かちかちやまifルート(ウサギがタヌキにとどめを刺さなかった場合)
短編童話『赤い花』
URL: https://ncode.syosetu.com/n8830fx/ を先に読んでいただければ幸いです。
おいらはタヌキのぽん太。背中のやけどのあとがいまだにひりひりするし、山道を歩いているとき、うしろのほうで、カチッ、とかボーとか音がすると、びっくりして飛び上がってしまう。ちょっと前まではなんともなかった池の水がいまはこわい。それというのも、あのにくいウサギのうさ吉せいだ。いたずらしてやった爺さんがおいらになにかするなら、まだわかる。なんで、ウサギのうさ吉が出しゃばって、おいらにあんなひどいことをする権利があいつのどこにあるんだ?
「やあ、ぽん太じゃないか。いたずらばかりしてると、またひどい目にあうぞ」。そういってうさ吉は楽しそうにぴょんぴょん跳ねながらじぶんのねぐらに帰っていきました。
『おまえがおいらをひどい目あわせたんじゃないか。ふん、楽しんでるのはいまのうちだ。おいらには、とっておきがあるのさ』。そういって小さな壺を振るぽん太。
壺の中には、山の木から垂れて来た樹の蜜が入っています。それが、いいぐあいに発酵してるようで蓋を取ると甘い匂いが周りに立ち込めます。
『いけない、いけない。ここで、蓋を開けちゃいけない。危ないとこらだった』
急いで壺の蓋を締めるぽん太。周りを見渡して誰もいないことを確かめました。
「おいらもうさ吉のおかげで心を入れ替えることが出来たみたいだ。お礼にいいものをもって来たぞ。ほれ、受け取ってくれ」
うさ吉のねぐらにやってきたぽん太は、そういって、さっきの壺をうさ吉に渡しました。
「そうかい、ありがとよ」
うさ吉がもらった壺の蓋を開けると、えも言われぬいい香りがします。我を忘れてうさ吉は鼻先を突っ込んで舐め始めました。小さな壺だったのですぐに中身が無くなってしまいます。うさ吉の顔や手は樹の蜜がついてべとべとです。
「どうだい。おいしかったろう。もっと欲しければ自分でとってくればいい。おいらがそのおいしい樹の蜜が取れる木を教えてやるよ。すぐそこだから付いてきな」
ふらふらとぽん太のあとを付いて行くうさ吉。うさ吉は樹の蜜がよっぽどおいしかったのか、自分のてについた樹の蜜をまだ舐めています。
「うさ吉、あそこに大きな木が見えるだろ、あの木の幹からその樹の蜜が垂れてくるんだ。こっちから行くと歩きやすいぞ」
「なんか、ブンブン音がしないか?」
「あれは、ブンブン山のブンブン鳥の鳴き声さ。おいらはここで待ってるから、さっさと行ってきな。ブンブン鳥がやってきて先に樹の蜜を食べちゃうぞ」
それを聞いたうさ吉は急いで向こうに見える大きな木に走って行きました。
「ビエーーーー!ヒエーーーー!ドエーーーー!」
大きな木の裏側には発酵した樹の蜜の大好きなスズメバチの大きな巣があったのです。
ファンファーレとともに『「冬の童話祭2020」テーマは「おくりもの」ミッションコンプリート!』の声がぽん太の頭の中で響きました。
「???」
こんどこそ、「冬の童話祭2020」に応募だ。
かちかち山に出てくるぼーぼー山のぼーぼー鳥なんですが、漢字で棒棒鶏と書くとバンバンジーになるんですね。かちかち山は室町時代に出来たお話ですから、どっかの国のようにバンバンジーの起源を主張できそうです。(笑)