き
「人見知り 本当にしないね」と言い
春馬が抱っこした三月の顔を見て
「風呂に行くぞ 三月のパジャマもある」と
春馬に聞きました。
「もちろん 気に入ってくれるかしら」と
春馬は 寝たままの三月を風呂に連れて行きました。
ウォルと宙希は 初めて2人っきりになりました。
「気づいた」とウォル
「久しぶりに顔を見た 気がする」と宙希
月を眺め 3人で話しているかのように
「私のお願いを聞いてくれたの 美月さん」とウォル
「お願いって」と宙希
「私は もともと月の巫女 一月に恋をしたの」と
「ずっと一緒にいたいって 月の女神様に」とウォル
「僕もずっと一緒にいたいって 願っていた」と宙希
「美月さんに 入れ替わって 私と」と
言った後ウォルは 宙希を見ました。
「ふうぅ なんだかよくわからない」と
宙希は 前にもなんかこんな不思議な経験があったよなと 思いつつ月を眺めたままウォルの話しを聞いていました。
ウォルは 宙希の方に体を向けて宙希の横顔を見て
「入れ替わってからも 宙希さんのお家の産婦人科に定期受診に通院して」とウォル
宙希は ウォルを見て
「僕の家」とそして
「あの日 最後の夜 姉ちゃんとの約束破った気がする」と
小さい声でぶつぶつと言っている宙希でした。
「約束?」と
ウォルは 約束の部分だけが聞こえました。
照れくさそうに苦笑いをして
「いいんだ」と宙希は言いました。
お風呂場の方から楽しそうな三月の声が 聞こえました。
ウォルは 立ち上がり月を眺め
「私 月の女神様に お願いしたの」とウォル
「月の女神様」と言って 宙希も立ちました。
「一月のところに行きたい どうすればいい」と
「そしたら 魔法をかけてくれた」とウォル
「そっか」と宙希
「月にいる 月の巫女の美月さんから」と
ウォルは リュックの中から秘密の月の箱を出しました。
新しい月の箱でした。
宙希は 久しぶりに見た月の箱を指差し
「『秘密の月の箱』これ本物」と
「宙希さんと三月の秘密の箱」と
ウォルは 宙希に手渡しました。
「美月から 僕に」と
宙希は 月の箱を手にして言いました。
「9月の十五夜の夜に生まれたの」とウォル
「三月ちゃんは いくつ」と聞く宙希
「2歳と3ヶ月」と答えるウォル
「美月はいつ 月に」と宙希
「5月のスーパームーンの夜ょ」とウォル
「5月 フラワームーンFlower Moon(花月)の日 そっか………」と
「月に行くって 本当の話だったんだ」と宙希
輝く月を宙希は 笑いながら鼻をすすり見ていました。
「美月さんに 約束した」とウォル
「美月と約束って 何」と宙希
「私が 代わりにお腹の子を産むって」と
ウォルも 輝く月を見て言い美月に
「三月の本当のパパを見つけたよ」と
月の巫女美月は 微笑んでいる様に輝き
風が雲を運び月は 隠れてしまいました。
忘れようとしていたけど 忘れられなかった
満月に輝き 静かにいつも話しかけるひかり
なんとなく返事をする 風が吹き返事が返ってくる
不思議だなーって思っていた
月の巫女は 愛する人達を見守っていてくれている
三月が産まれた時『ありがとう』と言って この箱を置いていった美月。
箱を開けてみると赤ちゃんの名前が書いてある手紙が入っていました。
9月に生まれたのに『三月』って書い『三月』と呼ぶの。
宙希が この子の名前を呼んで「美月だょ」って思い出して欲しから。
終わり それぞれの未来
一月 ウォル 宙希 三月 春馬
春月大和先生が5人の未来を 占いました。
占いなので 当たるか当たらないかは、信じるか信じないかで運命が決まります。
月にいる月の巫女、美月は 5人全てを見守り幸せに導いてくれます。
愛する人たちを見守り幸せにすることで 自分が幸せになるからです。
『時として人は落ち込むと占いや運命など考えます。自分の未来は その時のモチベーションによって良かったり悪かったりします。私は 月を見て考えます。神秘的な世界とスピリチュアルの波動 それによって私達の未来は たぶんハッピーエンドでしょう。そう願っています。』
春月大和
『月の秘密から占う~スピリチュアル~』より