溶解
HJ文庫モブから始まる探索英雄譚10絶賛発売中です。
モーニングスターブックス 俺はこのモンスター溢れる世界をスキル『ガチャ』で生き抜く 最初に出たのは美味しいパンでした
は12/20発売です。
どちらもよろしくお願いします。
「ミク、お願い出来る?」
「う~ん、もちろんやるけど正直そこまでの微調整って難しいのよね」
「大丈夫だって。ベルリアの場合自分で治しちゃうから」
「そうね。それじゃあ溶かすわね」
本当は大丈夫ではない。
そんな事はわかっているけど、他に方法がない。
ヒカリンも善意から、そしてミクも善意。
誰も悪くはない。
ベルリアの耐性の無さが一番の問題だけど、こればかりはなぁ。
ミクが『ファイアースターター』を使いベルリアを覆っている氷を溶かしていく。
細かい作業は難しいとは言っていたけど上手いものだ。
ベルリアの輪郭に沿ってどんどん氷が溶けていく。
「ここまでは大丈夫なんだけど、ここからが問題なのよね。氷を溶かしきるとどうしても焼けちゃうのよ」
皮膚に直接触れていつ部分の氷を溶かせば当然皮膚が焼ける。
だけど、覚醒させるにはそれしかない。
「悪いけど、思い切って頼む」
「ふ~っ、やるしかないわね」
ミクの集中力が高まり、徐々にベルリアの皮膚と服が露わになり始める。
氷により濡れているからか、服もすぐに燃えるわけではなく蒸気をあげている。
「う、う~ん」
上半身が氷から解かれた状態になると、ベルリアに反応があった。
このまま下半身が解かれるまで寝かせておくのも一つの手だとは思うが意識が戻れば自分で出られるかもしれない。
「ベルリア!」
「う、う~ん」
「ベルリア起きろ!」
「姫様……」
「寝ぼけてないで起きろ!」
「う、う~ん。熱い」
「早く起きないと燃えてなくなるぞ」
「マイロード?」
「ようやく起きたか」
「ここは……私はどうして」
「まあ、いつものやつだ」
「ま、まさか⁉ いえ、それよりこの下半身の熱さはいったい」
「あ~おきた? 私が溶かしてあげてるんだけど」
「はっ⁉ ミク様? ああっ、私の下半身が⁉」
「どうする? 自分で出れる?」
「い、いえ。この状態ではままなりません。申し訳ありませんがお願いします」
最初は動揺がみられたベルリアだがようやく状況を把握したようで、ミクにまかせる事にしたようだ。
「う、ううっ」
「ごめんね~」
「い、いえ。問題ありません」
こうなると目を覚まさせたことがあだとなってしまった。
意識があるので当然熱いらしい。
ミクに炙られている間、ベルリアはずっと痛そうにしていた。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ『ダークキュア』」
「どうだ? いけそうか?」
「マイロード、問題ありません。すぐにでも敵を討ち果たしてみせます」
「いや、敵はもうあいりさんとルシェリアが倒してくれたから」
「ルシェリア姫、この命また救っていただいたのですね。このベルリアの命いかようにも」
「ばかじゃないの? お前の命なんかいるわけないだろ。それより海斗わかってるだろうな」
「ああ、まかせとけ」
「姫の寛大なお言葉、このベルリア……ぅぅ。あいり様もありがとうございます」
「ああ、大丈夫だ。人には得手不得手というものがあるからな」
「言葉もありません。ところで敵には相当な氷使いがいたのですね」
「それは、どういう意味だろうか?」
「この私を閉じ込めてしまうほどの魔法を使う敵がいたのでしょう。流石は20階層というべきでしょうか。私も注意が足りませんでした」
「あぁ、それは……」