831話 カラオケ
昨日知りましたが、モブからが受賞したHJネット小説大賞2019の大賞受賞作夢見る男子は現実主義者が2023年アニメ化だそうです。おけまる先生おめでとうございます。この年はモブから含め受賞作のうち3作品が5巻越え。そして受賞者の御子柴奈々先生も冰剣の魔術師で2023年アニメ化。御子柴先生おめでとうございます。受賞者からアニメ化が2名出るとは本当に当たり年でした。
モブからはこれからも地味に頑張りますのでよろしくお願いします。
「海斗〜聞いてくれよ〜」
「どうしたんだ? なにかあったのか?」
「最近茜ちゃんからの返信が減ってきた気がするんだよ〜」
「前は長文で返してくれるとかって言ってなかったか?」
「そうなんだ。前は長文だったのに今は、ほとんど一言だけ」
「なにかやらかしたのか?」
「いや、なにもやってない。思い当たることがない」
「一緒に出かけたりもしたんだろ」
「おう、カラオケには何回も行ってるぞ」
そういえば隼人は、以前カラオケ、カラオケって言ってたな。
「カラオケか。いいんじゃないのか。隼人はどんな曲歌ってるんだ?」
「そりゃあ、女の子と2人でカラオケ行ったらラブソングだろ」
「ラブソングか。そういえば俺と真司も連れられて練習してたな。他は?」
「ラブソングメドレーだ」
「そうなんだ。もしかしてずっとか?」
「もちろんだろ」
どうなんだ。相手といい感じだったらアリなのか? それともこれが原因なのか。俺達と行った時もずっとラブソングだけ練習してたな。
「カラオケ以外はどこに行ったんだ」
「一回だけカフェに行ったけどな」
「もしかして一回以外はカラオケか?」
「おう、女の子と2人の定番だろ」
多分だけど、これが原因だな。毎回カラオケでラブソング。そりゃあ嫌にもなるかもしれない。
「隼人、茜ちゃんはカラオケでどんな感じなんだ?」
「毎回俺のラブソングを静かに聴いてくれてるぞ? 俺はこの為に猛特訓したんだからな。海斗も知ってるだろ?」
「まあ、一緒に行ったからな。隼人、俺から言えるのはカラオケはやめておいたほうがいい」
「なんでだよ」
ああ、こういうのは自分ではわからないものなんだな。いや、俺も隼人のことを言ってられない。俺も最近春香をカフェばっかりに連れて行ってる気がする。
まずい。こんなんじゃ、隼人みたいに短文しか返ってこなくなる。
早々に隼人との話を切り上げ、急いで春香のところへ向かって声をかけてみる
「春香、よかったら放課後どっか行かないか?」
「今日ダンジョンは行かなくていいの?」
「うん、今日は大丈夫なんだ。どこか行きたいところとかない?」
「それじゃあ、カラオケ行ってみたいな。海斗と行った事なかったでしょ」
「カラオケか。うんいいんじゃないかな。駅前のカラオケ行こうか」
「うん、楽しみだね」
まさかのカラオケ。いやでも隼人の場合とは違うから問題ないな。いや問題はある。
俺は歌が上手くはない。上手くはないというより音痴だ。だけど春香が行きたいと言ってくれたんだから行かないという選択肢はない。
放課後になり春香と2人で駅前のカラオケ店へと入る。
「海斗、どっちが先に歌う?」
「もちろん春香が先に歌って」
「それじゃあ、お言葉に甘えて先に歌うね」
よく考えてみると春香の歌を聞くのは小学生の時の音楽の授業以来だけど、流石にその時の歌声までは記憶にない。
待っているとすぐに春香の入れた歌が始まった。
「あなたと〜あの日一緒に見た夢〜かなえたいから〜……」
うまい。ものすごくうまい。こういうのを天使の歌声とでも言えばいいのか? 春香の澄んだ声が部屋を包み、歌詞が心に染み渡ってくる。
あまり詳しくはないが、テレビに出てくるアイドルなんかより百倍オーラがあって、これが歌姫。
「海斗、どうだったかな」
「うん、いい。すごくいいと思う」
「よかった。じゃあ次は海斗ね」
「あ……」
春香の歌声に聞き惚れていて失念していたが、俺の番……
やばい。何を歌えばいいんだ。普段それほど音楽を聴くわけではないので最新チャートにのっているような曲は歌えない。
だけど、この場で昔のアニメソングを歌うのも違う。
いや、俺にも歌える歌がある。
それは隼人に付き合わされて一緒に練習させられたラブソングの数々。
昔のアニメソングと隼人仕込みのラブソング。
どっちが正解なんだ。






