遭遇
モブから13
非モテサラリーマン2 絶賛発売中です。
まだの方は是非!
作業が立て込んでおり投稿が遅れがちですが、来年はペースアップしたいと思います。
よろしくお願いします。
シルたちに魔核を渡して、その場で一旦とどまる。
程なくしてベルリアも動きを取り戻した。
本人は反省の弁を口にし、やる気を漲らせているが、このジャングルではあまりあてにはならない。
「あいりさんもいけますか?」
「ああ、問題ない」
他のメンバーにも異常は見られない。
周囲にモンスターの気配もなさそうなので再び奥へと進み始める。
「ちょっと離れた方が……」
ただでさえ足場が悪いのに、歩きづらい。
俺の左右と後ろにはシル、ルシェ、ティターニアが貼りついている。
3人共、虫への忌避感から俺にべったりだ。
信頼を感じある種嬉しくはあるが、この状況突然の攻撃に対応できるとは思えない。
3方から完全にロックされてしまっている。
「うらやましい……」
「あいりさん」
俺と並んで歩いているあいりさんからの言葉が聞こえてくるが、これはそんなにいいものではない。
流石に20階層なので誰かにみられるようなことはないと思うが、他者から見て危うい事に変わりはない。
それがわかっていながら、この状況をどうにかできなかった自分を呪ってやりたい。
「ちょっとあれ……」
「ああ、あれが噂の」
「黒い彗星か……」
「まさか20階層で……」
「どうする? 見なかったふりをするか?
「このままスルーして通り過ぎるか」
…………。
20階層に挑む探索者の数はかなり少なくなるとはいえ、土日のこのタイミング。
当然ながらいないわけではない。
俺たちと同じエリアを探索しているパーティがいても不思議はない。
ジャングルの草木のせいでこちらからの認識が遅れることもある。
だからといって相手からもこちらが見えていないとは限らない。
ベルリアも本調子とはいえない。
俺自身もシルたちに気を取られてしまっていた。
ただ、ステータスで引きあげられた聴力を誇る俺の耳に届いてしまった。
明らかに他のパーティであろう一団の声が。
「海斗、何で止まるんだろ。危ないだろ!」
その声が耳に入り、その意味を理解した瞬間俺は動の身体は動きを止めてしまった。
……まずい。
非常にまずい。
ヒルに血を吸われたわけでもないのに、一気に血の気が引いていく。
このまま通り過ぎて……。
いやだめだ。
そんな事になったら、そのあとのことが怖すぎる。
「あそこに他のパーティがいるわね」
「本当なのです。5人ですか?」
「そうみたいね。どうする海斗? 声かける?」
ミクの指す方向にゆっくりと首を動かすと、そこには確かにいる。
俺の耳に届いた声の持ち主に間違いはないだろう。
「あ、ああ……そうだな。そうしよう」
俺は、何とか口から声を振り絞った。






