探究心
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モンスターが消滅した辺りに目星をつけて魔核回収に向かう。
ただでさえこの階層では苦労するのに木の上部から落ちた魔核を探すのは簡単ではない。
足下に茂る草の中から数センチしかない魔核を探さなければならない。
ステータスによって視力もアップしているはずだけど、それでも厳しい。
「こっちは、ひとつあったぞ」
俺ひとりでは効率が悪いので他のメンバーも回収にまわっているが、あいりさんが最初に見つけてくれたようだ。
「うわっ」
足下をムカデの足を更に増やしたような得体の知れない虫が横切っていった。
かなり素早かったので既に見えなくはなっているけど、手を伸ばした瞬間にあんなのに来られると普通に危ない。
慎重に周囲に気を配りつつ魔核を探す。
「あった」
ようやく見つけることができた。
青色の魔核。
下の階の魔核ほど、基本大きさは大きくなり、その青色も深い青へと変化していく。
今回の魔核もオルトロスや恐竜のものを除けば最も大きく色も深い。
大きいとは言っても3〜4センチ程度なのでそこまでではないけど、これ一個で買取価格で5万円近くするはずなのでかなりのものだ。
手間はかかるけど、回収せずに去るという選択はない。
この小さな石が5万円か。こんな小さな魔核にどれほどのエネルギーが内包されているのか想像もつかいないけど、それだけの価値があるということだ。
シルたちがこれを食べて活躍していることを考えると、とんでもないエネルギーなのかもしれない。
正直、この階層へと至るまでにお金はかなり稼げている。
大学の学費を払ったとしても、まだかなり余裕がある。
余裕があるというか、一人暮らしをしたとしても十分お釣りが来る。
なんなら場所次第では家を買う事も不可能ではない。
今も苦戦したとはいえ、4人のパーティに4個魔核。
ルシェ達に魔核払いがあるけど、それを差し引いてもひとり5万円近く稼げたことになる。
今日もイレギュラーが起こらなければ数十万の稼ぎが生まれる予定だ。
高校生としては破格。
たとえ大学生になったとしてもやはり破格。
おそらく真司や隼人でも俺の3分の1か半分くらいは稼げているんじゃないだろうか。
真司たちもおそらくは、平均的なサラリーマンよりもすでに稼げている。
探索者は、命の危険もあるし、ある意味肉体労働だ。
ただその反面、ある程度の階層、このダンジョンなら10階層を越えることができた探索者は十分なリターンを得ることができている。
以前は、お金を稼ぐことが、ダンジョンに潜る意義のかなり上位を占めていたが、今ではその順位はそこまで高くない気がする。
葛城隊長に追いつきたい。
未知のエリアへと進んでみたい。
ダンジョンは地上とは全くの別世界だ。
未知へと至る探究心。
今はそんな気持ちが大きい気がする。