第329話 シークレットウエポン
俺は落とし穴に落ちてしまい絶対絶命ともいえる状況に陥ってしまった。
手元に残っていた魔核銃を取り出して絡みつく根に向かって魔核銃を放つが効果範囲が狭すぎる為、効果は限定的で残念ながら断ち切る事は出来なかった。
上にいるあいりさんに向かって
「あいりさん!俺身動き取れないんで、鳥型はお願いします。今狙われるとやばいです」
「わかった。任せてくれ」
上空の敵はあいりさんに任せたのでひとまず大丈夫だろう。
今のうちにこの根とその下のモンスターを倒す必要があるが、正直手詰まりだ。
動いても全く取れない所か寧ろ食い込んでいっている。
『ウォーターボール』は一定の効果があったが、脚すれすれに放つには危険すぎる。
魔核銃は効果が薄すぎる。
後は何がある?
殺虫剤はあるが効果があるとは思えない。
最悪、火をつけてファイアーブレスにすればいけるかもしれないが、俺の脚が無傷で済むとは到底思えないし残念ながらそんな勇気は無い。
シュールストラーダの缶も1個だけあるが、地中の植物に臭いが効果があるとは思えない。
後は何がある?
後持っているのは間食用のお菓子と水だけだ………
いや待て。そういえば一度も使った事が無かったが、入れっぱなしになっていた物が1つだけ有った。
『マジックシザー』
以前ドロップしたが他のメンバーに受け取り拒否されてしまい俺が引き取った魔法のハサミ。
魔力により通常のハサミよりも切れ味が鋭いハサミ。
これまで1度も登場の機会が無く、正直存在自体を忘れかけていたハサミ。
もしかして、これならいけるかもしれない。
通常のハサミでは流石に木の根を切るのは厳しいと思うが、俺のは魔法のハサミだ!
「これしか無い!これに賭けるしか無い!頼んだぞマジックシザー!」
俺はマジックシザーをリュックから取り出して手に持った。
もう一刻の猶予も無い。
俺は残された唯一の希望マジックシザーに全てを託し、脚に巻きついている根に向かってハサミを入れた。
頼む!切れてくれ!
俺の祈りにも似た念を乗せて刃を閉じる。
刃を閉じた瞬間、ほとんど抵抗も無く完全にハサミの刃が閉じた。
「やった!切れた!」
何の問題も無く切る事が出来るようなので、俺は急いで脚に絡みついている根をどんどんマジックシザーで切り落としていった。
「すごいな……」
自分の手の中にある小さなハサミは、どんどんモンスターの根を切り取って行く。
俺がどれだけ引っ張っても千切れなかった根がほとんど抵抗感無く切れていくので凄い切れ味だ。
用途はかなり限定的だが、切れ味だけで言うと魔剣顔負けの切れ味では無いのだろうか。
巻きつかれる前にほとんどの根をカットする事が出来たので、急いでその場から抜け出して前方に放り出してしまったバルザードをすぐに拾い上げる。
バルザードを根が出ている中心部目掛けて突き刺して破裂のイメージを伝える。
根の見える地表部分と隠れた地下の本体が一斉に破裂したのがバルザード越しに伝わって来た。無事に倒す事が出来た様だが、今回は危なかった。
マジックシザーが無ければやられていたかも知れない。
余り有用性が認められていないマジックシザーだが、みんな使い方を知らないだけなのかもしれない。
もしかしたら、庭木の剪定や草の手入れには最適なのでは無いだろうか?
この階層においては、転ばぬ先の杖、最終秘密兵器足りえるポテンシャルを秘めた凄いハサミの気がする。
実際に俺の命を救ったと言っても過言では無い。
俺は入れっぱなしにしておいた忘れられたハサミ、マジックシザーに助けられたのだった。
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