821話 メタルスコーピオン
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バルザードの刃が更に食い込み、振り切ると力が抜けバランスを崩しそうになるのを、右脚を踏ん張り耐える。
そのまま前方へと飛び込み、前転しながら体勢を整えてメタルリザードへと意識と刃を向けるが、動きの止まったメタルリザードが、ゆっくりとその場に倒れて消失した。
無傷で勝つ事はできたが、正直かなり苦戦した。
バルザードを以ってしても硬い。
それにバルザードの刃渡りでは、中型以上のモンスターには一撃でしとめることが難しい。
「ふ〜っ」
肩で大きく呼吸し、残りの二体に視線を向けると、既に二体にはそれぞれベルリアとあいりさんがあたっていた。
俺もすぐにあいりさんのフォローに入りたいところだが、メタルリザード相手にアサシンの能力を使い、集中し全身の力を解放したせいで身体に乳酸が溜まり、動こうとしても身体の反応が鈍い。
「マスターいきます『ウィンガル』」
後方から俺の様子を伺っていたティターニアがタイミングよくサポートしてくれる。
ティターニアがかけてくれた『ウィンガル』の効果で、身体が軽くなったような感覚があり、駆けるとすぐにトップスピードへと入りあいりさんの下へと向かう。
あいりさんの相手はメタルボディの巨大なサソリ。
あいりさんがその爪を薙刀で弾きながら戦っているが、更に二本ある尾が襲いかかる。
『ラントニングスピア』
尾に向けミクが雷の矢を放ち迫る尾を弾き返すことには成功したものの、ダメージを与えるには至らない。
やはりメタルボディのモンスターは直接的な魔法とは相性がすこぶる悪い。
「やっぱり厳しいわね。これならどう! 『幻視の舞』」
ミクが続け様にスキルを放つが、モンスターに変化は見て取れない。
この階層のモンスターには、『幻視の舞』も効きにくいのか?
「これもダメなの!? 海斗まかせたわ!」
「わかってる。あいりさん俺も一緒に戦います」
「頼む。四方からの攻撃が思った以上に厳しい」
「左半分は俺が受け持ちます」
『ウォーターボール』
俺は魔法を発動してバルザードに氷を纏わせあいりさんの左側に並ぶ。
俺を認識した敵モンスターが俺に向けてハサミで攻撃してきたのを避けるが、その直後上方から尾が迫ってきた。
魔氷剣を振るい迫る尾に斬りかかるが、弾いた瞬間今度はハサミが襲いかかってくる。
俺は咄嗟にアサシンのスイッチを入れ集中し、ハサミを避ける。
なんとか避ける事ができたものの、ハサミと尾の同時攻撃はかなり厄介だ。
2方からでも厄介なのに、さっきまであいりさんが一人で四方からの攻撃を凌いでいたのは凄い。
あいりさんと二人で凌いではいるが、二方からの攻撃を避けながらでは攻め手に欠ける。
「あいりさん、海斗さん避けてください『アイスサークル』」
ヒカリンの声が聞こえた直後、俺達とサソリの間に氷の柱が出現した。






