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呪いの蟲毒の壺  作者: 山目 広介
1/2

マサル

 まーちゃん、まーちゃん。母の呼ぶ声が聞こえる。

 学校に初めて行ったときのこと。

 連れだって親と帰宅する周りを見送る。

 クラスメイトに隠れて学校に残る僕たち。

 物置から隠れて覗き見る。

 ノートや教科書の入った鞄を見つかるところに置いてあったとしても。


 ………………


 …………


 ……


「マサル起きろ!」


「まーちゃん……」


「おい、懐かしいな、その呼び名。で、いつまで寝ぼけてる?」


 ふと周りを見渡すと机で寝ていたようだった。


「小学校の入学式のときの夢見てたわ」


「ああ、だからか。荷物置きっぱだったから隠れてるとバレて怒られたな~」


「でもマコトの計画だと、実際は荷物そのままに遊びに行く予定だったのにね。見つかるのが早すぎたよ。」


 他愛ない話をしつつ、時間を確認する。リミットギリギリだ。

 俺の時間ではなく、マコトの時間がだ。

 俺はマコトに遅れたため、まだ一日の猶予がある。

 まだ裏取りが不十分だが、仕方がない。

 仮眠を取ったため、眠気が晴れた。

 一つ伸びをして、準備に取り掛かる。






 一週間前、俺たちはミスを犯した。

 オカルトの幽霊部員だった俺たちだが、そこで面白半分に呪いを掛けてしまった。

 真に迫っていたがため、興味をそそられて、つい試してしまった。

 オカルトサイトにある呪いをだ。

 そこには呪いの解呪方法も載っていた。その後の追跡調査もだ。

 しかしそれは巧妙にでっち上げた代物だ。

 呪われたヤツが道連れに、と嘘を垂れ流した。それに引っかかった。


 だがら呪いの方は本物だった。

 それは視界に入る物陰に虚ろな目をした人物が徐々に近づき一週間で殺される、と言った内容だった。

 最初はちょっとビビったが触れられないし、影響もなかったため、すぐに興味を失った。

 そしてマコトは三日で解呪を試したのだ。


 それで気付いた。

 俺も教えられて、すぐに試す。やはり俺も解呪できなかった。

 それで調査することにした俺たちは、大元の記事まで遡って助かった人や解呪の方法を探した。

 その間に実際に呪いで亡くなっている人がいることも分かった。


 恐怖が加速する。

 解呪法は見つからなかった。

 しかし解呪できる人にしてもらうということを試したのが11件もあった。

 成功例も7件もあった。だが失敗した4件は霊能者ともども亡くなっていた。

 成功例の方は追跡でもある程度生存を確認できた。

 ある程度とは1件は事故で亡くなっていたからだ。また2件は追跡できなくなっていた。


 残り4件。

 そのうちの2件では解呪した霊能者が亡くなっていた。事故と病死だという。


 あと2件。

 一人は修行の旅に行ったらしく連絡が取れなかった。

 最後の一人も誰かに呼ばれて不在らしい。


 俺は絶望した。がマコトは俺たちも解呪できる人を探せばいい、と声を掛けてくれた。

 その言葉に励まされて、俺は人を、マコトは解呪法を探すように手分けをすることにした。

 俺が見つけられない中、マコトは解呪法を見出す。

 そしてその解呪法が正しいか、本物かを調べる。

 そもそも呪いがニセモノで精神的なものはニセモノでも解呪できたりしていた。

 だから呪いが本物で解呪も効果があったものを探す必要があった。

 これがなかなか難しい。

 ある呪いに対する専用の解呪法であったりするからだ。

 解呪不能の呪いに対しての解呪法なんてものを見つけるなんて難しいに決まっている。

 だが、見つけた。

 そしてそれは俺たちと同じく解呪不能な呪いに侵され、自ら引っ張ってきたものだった。

 本来はある種の延命法である。

 しかし、最後を改変して解呪を行おうとするものだった。


 問題はその解呪法、まだ実行中だということだ。

 結果は来週だという。

 とりあえず、その準備とともに他に術がないか捜索を続行する。

 そうして今日まで無情にも見つかることはなかった。霊能者の方も捜索もダメで、連絡も未だに取れなかった。

 分かったのはこの解呪法を試している人物のリストを手に入れた掲示板での他の呪いのことぐらいだ。

 そのリストを見てみる。それはある掲示板のメンバーだ。SNSとかは使いたくないのだろう。


List

・鹿島 学

・坂巻 聖史

・佐久間 亮

・相馬 真純

・島村 正巳

・多丸 雅臣

・津山 仁

・沼川 理

・浜口 勇

・馬渕 和馬

・山田 賢一


 とりあえず11人いる。女性がいてもおかしくないと思うんだが、何故か男しかいない。

 

「……まが……つく……も……のよ、……」


 顔を上げるとマコトがまたこの解呪法を試している人物の方法が上手くいくのか、文章を読みふけりながら頭の中で検証しているみたいだ。無駄だというのに。

 もう準備は済んでいるようだ。

 時間が迫り、解呪に向かって新たに呪いを掛けるのだった。







 そう呪いだ。呪いを合わせて強化するという呪い。その過程で猶予が生まれるため、延命法になるのだ。

 そもそもどういう呪いなのか?

 蟲毒。ウィキで調べると下記のようなものだ。


『犬を使用した呪術である犬神、猫を使用した呪術である猫鬼などと並ぶ、動物を使った呪術の一種である。代表的な術式として『医学綱目』巻25の記載では「ヘビ、ムカデ、ゲジ、カエルなどの百虫を同じ容器で飼育し、互いに共食いさせ、勝ち残ったものが神霊となるためこれを祀る。この毒を採取して飲食物に混ぜ、人に害を加えたり、思い通りに福を得たり、富貴を図ったりする。人がこの毒に当たると、症状はさまざまであるが、「一定期間のうちにその人は大抵死ぬ。」と記載されている。』


 蟲毒自体が呪術なのにこの『毒』を得るための方法を用いて、『蟲』を『呪い』に置き換えて強力な呪いを作る、そのとき時間が掛かるためそれを転用して延命法にした。そしてその延命している最中に、それをさらに変化させて解呪をしようというのがこの方法だ。


 延命法としてのこの呪いは、解呪不能な呪いに二つ掛かる人がそれを壺に一週間封じることで、またそれを百種の呪いが集まるまで行うという。

 つまり99週、つまり最初に二つ、それから一つづつ追加して計百、それで約二年延命をすることが出来る、と。

 現在は毎週行うことで約二年の延命が可能になっている。

 しかし、これで大丈夫なのかという疑問は尽きない。

 マコトはもう始めてしまった。

 俺も明日までに代替案がなければ、やるしかない。

 だが懸念が二つある。

 しかもまだ結果も出ていない方法のだ。






 悩んでいたが、俺の時間も迫ってきた。

 他に生き延びることが出来ないなら、仕方がないのか。

 マコトにも相談できない懸念のため、諦めて準備をすることにした。

 そして蟲毒の呪法を始めてしまう。


 翌週、開発者の結果を待ちわびる。

 これから実行をするという宣言後、音沙汰なし。

 そしてリストのメンバーが地方新聞の片隅の記事のようなものから失敗したと推測がなされた。

 個人特定まで済ませていたのか。

 いや、それで失敗と判断できたんだからいいのだろう。

 それよりも何故失敗したかの方が問題だ。

 議論がなされる。

 そしてマコトがある推測を口にする。

 蟲毒の呪法自体も呪いなのだから数が一つ多かったために失敗をした、というものだ。

 確かに百種の呪いが集まるまで、とある。

 他のメンバーも納得する。

 一応他の事かも知れないため、議論は続けた。命が懸かっているので皆慎重だ。が、やはりそれが原因だろうと結論された。

 俺には拭えぬ懸念があるが、どうしてもそれを言う勇気はない。




 例えばだ。呪いの構成要素に解呪できる呪いが百分の一あって、それが解呪されても全体が解呪されるとは限らないのではないか。

 もしくは、呪いが喰らいあうなら、解呪できる呪いが勝たないと解呪は出来ないのではないのか。

 そんな懸念のため俺は、解呪できる呪い、しかも似た方法で解呪される呪いを選び、呪いを蟲毒の壺に封じ続けた。

 もう一つの懸念のため、マコトには内緒で。

 解呪法の捜索で呪いを調べていたため、それが役に立った。

 解呪可能の呪いが構成要素として、ほとんどを占めていれば、解呪が成功する可能性が高くなる。

 また、喰らいあう呪いがほとんど解呪可能であれば最終的には解呪可能な呪いが残る可能性が高まる。

 そういう打算から、最初から解呪のできる呪いを壺に封じてきた。

 だが残る懸念がどうしても不安にさせる。

 長いこと掛かった。延命を続けて97週だ。

 マコトが最後の仕上げにこれから向かう。

 リストのメンバーは全員連絡が途絶えた。最後の仕上げの直後からだ。

 記憶が無くなるとかなら、まだいいが。失敗したのだろうか……

 ただ待っていると眠れないだろうから、睡眠薬を使う。




 そして翌朝。マコトからの連絡はない。

 午前中、まだ音沙汰なしだ。

 昼、連絡が取れなかった。

 午後、音信不通か。

 夕方、そろそろ時間が迫ってきた。

 俺の打算でも失敗する可能性も充分にある。

 だが、残る懸念を考えれば、やる仕方がないだろう。

 もう十分に慣れた作業を熟し、準備を整える。

 最後にこの記録を掲示板に書き込む。


 最後の呪いを仕込み、解呪のための呪文を唱える。




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