私だけ
蟻の残した魔核を集めて回ると、その数24。
この数が一斉に現れたのだから、みんな無事に終われてよかった。
20階層のモンスターでこの数はかなり厳しい。
「やっぱり、20階層は違うわね。1回の戦闘で3桁超えてる」
「敵もヤバいけど、それもヤバいな」
「もし、大学どこも受からなくても十分やっていけるわね」
「ミク、不吉な事を言わないでくれる?」
「もしもよ、もしも」
「もしもはないから。必ず受かってみせる」
「だけど、あと半年ちょっとよ? 海斗勉強は捗ってるの?」
「もちろんだって。必勝のダンジョンスタディを編み出してからの俺はある意味チートだから」
「ならいいけど。まだ、ダンジョンで勉強してるんだ」
「よかったらミクも一緒にどう?」
「遠慮しとく。ダンジョンで覚えても地上に出たら全部忘れてそうだし」
「そんなことないって」
「それより私と春香とが受かって海斗だけ落ちたりしたら、ちょっと気まずいからしっかりね
なんで、ミクと春香は受かる前提なんだ。
いや、模試の結果だとそうなるか。
言われなくてもダンジョンでの勉強を欠かすつもりはない。
改めてシルたちに魔核を渡す。
今回は金額的にも数の上でもプラスになったので、たいへんではあったけど、シルたちも嬉しそうだしある意味よかったとも言える。
だけど、さっきの戦いで消耗したのもあるし今日はここまでだな。
無理をすればもう少しいけるとは思うけど、今それをする意味は薄い。
「それじゃあ、今日はここまでにしようか」
「えっ⁉︎」
えっ?
ルシール?
「え〜っと、どうかした?」
「いえ、もう終わりなのですか?」
「さっきので消耗したし、そうしようかと」
「まだ、大丈夫ではないでしょうか。もう少し先へと進んだ方がいいと思います」
これは、どういう……。
「ルシール、どうしたんだ?」
「いえ、せっかくなのでもう少し進んでみたいだけです」
「ルシール、ご主人様が決めた事ですよ」
「それはわかっています」
シルに言われても明らかに不満気な口ぶり。
こんな事は初めてだな。
ルシェに比べると可愛いものだけどもしかして反抗期?
「がんばれば行けないことはないと思うけど、今日はここまでだ」
「……ずるいです」
「えっ?」
「私だけ……」
「え〜っと」
「私だけ、滅多に喚んでもらえないじゃないですか」
「それは……」
「私も仲間ではないんでしょうか」
「もちろんだ」
「シルフィー様たちは、アニメにも出ていたじゃないですか?」
「へっ?」
「私の方がティターニアよりも前からいるのに、私だけ、私だけ出番がなかったんです」
「…………」
「不公平です」
不公平……。
全く気にしていなかったけど言われてみればルシールはいなかったな。