あいりさんのしっぽ
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この状況どうすればいい?
とりあえずベルリアを『鉄壁の乙女』で保護はしたけど、すぐに起きる様子はないし放置すれば的にされるのは目に見えている。
「海斗さんベルリアくんはわたしが守るのです」
「大丈夫?」
「まかせてください。『アイスサークル』」
「ヒカリン⁉」
ヒカリンは何を思ったのかベルリアを氷漬けにしてしまった。
「大丈夫なのです。ベルリアくんは前にも氷漬けになっていた事があるので。この氷なら少しくらい攻撃されても守れるのです」
確かに分厚い氷の棺であれば少しくらいの魔法であればノーダメージでいけるかもしれないけど、それにしてもだ。
哀れベルリア。
もう凍ってしまっているので、この戦闘中に解凍すべきではないだろう。
ヒカリンに突っ込みたいところはある。
あるが今は目先の敵をどうにかする方が先だ。
「まかせろ。ベルリアの分は私が役目を果たそう」
あいりさんが鉄球を放ち斬り込んでいく。
俺も気持ちを切り替え、シルを抱っこしつつあいりさんを追う。
「いやああああ~『斬鉄撃』」
あいりさんの一撃がモンスターを捉える。
前衛ひとりには数が多すぎる。
モンスターとの距離が詰まったことで、魔法による攻撃が激しさを増す。
「あいりさん、入って下さい」
いくらあいりさんでも的にされ集中砲火を喰らえば避けきれるものではない。
あいりさんに引いてもらい、光のサークル内に戻ってもらいながら次のターゲットへと進んで行く。
ちょっとおかしな戦い方だとは思うけど、理にはかなっている。
「しょうがないな~わたしも手伝ってやるよ。さっさと溶けて消えろ『侵食の息吹』」
ルシェがモンスターを溶かしてしまう。
やはり、このフィールドでは『侵食の息吹』が有効だ。
「ルシェ様、ありがとうございます」
「ふん、礼なんか必要ない。さっさと終わらせるぞ。あいりもこんなちんけな魔法しか使えない奴らに手こずってんじゃないぞ」
「はい、もちろんです」
ここにきてむらっ気のあるルシェがやる気を出してくれているのは助かる。
ただ、なんとなくあいりさんがベルリアと重なって見えてしまうのは俺の目がおかしいんだろうか。
「ルシェ様見ていてください。あれは私がしとめます」
あいりさんが光のサークルから飛び出しジグザグに走りながら、間合いに入った瞬間加速して薙刀でモンスターを突いた。
流石はあいりさん。
あまりあいりさんが突きを使っている場面を見た記憶はないけど、木々に覆われたここでは大振りよりも突きが効果的だと判断したのだろう。
「ルシェ様、やりました。見ていただけましたか?」
あいりさんに、激しく振られるしっぽが生えているように見えるのはやはり俺の目がおかしいんだろうか。