ヒルは虫?
HJ文庫モブから始まる探索英雄譚10は11/1発売。
予約受付中です。
カバーイラストは今回初登場のティターニア。
かわいいです。
あいりさんにお願いしたけど、明らかに躊躇している。
「あいりさん、お願いします! 自分では取れないんです」
「わかっている。わかっているんだ」
「そんなに大きいんですか?」
「まあ、おおきい……かな」
あいりさんの妙な間が不安を煽る。
「ベルリアどうなんだ」
「この種の虫を見るのは初めてですが、魔界のそれと近しいような」
魔界の虫に近い? 魔界の虫を見たことはないけど、そういう意味だよな。
「ベルリア取ってくれるか」
「はい」
ベルリアが剣を俺の首元へと近づけてくる。
結構怖いな。
「待って!」
ミクの声でベルリアも俺もビクッとなってしまう。
危ない。
危なすぎる。
ミク、ベルリアの手元が狂ったら大変なことになるんだぞ。
「どうかした?」
「ヒルって切ったら取れるの?」
「取れるんじゃない?」
「前に動画でたばこの火であぶって取る動画を見たことあるんだけど」
「火であぶってほうがいいのか?」
だけど俺達はたばこなんかもちろん持ってないし、ライターもない。
「おい、海斗あぶるって、燃やせばいいのか」
「そうらしいけど」
「ふ~ん、それじゃあわたしがやってやるよ」
『え⁉」
「本当はこんな虫を焼くのは嫌なんだぞ? わかってるのか? 『破滅の……』」
「ストップ! ちょっと待て!」
危なかった。
首下で獄炎なんか使われたら終わる。
ルシェがそんな細かいこと出来るはずがない。
「今思い出したんだが,ヒルもナメクジのようなものだし塩が効いたような」
「そうなんですか? だけど塩なんか持ってませんよ」
「任せろ」
そう言ってあいりさんが取り出したのは以前使った人工聖水。
「ああ、そういえばありましたね」
本物の聖水がヒルに効果があるかはわからないけど、この人工聖水は塩を混ぜてある。
「それじゃあかけてみるぞ。ベルリア頼んだぞ」
あいりさんは明らかに避けている。人工聖水をベルリアに託し、自分は一歩下がった。
「マイロード、それでは」
ベルリアが聖水を首下へとかけてくれる。
「ううっ、気持ち悪いのです」
ヒカリンが露骨にいやそうな声をあげる。
どうなってるんだ?
「海斗、効果はあるようだな。急にうねうねと動き始めた。ただ取れそうにはない」
「そうだ、こうなったら海斗お得意の殺虫剤をかければいいんじゃない? ヒルも虫っぽいし」
「ミク、ヒルは虫じゃなくて一応動物だぞ」
「そうなんですね。あいりさん勉強になりました」
「まあ王華の入試には出ないだろうが」
ヒルが虫でも動物でもいいけど殺虫剤なんか吹きかけたらダイレクトに俺の顔にかかる。
それはヤバイ。
「それじゃあ虫よけスプレーは?」
「効果あるかな」
「ものは試しよ」
ミクにそういわれて今度は虫よけスプレーを吹きかけてみる。
虫じゃないのに効果があるのかは謎だ。
「海斗さん、もっとうねうねしはじめたのです」
「取れた?」
「ダメなのです」
まだだめなのか。
ダンジョンのヒルは一筋縄ではいかないようだ。