第189話 対クヌム
俺は今神もどきと戦っている。
偽セクメトを倒したので、まだもう1体いるものの、異様な恐怖から解放されて力が抜けかけた。
見えない病原菌って本当に怖い。見えるわけではないので言葉だけしかわからないが、イメージすると怖すぎる。
近づいて来たけど多分大丈夫だよな。あとでしっかりうがいと消毒をしておこう。
ほっとしながらもう1体の方を見たが、大変なことになっていた。
ベルリアが奮闘しているが、あれはなんだ?
土人形?いやミクが人間創造と言っていたから土人間か?
偽クヌムによって土人間が10体ほど生み出されており、ベルリアが片っ端から斬り伏せているがすぐに次の土人間が生み出されている。
土人間も一応手には武器を持っており十分に殺傷能力があるように見える。
「みんな、疲れてるところ悪いけどベルリアの加勢に行くよ。明らかにベルリアだけだと手数が足りないみたいだから。土人間には魔核銃は効果が薄そうだから、ミクとスナッチは本体を牽制して。」
俺とあいりさんはそのままベルリアに並んで土人形を倒しにかかる。
「マイロードご助力ありがとうございます。大した強さではないのですが斬っても斬っても減りません。」
3人になったことで少しだけ余裕をもって対応できるようになったが、相手は常に10体なので依然劣勢が続いている。
「ルシェ、真ん中の奴らに『破滅の獄炎』を頼む。」
ルシェの攻撃も加わり、一気に5体の土人間を葬り去ることが出来たが、次の5体にかかっているうちに再度5体の土人間が生成されて10体になってしまった。
偽クヌムのスキルなのかもわからないが土人間が増え続けMPの底が見えない以上、ほぼ無限ループに近い。
何回か同じ事を繰り返してみたが、根本的な解決には至らない。
ミクとスナッチも本体を攻撃してくれているが影響を与える事はできていない。
「シル、敵の本体に攻撃をかけてくれ。」
「かしこまりました。消えてなくなりなさい。『神の雷撃』」
いつもの爆音と共に偽クヌムを雷の一撃が襲ったが、消滅には至っていない。
さすがは神もどき。普通のモンスターと強度が違うらしい。
「ルシェも本体を狙ってくれ。ヒカリン『ファイアボルト』でこっちの援護をお願い。」
偽クヌムをルシェにも攻撃させることにして、手薄になったこちらをヒカリンにサポートしてもらうことにしたが、数が多く厳しいので効果は薄いが、左手には魔核銃を携え手数を補って戦う。
苦戦しながらも土人間を凌いでいるとクヌムの方で爆音が響き閃光と炎が見えた。
どうやらシルとルシェでタイミングを合わせて同時攻撃を仕掛けたようだ。
さすがに今度の攻撃には耐えられなかったようで、体が半分吹き飛んでいるもののかろうじて動いている。土人間も消滅しなかったので、俺とあいりさんとベルリアで頑張って消滅させた。
死にかけのクヌムにはシルが再び攻撃を仕掛けて完全に消失に至った。
無事に勝利することができたもののやっぱりドロップは何も無く、結果として偽クヌムを倒したのはシルとルシェになってしまった。
全員が無傷で勝利したので良いのは良いが、このダンジョンのモンスターはやはりかなり手強い。
今までに3体出て来たがいずれも古代エジプトの神を模倣したモンスターだったので、この後も同種のモンスターの出現が予想されるが、それぞれの個体が全く違う能力を発揮してくるのでかなり苦戦しそうだ。
あとどのぐらいでエリアボスまで辿りつくのかわからないが、隠しダンジョンはそれほど広く無いはずなのでこのまま進めばそれほど遠くない段階で出会うだろう。
今の段階でも何体か思いつくが、今対峙していた相手を考えると、どこまで安全マージンを取れるか不安が募る。
「ベルリア、この後の戦闘は、俺とお前で極力前で敵を倒すぞ。頼んだぞ。」
「マイロードお任せください。精一杯期待に応えます。」