お姫様抱っこは突然に
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ジャングルを進んで行く。
決してルシェの言葉に従っているわけではない。
「ご主人様敵がきます」
「数は?」
「10体です」
「10体? 多いな」
「みんな、全方位に意識を」
どんなモンスターかはわからないけど、数が多い。
それだけでも要注意だ。
意識を周囲に広げ、少しずつ前へと進んで行く。
「あれか」
進んだ先にそれはいた。
小柄の人型モンスター。
鬼とは違うが、人に近い風貌をしてはいる。
小型の原人とでもいえばいいのだろうか。
こちらがモンスターを視界に捉えた次の瞬間攻撃が飛んできた。
「マイロードには指一本触れさせません」
ベルリアが剣を振るい、飛来物を斬り落とすが、次々にこちらへとそれが降り注ぐ。
氷の槍。
おそらくは魔法によるものだと思われるが、研ぎ澄まされた氷の槍が次々にこちらへと向かって飛んでくる。
いくらベルリアでもこの数は無理だ。
「シル、『鉄壁の乙女』を頼む」
「はい、おまかせください。ご主人様たちの事はこのシルがお守いたします。『鉄壁の乙女』」
俺達の周りを光のサークルが包んでくれる。
光のサークルの中で敵モンスターを観察する。
今見えてるのは5匹。
ただ飛来する槍の数は明らかにそれよりも多い。
こちらからは見えない場所から魔法を放ってきている。
流石にこの数を順番に放たれると切れ目がない。
光のサークルの中でしばらく様子を窺っていると、飛んできていた氷の槍の中に炎の弾が混じり始めた。
あのモンスター完全に原住民系の風貌なのに、複数の魔法が使えるらしい。
弾幕ともいえる数の魔法が降ってきているこの状況では近づいてしとめるというわけにもいかない。
待ってればMP切れとか起こすのか?
モンスターがMP切れを起こしたというのもあまり聞いたことはないしこのままでは埒があかない。
「マイロードここは、私がうって出ます」
「いや、一人じゃ集中砲火浴びるぞ」
このフィールドだし、シルとルシェに一気に殲滅してもらう事は難しい。
「私もいこう」
あいりさん。
いい案も思いつかないしベルリアとあいりさんがいくなら、俺も行くしかないな。
だけど、この見通しの悪いフィールドで、飛び出していくのは危ない。
「シル、いいか?」
「えっ⁉」
そう言ってから俺は、『鉄壁の乙女』を展開しているシルをその場でお姫様抱っこする。
「ご主人様⁉ な、なにを」
「シルはこのまま『鉄壁の乙女』を継続してくれ」
「は、はい」
「ベルリア、あいりさん。このまま距離を詰めます。近づいたらしとめてください」
残念ながらこの状態では、スピードを出すことは難しいので足下に気を付けながら敵へと距離を詰めていく。