ジャングル体験
HJ文庫モブから始まる探索英雄譚10が11/1発売です。
予約受付中です。
Book walkerは特典SS付きです。
よろしくお願いします。
20階層は基本蒸し暑いけど、空調付きマントのおかげでそれほど苦ではない。
「みんな大丈夫?」
「大丈夫なのです。こんな言い方すると、あれなのですけど、ジャングルって楽しいですね」
「へ〜っ、ヒカリンってこの感じ大丈夫なのか」
「はい、今まで体験したことのない場所ってワクワクするのです。わたしにとっては夢の世界なのです」
ここが夢の世界か。
俺にもそういう感覚はあるけど、ヒカリンは今まで病気がちだったから、余計にその想いは強いのかもしれない。
危険があるのはわかっているけど、階層毎に情景が変わるダンジョンはさながら異世界。
新しい階層にテンションは自ずと上がる。
善し悪しは別として、20階層のこの状況は振り幅が大きい。
「私は、この階層はちょっとパス」
「パスって、パスできるなら俺もそうしたいけどそれは無理でしょ」
「どうせジャングルならボルネオのリゾートとかの方がいいわ」
「行った事あるの?」
「家族で行ったのよ。ロッジは素晴らしいし、オランウータンも可愛いのよ」
さすがはミク。
まさかリアルジャングルを経験済みとは思わなかった。
オランウータンって実物見たことないかもしれないな。
「ボルネオってどこだっけ」
「インドネシア、マレーシア、ブルネイよ」
「3カ国?」
「そう、ひとつの島を3カ国が領有してるのよ」
「そんなことあるんだ」
「世界でもボルネオだけじゃない?」
「へ〜っ」
受験勉強じゃやってないな。
地学を選択してないからだけど、学校で習った記憶もない。
「ミクもジャングル経験あるなら言ってくれればいいのに」
「ジャングル経験って。ボルネオはリゾートなの。大蛇とか襲ってこないから、参考になるわけないでしょ」
「まあ、そうだけど。あいりさんはジャングルとかは?」
「いや、ないな。私は海外には行ったことがないんだ。父が日本贔屓でな」
なんかあいりさんの家らしいな。
話ながら進んでいると、ちょっと首元が痒くなってきた。
気になって首元を触ろうとしてヒカリンに止められる。
「ちょっと待ってください。海斗さん……それ」
「え? なんかなってる? 虫刺されかな」
「違います。なにか付いてるのです」
「付いてる? なにが?」
「海斗、ヒルだ。いやヒルだと思う」
「ヒルですか⁉︎」
「ああ、おそらくだが」
「あいりさん、おそらくっていうのはどういう意味ですか?」
「いや、大きさが私の知ってるそれとは違う」
「それは……大きいってことですか?」
「そうだ。とんでもなく大きい」
自分では見えないけど俺の首元に巨大なヒルが……。
「あいりさん、取ってもらっていいですか?」
「いや……それは」