第379話 勉強会
「海斗くんは探索者をしながら王華学院を受験すると聞いたけど」
「はい、その通りです」
「順調に行けそうかい？」
「はい、必ず受かって見せます。探索者としても順調です」
「そう、頑張ってね」
「はい！ありがとうございます」
挨拶もそこそこに2階の春香の部屋に案内された。
そこは俺の部屋とは全く違う女の子の部屋が広がっていた。
広さはほぼ変わらないと思うが色が全く違う。パステルカラーを基調として、小物も俺の部屋にはないものばかりだ。
俺の部屋も別に臭い訳ではないが、春香の部屋はいい匂いがする。
「それじゃあ勉強始めようか」
そう春香に切り出されて我に帰ったが、春香の部屋には勉強できる机が一つしか無い。
部屋に机が1つ。至って普通の事だが、机は1つしかないのに椅子は2つ並んでいる。
これは、一つの机に並んで勉強するというシュチュエーションに違いないが…………
「ここに座ってね。それじゃあ、明日の試験科目から勉強しよっか」
「あ、うん」
明日の試験は古典と英語だったよな。
言われるままに椅子に座って教科書を開くが、距離が近い。
学校の机で隣同士になるよりも遥かに距離が近い。
「まず、テストに出そうな所から問題を出してみるね」
「お願いします」
俺も最近は成績が上向きだが春香の方が優秀なので基本お任せしてみるが、近い。
「え〜っと、これはね〜………………海斗聞いてる？」
「えっ、ああ、もちろん聞いてるよ」
「それならいいけど、多分これ出ると思うよ」
「あっ、出るの？もう一度お願いします」
テストに懸ける想いはあるのだが、春香との距離感が気になってしまいボ〜ッとしてしまった。
あ〜シャンプーのいい匂いがする………
やばい、俺変態っぽい………
その後、春香から集中する様に注意を受け気合いを入れ直した俺は一心不乱に春香と勉強をこなしていった。
丁度1時間半経過した時に
「コン、コン。入るわね〜」
ドアをノックする音と共に春香のママの声がして、そのまま部屋に入ってきた。
「2人共集中して勉強してたみたいだから疲れたでしょ〜。お茶とお菓子をどうぞ」
「はいっ、ありがとうございます。いただきます」
どうやら気を使ってお茶を持って来てくれた様だ。
「海斗くんは春香と同じ大学に行くのよね。仲が良いわね〜」
「はい、ありがとうございます。がんばります！」
「そういえばこの前春香に指輪をプレゼントしてくれたみたいでありがとうね〜。素敵な指輪だったわ。春香も帰って来てからはしゃいじゃって」
「ママ！」
「はい。贈らせていただきました。ご迷惑では無かったでしょうか」
「迷惑なわけ無いじゃない。センスの良い指輪で春香が羨ましいわ〜」
「はい。ありがとうございます」
「それじゃあ、ゆっくりして行ってね」
「はい、ありがとうございます」
完全にテンパってしまって自分でも受け答えがおかしいのが分かるが、もうどうしようも無い。
お茶を飲みながらお菓子を食べて勉強を再開するが、今度は下の階の春香の両親の事が気になり始めてしまって集中力散漫となり再び春香から注意を受けてしまった。
その後持ち直して13時まで勉強すると再びノックする音と共に春香のママが現れ
「お腹すいたでしょ、下でみんなでお昼にしましょうか」
確かにお昼ご飯を食べる時間ではあるが、下でみんなでか………
「はい！ありがとうございます」
1階に降りてみると昼とは思えない豪華な食事が並んでおり、春香のパパは既に椅子に座っていた。
「それじゃあ、いただきましょうか」
春香のママの声で食べ始めたが、料理は非常に美味しい。間違いなく美味しいのだが、春香の両親との食事は緊張してしまった。俺以外の3人はリラックスして和やかな感じだが、俺にとってこんなに緊張感のある昼食は人生で初めてだ。
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