第307話 ドリュアス
俺は今13階層を進んでいる。
「ミク、ありがとうな」
「海斗、いきなりどうしたのよ」
「先週休ませてもらって、家族旅行に行ってきたんだけど、行って良かったよ。ミクのおかげだよ」
「私は何もしてないけど」
「いや、家族旅行にでも行ったらって言ってくれただろ。俺にその発想はなかったから。両親共喜んでくれたよ」
「そう、良かったじゃない」
「父親とも思いのほか話せたし、また機会があったら行ってみるよ」
ミクと話しながら進んでいるが、かなりこの階層にも慣れて来た。
大型のトレントも混じっているものの、問題無くダンジョンを進んでいる。
「ご主人様、敵モンスターです。3体います」
「それじゃあ、さっきと同じ感じで行ってみようか」
この階層のトレントは待ち受け型なので焦っても全く意味は無いので、落ち着いてゆっくりと近づいて行く。
前方に大型のトレントが小さく見えてきたが、2体しか見えない。
もう一体はどこだ?小型のトレントが混じっているのか?
「シル、3体目が見えないんだけど、どこにいるか分かるか?」
「はい、小さくですが見えています。ただあれは……」
「どうかしたのか?」
「はい。あれは木の精霊ドリュアスだと思われます」
「木の精霊って敵なのか?」
「海斗、言っただろ、神だろうが悪魔だろうが敵なんだよ。精霊も敵に決まってるだろ」
俺の目にはまだ見えないが、シル達には見えているようだ。木の精霊と言うぐらいだからトレントに羽でも生えているのかもしれない
警戒しながら更に近づいて行くと、俺にも目視する事が出来た。
大型のトレントの丁度間にそれはいた。
そこに居たのは緑色の髪をなびかせた女性だった。
「シル……あれが精霊か?」
「そうです、木の精霊ドリュアスに間違いありません」
木の精霊って完全に人間に見えるぞ。しかもかなりの美人だ。
「あれと戦うのか?」
「もちろんです。倒さなければ進めませんので」
考えてみると今までゴブリン等の2足歩行のモンスターはそれなりに戦ってきたが、完全な人型となるとベルリアだけだろう。
しかもベルリアは、おっさんで完全な悪役スタイルだったから躊躇する事はなかったが、目の前の綺麗な女性を倒さなければならないのか?
どこからどう見ても人に見える。緑の髪なのでどこかの美人コスプレイヤーだと言われたら完全に信じてしまうレベルだ。
「みんな………」
「海斗、しっかりして。人に見えても人じゃ無いのよ」
「海斗、見た目に惑わされるな」
「やるのですよ」
俺以外のパーティメンバーは冷静のようだ。俺も気を取り直して指示を出す
「ドリュアスは能力がわからないから、大型のトレントから叩こう。右のを俺とあいりさんとシルで左をベルリアとルシェとヒカリンでやるぞ。ミクとスナッチはドリュアスを牽制してくれ」
それぞれの役割を果たすべく、攻撃を開始する。
今回は大型2体と未知の敵なので、出し惜しみは無しで行く。
大型のトレント目掛けて俺とあいりさんが駆けていくが、行手を草や蔓が邪魔をしてくる。
今までの大型トレントは、こんなのは使って来なかったのでドリュアスの能力かもしれない。
武器で蔓を斬りながら進もうとするが、手間取っている間にトレントの攻撃が眼前に迫って来たので、大きく避ける。
無事に避けたと思った瞬間、更にトレントの枝から蔦が伸びて来て俺を捕らえようとして来たので、バルザードで蔦を振り払う。
あいりさんも同じ状況だが、脚が鈍った所を、トレントが連続攻撃をかけてくるので今度はバルザードの斬撃を飛ばして迎撃する。
ありがちなパターンなので焦ったりする事は無いが、思うように攻撃出来ず、非常にまどろっこしい。
ミク達もドリュアスを攻撃してくれているようだが、周囲を覆う蔦や植物に攻撃を遮られているようだ。
もしかしたら先にドリュアスを仕留めた方が良かったかもしれない。
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