ジャングルセクト
HJ文庫モブから始まる探索英雄譚12が絶賛発売中です。
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週末のお供に是非!
「あいりさん!」
「まかせろ」
20階層もおそらくは中ほど迄マッピングが進んでいる。
フィールドが変わり映えすることはなく、草木が生い茂る。
視界は悪く、脚は取られるが、モンスターはお構いなしに襲って来る。
そして、このエリアの最大の問題点。
それは、昆虫型のモンスターが混じるようになってしまった事だ。
アリ型だけではない。
巨大なムカデを思わせる、モンスター。
そして今戦っているのは巨大な蜘蛛。
すでに何度か戦っているが、1種類だけじゃない。
馴染みのある普通のクモとは違い、糸を出す気配はないけどそれよりもタチが悪い。
その黒っぽい独特の体色をした身体から、体毛を放ってくる。
おs
おそらくは、毒かなにかあるんじゃないかと思うけどとにかく避け難い。
ただでさえ視界が限定されているところに、黒っぽい細い毛が放たれる。
俺には難易度が高すぎる。
実際何度か避け損ねている。
幸いにもカーボンナノチューブのスーツに守られてはいるけど、いつ肌が露出している部分にあたってしまうか気が気ではない。
「ベルリア!」
「おまかせください」
そして、今戦っているのは前衛の3人。
辛うじてミクとヒカリンがサポートしてくれてはいるけど、反応は鈍い。
そしてシルたち3人は全く戦力足りえない。
「ううううっ」
「キモッ、キモイんだよ! 海斗、海斗~~!」
「マスター無理です」
正直この階層で、彼女たちが戦えないのは痛い。
痛すぎる。
痛すぎるけど嘆いても仕方がないので、邪魔だけはされないよう後方に控えてもらい、俺たちはいつも以上に前に出て対応している。
糸で立体機動するようなことはないけど足が8本あるだけあって動きは速い。
俺はもちろんあいりさんでも追い切れてはいない。
唯一ベルリアがクモへと迫る。
『グラビティストライク』
ベルリアが放った一撃はクモの足を捉え跳ね飛ばし、その場へとクモを貼り付ける。
ベルリアのスキルは威力が増すだけでなく、副次効果として敵をその場へと貼り付け動きを鈍らせる。
「よくやった、ベルリア」
「この程度、造作もありません」
「2人共、おしゃべりしている暇はない。しっかりとどめをさすんだ」
「はい」
動きの鈍ったクモへと迫り、バルザードを振るう。
あいりさんも続くが、クモが最後のあがきを見せる。
「ヤバイ! 避けろ~!」
頭を手で覆い、地面へと伏せる。
クモが全身の体毛を逆立てたのが見えた。
瞬間、最大級のシグナルが鳴り必死に地面へと伏せた。
音はない。
ダメージもない。
だけど、あれは全身の毛を放つ前触れに見えた。