木に登れば
HJ文庫モブから始まる探索英雄譚11は今週土曜日3/1発売です。
土曜日なので前日の2/28や翌週に発売の書店もあると思われるので是非チェックしてみてください。
よろしくお願いします。
『侵食の息吹』をくらったモンスターが溶けて落ちた。
「最後の1匹もわたしがもらってやるよ。さっさと溶けてなくなれ! 『侵食の息吹』」
ルシェが2発目を放つ。
最後のモンスターもそれほど時間を待たずして溶けて木の上から落ちた。
「これで終わりか? 歯ごたえのない奴らだな」
ルシェはこう言っているけど、かなりの難敵だった。
見えない頭上からの遠距離攻撃。
今までにないパターンに、俺は対処しきれなかった。
「ふふん、わたしはかる〜く2匹倒したけど、海斗は何匹倒したんだ?」
「ゼロだよ」
「ゼロ? もしかして寝てたのか?」
「いや、しっかり起きてたぞ。ここで寝てたらさすがにヤバいだろ」
「ふ〜〜ん」
ルシェが得意そうな顔で俺のことを弄ってくる。
「いや、本当に助かったよ。さすがはルシェだな。また出たら今度も頼んだぞ」
「海斗、わかってるな。わかってればいいんだ。ふふん」
もう慣れたものだ。
ルシェの煽りは別にこちらをバカにしてるんじゃない。
自分が褒めて欲しいからやってるだけだ。
こうやって褒めてやれば、上機嫌になる。
見た目相応の幼児をあやしていると考えれば腹が立つこともなくなった。
「ティターニアも助かった」
「お役に立てて良かったです」
「ベルリアはナイフでいけたんだな」
「はっ、マイロードから賜りしこのナイフ。そこらへんの鈍とは比べるべくもありません。私が使えば必殺の剣となります」
「そうか、さすがだな」
鈍かどうかはわからないけど、ベルリアにあげたあのナイフは量産品の数千円のだったはずだ。
そこらへんのとかわりはないはずだけど、実際にあれでモンスターをしとめたわけだし使いようというやつなんだろう。
「ルシェ様たちはさすがだが、私たちは何も出来なかったな」
「そうですね。相性は最悪に近いですね」
この生い茂った感じだと炎を使えば、まず間違いなく燃える。
厳禁だ。
そうなるとミクは完全に外れる。
ヒカリンも『アイスサークル』のみになってしまう。
あいりさんの『アイアンボール』であればいける可能性はあるけど、俺自身の攻め手がない。
「次はベルリアを真似て木に登ってみるか」
「あいりさん⁉︎ 木に登れるんですか?」
「ベルリアが剣を足場にして登っていただろう。あれを模せば」
「いやいや、人間の跳躍力じゃ無理ですよ」
「そうだろうか、ステータスで案外いける気もするが」
俺には絶対無理だけど、あいりさんならいけるのか?
もしかしたらいけるのかもしれないけど、そうなるとほぼ忍者だな。
「海斗が1番レベルが高いんだしやってみればいいんじゃないか?」
「絶対無理です」
「そうだろうか」
「戦闘中に失敗したら死にますからね」
「今練習してみるのはどうだ?」
「無理です」