ヒル即斬
HJ文庫モブから始まる探索英雄譚10が11/1発売です。
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「やっぱり燃やすのが一番だろ?」
「いや、それだけは遠慮しとく」
「人の親切を何だと思ってるんだ」
「うん、大丈夫だから」
ルシェにお付き合いする余裕は俺にはない。
殺虫剤を吹きかけてみるか?
だけど俺の顔も直撃するだろうからよくないな。
ほかに手段もないか。
「ベルリア、やってくれ」
「それは斬れという意味でしょうか」
「そう、スパッといってくれ。俺は斬るなよ?」
「もちろんです」
俺はベルリアに切断してもらう事を選択する。
ちょっと危ないけど、ルシェに比べたら遥かに低リスクだ。
覚悟を決めてベルリアにすべてを託す。
「それでは失礼します」
ベルリアが俺に向け白麗剣を構える。
ベルリアの技量は信じている。
信じているけど剣を向けられると普通に怖い。
ベルリアが高速で白麗剣を振った。
「マイロードから賜りしこの白刃に斬れぬものなし」
そうベルリアが口にし白麗剣を戻した直後、ボトッという音とともに地面には巨大なヒルと思われる物体が切断され落ちた。
取れたのか?
いや、だけどこれでかすぎないか?
普通に野球ボールくらいはあるぞ?
まさかこれって全部俺の血なのか。
俺大丈夫?
「海斗、取れたようだ」
「そうですか、吸われた跡とか大丈夫そうですか? かなり痒いんですが」
「大丈夫といえば大丈夫なのか?」
あいりさん、なんで疑問形?
「海斗、しっかり吸い跡が残ってるのよ。これを見ると大丈夫とは言えないかも。変な病気とか持ってるかもしれないし」
「ミク、怖いこと言わないでくれ」
「でも、本当の事だし」
「ベルリア、『ダークキュア』って感染症とかにも効果はあるのか?」
「よくわかりませんが、効果はあると思います」
よくわからないのに効果があるってどういう意味なんだ?
ベルリアもわかってないようだけど、ここはベルリアのスキルを信じるしかない。
なんか首だけじゃなくて全身痒くなってきた気がする
「ベルリア頼んだ」
「おまかせください。必ずマイロードを治してみせます『ダークキュア』」
ベルリアがスキルを発動すると、徐々に痒みが薄らいできた気がする。
「ベルリア、助かった。それにしてもいつの間にこんなのが付いたんだ?」
「これはヤバいな。こんなに大きいのは見たことがない。ダンジョンの固有種なのかもな」
「あいりさん、私は大丈夫ですか?」
「見る限りは大丈夫のようだ」
「あれが自分についてるのを想像すると倒れそうなのです」
「海斗、これってどんな感じなんだ?」
「全然気が付きませんでしたけど、ベルリアが斬った直後に全身痒くなりました」
「うう~っ、考えただけで全身が痒くなりそうだ」
あいりさん、それはあんまりです。
俺なんかこんなに血を吸われてるんですよ?
ほぼ献血並み。
これに全身取りつかれたら普通に死んじゃう気がする。
それより痒みが収まったってことは病原菌とかも大丈夫になったって事だよな。