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第137話 暴食の美姫

俺は今士爵級悪魔に吹き飛ばされて動けない。

パーティメンバーが俺をかばって戦ってくれている。

名前は知らないが相手はあの士爵級悪魔だ。

シルとルシェも俺を庇って奮闘してくれているが、メンバーが次々に倒されていく。

今まさにシルとルシェが首を締めて持ち上げられている。


「やめろ!やめろー!!」


助けようと叫ぶが、体が動かない。

その直後、シルとルシェが光の粒子となって消失してしまった。


「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁー」


目の前の光景に今まで感じたことのない衝撃を受け、意識が覚醒した。


「うっ。ゆめか・・・」


次第に意識がはっきりしてきて、目を開けると、そこにはパーティメンバーとルシェが倒れていた。

シルもかろうじて立ってはいるが満身創痍の状態だった。

夢じゃなかった。みんなが俺をかばってくれていた。先程の夢とリンクする光景に今まで感じたことのない怒りがこみ上げる。

不甲斐ない自分が許せない。この不条理な悪魔が許せない。

俺がやらないといけない。

何があってもパーティメンバーは俺が守る。

命に代えてもシルとルシェは守る。

大した覚悟などなかった17年の人生の中で、この時初めて自分の命を懸けてでも為さなければならない事がある事に気がついたかもしれない。

怒りと決意が動かない体を無理やり動かして、低級ポーションを取り出すことに成功した。

震える手で蓋を開け一気に飲み干す。

まだ戦える。だがどうやって戦う。また忍び寄って後ろから強襲するか?頭を狙えばいけるか?

もう、注意を引いてくれるメンバーはいない。シルも満身創痍、この状況ではおそらく成功しない。


「お、おい。大丈夫か・・・逃げろ。」


「ルシェ・・・」


ルシェはかろうじて意識があるようだが、こんな状況でも俺のことを気遣ってくれている。俺の中でやるせない怒りが増幅する。

どうする。どうすればいい。時間はもうない。今すぐあいつを倒す方法。何か無いか。本当に俺には何も残っていないのか?シュールストラーダが1缶、殺虫剤が1缶。ライターが1個。

シュールストラーダを投げつけて、殺虫剤に火をつけてファイアブレス。

いやダメだ。時間稼ぎにはなるかもしれないがあいつを倒せるイメージが全くわかない。

俺に残されたものはもう無い。無いがまだ使用してないものが一つだけあった。


『暴食の美姫』


ルシェがレベルアップした時に発現したスキル。


スキル 暴食の美姫・・・契約者のHPを消費する事で、一時的にステータスアップを図ることが出来る。

ステータスの上昇幅は契約者との信頼関係に依存する。


発現して以来1度も使用した事はない。俺の生命を吸って発現する悪魔スキルの為、怖すぎて死蔵していた。

以前のルシェであればそれ程のステータスアップは望め無かったかもしれないが今のルシェならあるいは・・・

というよりもうこれしかない。これしか残されていない。

悪魔スキルが最後の希望というのも、なんとも皮肉な感じだがこの際目をつぶろう。


「ルシェ、『暴食の美姫』を発動してくれ。」


「えっ・・・あれ、使って・・大丈夫なのか?責任・・取れないぞ。」


「ああ、大丈夫だ。俺が責任とってやるから頼む。」


「わ、わかった、やってみる。 『暴食の美姫』」


ルシェが『暴食の美姫』を発動した瞬間、俺の体に急激な変化が訪れた。

MPを使用する時にも何かが抜けていくような気持ち悪い感覚があるが、これはそんなものじゃない。ジェットコースターの落ちる瞬間がずっと続いているような強烈な圧力と虚脱感が混在している。


「ぐううぅぅう」


慌てて自分のステータスを確認する。

俺の元々のHPは57でポーションを飲んだので全快しているはずだが今は55になっている。

あっ。

見ている間にも減っていく。大体だが2秒にHP1が減っていっている気がする。

このままだと100秒程度で俺は死んでしまう。

そうだ、スキルは発動しているんだ。ルシェはどうなった。何か効果が現れているのか?

現れてなければ、もう終わりだぞ。

死にそうになりながら祈るような気持ちで、ルシェの倒れていた場所を見た。

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― 新着の感想 ―
[一言] 危機感欠如のうえ、調子にのって仲間もろともピンチになり、ブチキレる。見事なモブですね。
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