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目が覚めたら、私はひ弱な女になっていた。
まず私の事を話そう。私はとある国で悪逆非道の氷魔女と呼ばれ、全国で指名手配もされた最強の魔女である。えっ?自分で最強だと言うのかだって?だって本当に最強だったのだから仕方ない。
人は溜息を吐けば吹き飛ばせるし、少し指に力を加えるだけで大岩も破壊できる。ドラゴンはデコピンで弾け飛ぶ。国も私の気まぐれで滅ぼす事も出来た。
その世界には魔王と勇者がいたんだけど魔王より強い裏ボスじゃない?みたいなことも言われていた。ちなみに魔王は私の幼馴染。昔から弱虫でいつも泣きながら私の後ろに着いてきていたのが懐かしい。
というか陰で私の事をゴンゴルゴリラ(今の世界で言うゴリラみたいなもの)魔女と言ってた人間といたらしい。乙女に対して失礼ね。
まぁ、そんな私も何でも出来ることに退屈を覚え、勇者に胸を貫かれて殺された。転生もその気になれば出来たんだけど勇者達に魔王を殺されて自暴自棄になっていたのかもしれない。
痛みは無くしてたけど私を倒してドヤ顔になっていた勇者達に対しては少しイラッときた。人の死にドヤ顔してるんじゃないよと思いつつ勇者御一行に一生未婚の呪いをかけたのも記憶に新しい。
そんな私が今どうして一人ブランコに乗ってぼんやりとしているのか。
どうして目の前には3人の弱そうな子供達がいるのか。
そしてどうして囲まれているのか……まずはそこから考えていきたいわね。
「おい!何とか言えよ!」
痺れを切らしたのかリーダー格っぽい男の子が私へと声を張り上げる。そんなに大声出さなくても聞こえているのにね。
続けてリーダー格(仮)の横の2人の子供もギャイギャイと声を荒らげ始めた。子供の声は嫌いじゃなかったけど近くで聞くと耳に痛いものがあるわね……。
「うるさいな」
「はぁ!?」
「あ、やべ」
思わず声に出してしまっていたのか目の前の子供達が目を三角にして私を睨む。昔飼ってた魔族のわんちゃんを思い出すわ。なんて微笑ましく思っていたら髪をいきなり掴まれ地面へと押し付けられた。
「ナマイキな女にはガクシューが必要だよな?」
そのままニヤニヤと顔を歪め私を見下ろすリーダー格。ついイラッと来て足の骨を粉々に破壊しようとぺしりと彼の足に触れ──……
「おい!触んじゃねーよ!バイ菌が移るだろ!」
あれ?なんで粉々にならないんだろう。おかしいなと思った所で今の現状を思い出すのだった。