第556話 水竜戦
凛子さんと都さんが後方から魔法を発動して水竜を牽制するが凛子さんの『ファイアスピア』は水竜の水のベールに阻まれてほとんどダメージを与える事が出来なかったようだ。
一方都さんの『アースハンマー』は力押しで水のベール越しにダメージを与える事に成功したようだが、水竜の態勢を崩すまではいっていない。
後方からの援護が不十分なまま向かって行った男性陣の四人は、結果的にほぼ万全な状態の水竜と正面から組み合う事となった。
『バーニングエッジ』
冬彦さんが炎の刃を水竜に向けるが、凛子さんと同じように水のベールに威力を大きく削がれて、水竜の外皮を貫く事は出来ない。
炎をメインに戦う人が二人いるのは、それだけで対水竜には大きなビハインドを背負っているように思える。
「くそっ！ 俺は相性最悪みたいだ。お前ら後は頼んだぞ！」
そう言って冬彦さんは一歩後ろに引いた。
一撃であきらめちゃったのか？
いくらなんでも、あきらめがちょっと早すぎないか？
「まかせろ！ 俺がやってやるぜ！ オラ〜！」
剛さんの魔斧が水竜の外皮を削る。
やっぱりあの戦斧、ボス部屋のドロップだけあって結構優秀だな。
剛さんみたいな使いこなしてくれる人に買われてよかった。俺だと、どう考えても武器に振り回されて使いこなせそうにない。戦斧はやっぱりパワータイプの人に似合うな。
「俺もやりますよ」
「俺も」
残りの二人も、もう一体の水竜に向かって攻撃を仕掛けるが、明らかにあの水のベールを突破するには火力不足に見える。
槍を持った涼さんが牽制しながら、バスタードソードを持った仁さんが横から切りかかっている。
よく見ると仁さんの剣が微かに帯電しているのが見える。
あの剣も魔剣か。雷の魔剣を見るのは、初めてだが、あの感じだとそこまで出力が高いようには見えないので、焦がすというよりも痺れさせる効果とかがあるのかも知れない。
いずれにしても水竜には相性がいいはずだ。
「行くぞ！ 『サークルスラッシュ』」
仁さんがスキルを発動して斬りかかると、水竜の外皮が四〇センチ程の円状に抉れた。
『ガアアアアアアア！』
水竜が痛みで咆哮をあげた。これは完全に効いている。
仁さんが追撃に入ろうとした瞬間水竜は首を振り、そのまま仁さんに向けて口を開け、ウォーターブレスを放った。
「おおおおお〜っ、やべ〜！」
仁さんはウォーターブレスが放たれた瞬間、前方へと飛び込んで水竜の下に潜り込むように転がった。
前方へと飛び込んだが水竜の下に潜り込むのは、相当な勇気がいるはずだ。俺も以前カメに潜り込んだが、あれでも十分に恐ろしかったのだから水竜はそれ以上だろう。
仁さんはそのまま反対側まで転がって離脱して難を逃れた。
「ドガアアア〜ン！」
仁さんが反対側に離脱して起き上がった瞬間に水竜の腹の下が爆ぜた。
これはさっき地竜戦で見たのと同じだ。
俺には見えなかったが仁さんが転がりながら、爆弾を仕掛けたのだと思う。
あの回避の一瞬で、それができるのは手慣れた戦法なのだろう。
水竜は腹にダメージを受け、かなり弱っている。
「どいてくれ！ 俺がやる」
冬彦さんを見ると手には小型のガトリング砲のような武器を持っている。
ハンドガトリングか？
冬彦さんが引き金を引くと三本の銃身が回転しながら弾を放出した。
「ガガガガガガ」
連続で銃弾の掃射音が響き渡り水竜にダメージを与えていく。
「すごい……」
実物は初めて見るが、戦争映画さながらですごい威力だ。
ベルリアに持たせてある魔核銃とは桁が違う。
数十いや数百の銃弾が水竜を襲い、一体が消滅した。
「ようやく一体倒せたか。もう一体に全員でかかるぞ〜！」
冬彦さんの声を合図に剛さんが相手にしている水竜に仁さんと涼さんが向かって行くのが見える。
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