第39 話 5階層前日
予定では、今日5階層に潜る予定だったが、俺はまだ4階層に潜っている。
遅れた理由は、ランクアップの手続きのためだ。
BP 40に到達した時点で申請できたが、4階層を抜けるタイミングで申請したかったのだ。
「高木 海斗さーん」
「はい」
「おめでとうございます。こちらがアイアンランクの識別票となります。」
「ありがとうございます。」
「履歴を見ると、ストーンランクから数ヶ月でのランクアップですね。すごいですね。何か特別な攻略法でもありましたか?」
「い、いや。そういう訳ではないんですけど。 はは・・・」
「ストーンランクには2年以上かかられたようですが、そこから僅か数ヶ月でアイアンランクですからね。なかなか無い事ですよ。これからも頑張ってくださいね。」
「はい。がんばります。」
滅多に褒められることがないのに、このタイミングでギルドの人に褒められて、顔に血液が集中してしまった。
「アイアンランクの特典ですが、すべてのアイテム買取価格が5パーセント割増となります。
またダンジョンマーケットでの買い物がレアアイテムを除き5パーセント割引となります」
ストーンランクより少しだけ優遇されるようだ。
少しだけ・・・
自分でも信じられない。シル達に出会ってからすごいペースで変化が訪れている。
少し前の俺なら アイアンランクと5階層進出なんて話を誰かにしたら笑い話にしかならなかっただろう。
それが今、現実になった。
まだ先は長い。でもこれからも進んでいこう。今はそう思っている。
手続きに時間がかかった為、5階層への挑戦は見送り、4階層に潜ることにした。
いつも通り 探索をしていたが後ろで何やら シルとルシェリア がコソコソやっている。
気にはなるが、ちょっと怖いので放っている。
「ルシェリア お話ってなあに?」
「ああ、あのさー。あれだよあれ」
「あれってなあに?」
「名前だよ名前。」
「名前って?」
「シルフィーはシルって呼ばれてるだろ。わたしはルシェリアのまんまだろ。結構一緒にいるけど、ルアとかシェリとか呼ばれないのかなと思ってさ。」
「あー。ルシェリアも愛称で呼んでもらえるように頼んでみれば?」
「い、いや。呼んで欲しいわけじゃないから。なんとなくだよ、なんとなく。」
「ルシェリアはご主人様の事どう思っているの?」
「いや、正直、最初はさえない奴に召喚されたなー。ハズレたなーと思ってたんだけど。ケチだし。
それが最近、結構私に優しいし。」
「うん、ご主人様優しいよね。」
「弱っちいから、役立たずだと思ってたんだけど、この階層に来てから な。 結構頑張ってるなとは思う」
「そうだよね。虫がダメな私たちのために、頑張ってくれてるよね。かっこいいよね」
「い、いや!? かっこよくはないけどな。まあちょっと、認めてやってもいいかと思って。」
「そうなんだね。ルシェリアもご主人様が大好きなんだね。」
「バ、バカ!? 違うよ。全然好きじゃないし。ちょっとマシになっただけだ!!」
「うん、うん。じゃあ私がお願いしてあげる。」
「えっ、いいのか!?」
「うん」
どうやらコソコソしていたのが一段落したようだ。
「ご主人様。」
「ん?なんだ」
「一つお願いがあるんですが、よろしいでしょうか?」
「お願い?内容にもよるけど」
「ルシェリアの名前なんですけど、シルみたいに呼び名をつけてもらえないでしょうか?」
「えっ、ルシェリアに?それ大丈夫か?あいつに呪われないかな?」
「ルシェリアが望んでることなんです。」
「そ、そうか。 じゃあ考えるぞ。 うーんじゃあ『ルシェ』がいいかな。」
「はい。とってもいいと思います。ねえルシェリア」
「あ、ああ。センスねえな。だけどまあ、もらっといてやるよ。『ルシェ』な。」
「ああこれからもよろしくな。ルシェ。」
「う。う、うん。まあよろしく。」
なんだこの態度は?
自分たちで呼び名をつけてくれと頼んできたのに、センスがないとか。
しかも仲良くなる為の呼び名かと思ったら、妙によそよそしい。
意味がわからない。
やっぱり、ルシェリア いやルシェは難しい。
そんなこんなで、仲も深まったのかよくわからないが、ランクアップも果たし、テンションMAXで明日から
5階層に挑む。
いつもありがとうございます。
この作品は皆様のブックマークとポイント評価に支えられています。
興味を持たれた方はブックマークと下部からのポイント評価をお願いします。






