群
HJ文庫 モブから11発売中!
ヤングチャンピオンコミックスは今週3/27発売です。
よろしくお願いします。
ひと息ついてから、先へと進むことにする。
『侵食の息吹』
やはりこの密林の中ではルシェのスキルに頼らざるを得ない。
「どうだ海斗、わたしは偉いだろう」
「はいはい、偉い偉い」
「ふふん、そうだろう。わたしは大事だろう」
「はいはい大事だよ」
「わかってればいいんだ。それじゃあわかってるよな」
「わかってるって」
ルシェの催促に魔核を取り出す。
このやりとりも今日何度目だろう。
手綱を握ってはいるけど、この状況主導権はルシェにある。
どうにか数を抑えながら魔核のやりくりをしつつ前進する。
「ご主人様、モンスターです。この数は……いえ、数は20を超えています」
「20⁉︎」
「はい、こちらへと集まって来ています」
ちょっと待て。
20って多すぎるだろ。
確かに浅い階層で魚群とかあったけど、あれがそのくらいの数だったかもしれない。
それを上回るのはスタンピードの時くらいだ。
それが、この階層に来て20⁉︎
いや、そんなこと考えてる場合じゃない。
「シルは『鉄壁の乙女』を! 後方の3人は中に! ベルリア、あいりさん前に張りますよ!」
「まかせろ」
「おまかせください」
数が多すぎて遠隔攻撃だけじゃ無理だ。
俺も前衛へと立ち、モンスターの襲来に備える。
「マイロード、来ます!」
ベルリアの声の直後、「ギィー」という耳障りな音が一斉に鳴り始める。
複数聞こえる音の影響なのか耳がおかしい。
そのせいか足下が微かに揺れているように感じる。
まだモンスターの姿は確認できないが、間違いなくモンスターが発している音だ。
揺れを無視して前方へと意識を集中させる。
耳障りな音に混じって草木が倒れる音も聞こえてきた。
そして先頭であろうモンスターの数体の姿が見えた。
「虫型⁉︎」
「マイロード虫ですね。少々大きいようですが」
それは黒色の装甲を纏った虫。
おそらくは蟻。
ベルリアが言うように大きい。
ただ、少々ではない。
おそらく、いや確実に俺よりも大きい。
以前、同じく昆虫型と戦ったことがあるけどここは20階層。
あの時と同じようにはいかないだろう。
速い!
あっという間に距離が詰まり目の前と迫ってくる。
カウンターを狙いバルザードを振るが、蟻の勢いに負け弾かれてしまう。
「くっ、硬い」
そのまま突進してきた蟻を躱すが、既に2匹目が迫ってきている。
今度は切断のイメージをのせてバルザードを振るう。
バルザードの刃が蟻の胴体を捉えるが切断には至らない。
先程同様、蟻の勢いに押されてしまう。
バルザードでも簡単には斬れない。
1匹を相手にしている間に後続の蟻が、どんどん押し寄せてくる。