第361話 父来たる
俺は放課後にダンジョンマーケットでドラグナーの残金である300万を払いに行った。
おっさんは普段見せないような満面の笑顔を見せていた。接客業なのだから普段からその顔を見せて欲しいものだ。
その帰り道
「もしもし高木海斗さんでしょうか?」
「はい、そうですがどちら様でしょうか?」
「私、田辺光梨の父です」
俺の携帯に知らない番号から電話がかかってきて、田辺光梨の父を名乗る相手の事が一瞬誰かわからなかったが、すぐに田辺光梨がヒカリンの本名である事に思い及んだ。
「ああ、光梨さんのお父さんですか?」
「はい、突然の電話すいません。実は、おりいってお話ししておきたい事がありまして、今週どこかでお時間いただけないでしょうか?」
一体なんだ?ヒカリンのパパの口調は怖くはないが真剣そのものだったので、何か怒られるのか?と不安になったが、答えない訳にもいかないので、明日の放課後に駅前で待ち合わせをする事にする。
俺は、ヒカリンのパパの電話にその日1日悶々として過ごす事となった。
一体俺に何の用だろう。まさか娘に悪い虫がついたと追い払いに来るのだろうか?
う〜ん。俺何も悪い事はしていないよな。大丈夫だよな。
次の日も学校で悶々としながら授業を受けてから駅へ向かうと既にそれらしき人が待っていた。
「あの〜。田辺さんですか?」
「はい。あなたが高木さんですね。今日はわざわざお時間を取っていただきありがとうございます」
初めて会ったヒカリンのパパはメガネをかけており、俺よりも小柄の優しそうな人だった。
挨拶もそこそこに駅前の喫茶店に入ることにした。
「いつも光梨がお世話になっています」
「いえ、こちらこそ」
「早速なんですが、今日は高木さんにお願いがあってやって来ました」
「お願いですか?」
一体俺にお願いって何だ?ヒカリンをメンバーから抜けさせて欲しいのか?
「はい。少し話が長くなりますがよろしいですか?」
「それは別にいいですけど」
「実は光梨は病気なんです。5年程前に病気が判明しまして、症状は薬で抑制されていますが今の医学では根本的な治療は難しいんです」
「え……」
「本人も自分の病気が治るのは難しいのは理解していますが、このままでは成人を迎える事は……」
「ちょ、ちょっと待ってください。そんなバカな………だって光梨さん元気じゃないですか」
「効果的な薬が開発されて症状を抑える事が出来ているので、普段の生活は今のところは問題無いのですが徐々に効果が薄くなってくる様なんです」
「そんな事って……」
「私達も色々当たって見たところ通常の薬では根治しなくてもダンジョンで発見される薬なら可能性があるとわかりました」
「ダンジョンで発見される薬?ポーションですか?」
「いえ上級ポーション迄は自分で購入して試す事が出来たのですがダメでした。それ以上の霊薬、エリクサー、ソーマ、ネクターと呼ばれる薬であれば恐らく。ただ私達の様な一般人では幾らお金を出そうが手に入れる事は出来ませんでした。一部の上流階級の方だけがオークションで稀に手にいれることが出来る様で私ではダメでした」
エリクサー、ソーマ、ネクターそれぞれ名前だけは聞いた事がある。
死者さえも蘇らす事ができると言う都市伝説さえ生まれている神秘の霊薬。正真正銘のレアアイテムだ。
金額は億ではきかないだろうがそれ以上に一般人では手に入れる事が出来ないアイテムとしても有名だった。
一部の権力者達が己の為に使うべく一般の市場には出回らないと言われていた。
「エリクサーですか………」
「はい。光梨は、身体の事もあって学校以外は家ではほとんどゲーム等をやって過ごしていたのですが、自分で薬を手に入れるんだと言い出しまして、止めようともしたのですが、自分の命だからと言われてしまい私には反対する事は出来ませんでした」
「でも光梨さん、ダンジョンでは普通に活躍してるんですよ」
「はい。どうやらダンジョンで得られる特有のステータスのおかげで、ダンジョンでは地上よりも調子がいい様なんです」
ああ、そう言うことか。ダンジョンではステータスの補正が効いて元気に見えているのか。
ゲームに詳しいのもそれでか………
初めて会ったヒカリンのパパの話は衝撃的だった。
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