夕食の団欒
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
お正月をしっかり休んでしまったため大変な事になっていますが、今日からがんばりたいと思います。
時計を見ると19時だ。
となりのとろろもちょうど終わったみたいだしそろそろ帰るか。
シルたちの声がうるさかったけど、そういうものだと思えば案外気にならない。
ただノミとかダニの話をされるとなんとなく身体が痒くなってくるから不思議なものだ。
「それじゃあ、今日はここまでだ」
「お疲れ様でした」
「海斗〜続きはあるのか?」
「いや、となりのとろろはそれで終わりだぞ」
「そこそこ面白かったから、あったらみてやってもよかったんだぞ」
「いや、ないから」
どうやら思った通りルシェにはおもしろかったようだ。
やっぱり、このくらいがルシェにはピッタリみたいだな。
次は崖から飛び降りるプニョかな。
「次はいつだ? 明日か? 明日でもいいぞ?」
「考えとく」
勉強を終えて家に帰るといつもの如くカレーだったけど、食べてる最中に母親がとんでもない事を言い出した。
「今日は遅かったわね」
「勉強してたんだ」
「あ〜海斗も受験生だもんね。それにしては勉強してるのをあんまり見ないわね」
「家でやってないだけだから」
「ふ〜ん、普通は塾か家でやるものだと思うけど」
「ちゃんとやってるから」
「そう、ならいいけど。まあ海斗の場合大学行かなくてもどうにかなりそうだし好きにすればいいけど」
「いや、行くから」
「だって落ちることもあるでしょう」
「それはそうだけど受かるから」
「まあ、落ちたらしっかり稼いでさっさと結婚しちゃうのもひとつの手じゃない?」
「結婚⁉︎」
「そうよ。もう成人してるんだしお金も稼いでるんだし全然おかしくないでしょ」
うちの母親はいきなり何を言い出すんだ。
高校生の息子を捕まえて結婚⁉︎ いきなりすぎるだろ。
「いや、相手がいないから」
「え? 春香ちゃんいるじゃない」
「いやいやいやいや。それはあれだけど、俺たち高校生だから!」
「だから卒業して大学に落ちたらよ。春香ちゃんは大学受かるだろうし、楽しいキャンパスライフをおくると思うのよね。あれだけかわいいんだから色々誘われるじゃない。中にはイケメンもいると思うのよ」
母親の言葉に反論できない。
浮かべたくないのにその情景がハッキリと浮かんでくる。
今まで考えないようにしていたBパターン。
俺が王華学院に落ちて春香だけ受かるパターン。
そうなると当然母親のいうような事もあるだろう。
俺にとっては最悪だ。
「そうなっちゃうと、どうなるかわからないじゃない。それなら思い切って結婚とかもありじゃない? 私たちも初孫早く見れるだろうし」
「初孫⁉︎」
「そう、私もまだおばあちゃんって感じでもないし名前呼びとか憧れるわ〜。きっと春香ちゃん似の可愛い子が産まれるんでしょうね」
春香似の可愛い子。
それは、可愛いだろう。
とんでもなく可愛いだろう。
「いや、ないから。俺受かるから.絶対に受かるから」
「はいはい。まあそういう事も私は大丈夫って事だから」
私は大丈夫って何?
私が大丈夫でも俺と春香は大丈夫じゃないから。
いや、でも万が一受験に失敗するような事があれば、それくらいの思い切りが必要になる事もないとは言い切れない。
万が一か……。






