楽しいだけじゃ無理
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「野村さん、上手くやってるみたいだな」
「もう、海斗先輩には一生頭が上がりません。あれからは順調すぎてちょっと怖いくらいです」
「野村さん、あんまり無理はするなよ」
「わかってますって。ラミアとか怖すぎたんで、みんな慎重に慎重を重ねて進んでますから。それより海斗先輩は、プロじゃなくて進学するんですよね」
「そのつもりだけど、どうかした？」
「今まで余裕がなかったんで、あんまり考えてなかったんですけど、この調子なら自分の事も少し考えられるかなって」
野村さんがそれだけ稼げるようになったって事だからよかったな。
顔には軽く化粧をしているようにも見受けられるし以前と比べると生活にも余裕が持てるようになったって事だろう。
「まだ１年なんだし焦る事はないって。これからだから」
「そうですか？ 今度6階層だしこのまま頑張れば進学とかもできたりするかもって」
6階層か。
正直、6階層でもそれなりの時間潜れば、そこそこ稼げる。
ただ、ある意味分岐点ではある。
隼人と真司はパーティを組んで先に進んだ。
だけど、そうではない探索者も多い。
「6階層は、オーガとかオークが出る階層だな。しっかりパーティ全体がレベルアップして臨めば十分対応できると思う。だけど、その先どうするかは考えた方がいいかもしれないな」
「どうするかって、どういう意味ですか？」
「7階層からはゴーレムが出るし通常の武器じゃ厳しくなる。今までより装備にお金もかかるし難度も上がるんだ。そこそこ稼げてるなら6階層までを周回するのもアリだと思う」
「やっぱりそうですよね。う〜んそっか〜。わかってはいたんです。私個人としてはもっと先に行って、もっと稼ぎたいっていうのはあるんです。でも、他のメンバーはどうかな〜」
おそらく、6階層までを効率よく回れば野村さんが当初望んでいた、家計の助けには十分なる。
学生パーティのほとんどは、この階層くらいまでだと思う。
もちろん危ない事もあるけど、時間をかけて進めば死に直結するケースは少ないはずだ。
ただ、そこから先は違う。
より稼げるかわりにリスクも跳ね上がり、モチベーションもないと危険度は増す。
ちょっとした小遣い稼ぎというわけにはいかなくなる。
確かに。
野村さんのパーティは全員女の子だし、将来専業でやっていきたい人ばかりではないかもな〜。
1人では進めないし難しい問題かもしれない。
「ボウガンじゃ無理ですか？」
「6階層はいけると思う。問題は7階層だな。野村さん、スキルは？」
「まだないです」
「そうか〜」
「どこかに落ちてないかな〜」
スキルも強力な武器もそうそう落ちてはないんだよな〜。
