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3話:魔法と水と光と陣その2

 書き方変えてみました。

   1:魔法使いと水妖魔と光の柱と魔法陣その2



「それじゃあ始めるよ!」

 作戦開始!

 この作戦で最初にする事はマキアから魔力を分けてもらう事。

 この時、まず最初の問題が生じる。別に、種族が違うから拒絶反応が起きるとかじゃなくて、問題なのは“魔力保有限界”。

 一杯になったコップに水を注ぐと溢れてしまうように、魔力の器にも容量がある為、僕の魔力保有限界ではマキアの魔力を貰いきれない。

 ならどうすればいいかというのが負担その1。

「“限界超過(リミットオーバー)”!!」

 足下に紅い魔法陣が現れて僕を囲むと、さらに魔法陣が頭の上に3つ現れる。

「海翔!? そんな負荷の掛かる魔法を使って本当に大丈夫なのか!?」

 マキアが僕に向かって止めるように言う。

 マキアが言う通り、この魔法は結構な負荷が掛かる。まぁ、限界を超しちゃう訳だし、負荷が掛かるのが当たり前なんだけどね。逆に、限界を超えてるのに魔法を平然と唱え続けられる超人がいるなら是非会ってみたい。

 それはそうと、どれだけの負担なのか言葉にして説明すると、僕の場合、限界超過(リミットオーバー)の状態を保っていられるのは15秒まで。そして、その状態が解けたら身体に全く力が入らなくなる。身体を起こすのが精一杯ってところ。伝わるかな? 

 それを今からやろうとしているんだから、マキアが止めるのは当たり前だね。

 まぁ、止めないんだけど。


「大丈夫、死にはしないよ」

 僕はマキアにそれだけ言って気を集中させた。

 魔法陣の光が「キゥゥン……」と音をたてながら次第に強くなっていき、高速で回転を始める。辺りは紅い光に包まれていく。

「ふー……」

 息を整える。初めての事で不安が心に渦を巻き、息が詰まるような感覚に襲われる。何かしないとどうにかなってしまいそうだ。

限界超過(リミットオーバー)……」

 さっきの言葉をもう一回言って、勢いを味方にしよう……

 と言っても多分今なに言ったのか分からないよね。

 説明すると、この魔法……というより“魔術”を発動させる為には、魔法陣を出した後に限界超過(リミットオーバー)の種類を指定しないとできない。つまり、何の限界を超えるのかを指定する一言が必要って事。

 今回は魔力保有限界を超える訳だからそれを言えば良いんだけど、その一言が不安で喉から出ないから勢いを付けようとしたって事。

 他にも、「魔法と魔術」とか「限界超過(リミットオーバー)の種類」とか色々説明する事はあるけど、またいつかって事で。

 今の説明で勢いが付けられなかったからもう一度。

限界超過(リミットオーバー)……!」

 今度こそ流れに乗って!


「“魔力保有限界拡張(ワイドキャパシタ)”!!」


 僕が言葉を響かせると、僕を囲んだ幾重もの魔法陣から紅い光が空へと立ち昇る。目には目を、歯には歯を、光の柱には光の柱を、なんてね。

 ちなみにこの柱の中は“高濃度魔粒子空間”になっていて、身体に結構な圧が掛かる。さらにもう一つ言うと、紅く光るようになった魔粒子は、目に見えない普段の魔粒子の約2倍のエネルギーを持っていて、魔力の伝達速度が相当速くなる。

 そんな光の柱が消えて紅い光が一気に晴れると、僕の頬や腕には紅く光る模様が浮かんでいる……んだと思う。いつしかこれを使ったときに晴香が言ってた。

 多分今も模様が浮かんでるんだろう。頬は見えないから分からないけど、実際に手の甲にはそれがある。


 そして15秒のカウントが始まる。


「マキア! 魔力を僕に!」

 急がないと倒れてしまう事に!

 ……と言って焦ったところで、それも結局自滅に繋がる。

 焦らずに急ぐなんて無理でしょ。なんて、ついさっきまで思っていたけど案外簡単にできるものなんだね。素数を数えられるくらい余裕がありそう。

 15秒しかない時間の中でマキアの魔法陣が出来るまでそんなことを考えていたら、紅く光る模様の上を、蒼く光る模様が上書きするように右手首を囲んだ。


「“魔力譲渡(トランファリィ)”っと、これで海翔にボクの魔力を送った筈。……こんな危ない事、次は絶対に止めるからね」

 マキアは僕を心配して言ってるんだろう。けど、次回なんてたぶん無いから心配することはない……筈。というか、こんな魔術もう二度と使いたくない。

 ともかく、これでマキアの魔力も合わさった訳だ。

 この魔力で特大の封印魔法を放つ!

「秘伝魔導書、封印の項より──」

「──縛り三重陣の型!」


 光の柱を3方向から、紫色に光る魔法陣がそれぞれ囲んだ。

 魔法を使うにはまず、魔法陣を出さないといけない。ちょっとした基本的な魔法陣ならいちいち言わなくても出せるけど、特殊だったり巨大だったりすると言わないと出せない。

 “魔導”って言うのは、さっきの"魔術"みたいに魔法とは少し違うけど、それもまたいつかって事で。

 そんなことより次!

「“崩れ落ちる邪悪の城壁”」

「“砕け散る悪徳の冠”」

「“紅い朱い真っ赤な飛沫に”」

「“足掻き足掻くは不死の悪漢”」

「“縛り、封じ、石に閉じ込め”」

「“女神は聖なる呪いを掛ける”」

 魔法の威力を上げる為の詠唱。時間の関係で完全詠唱じゃないけど、少しでも唱えておけば通常の魔法とはだいぶ違う。

 今回の封印魔法は聖属性の魔法だから、紫から白に魔法陣が染まる。

 天界式全属性魔法陣が向けられている以上、何かされる前にこっちがしないといけない。

 詠唱の次は──

「水を司る妖精の魔。ボクの力を海翔に乗せて」

 ──マキアの詠唱。

 僕ら人間のそれとは大きく違い、目的を念じて詠唱っぽく言えば成り立つらしい。

 それは詠唱と呼べるのかな……?

 マキアが詠唱(?)を唱えると、白い魔法陣が蒼くなり始め、すぐ水色に染まった。

 すると。

「頑張れ、海翔」

 マキアが耳元で囁いた。

 これだけ期待してもらったら、全力でやりきるしかないよね!

「もちろん頑張るよ!」

 右手首に蒼い模様がついた紅い腕を魔法陣に伸ばし、全魔力を込める。

「……2人とも、後は頼んだよ」

 晴香とマキアにそう言って、全魔力を放つ!


「“完全懲(かんぜんちょう)悪白縛(あくしろしばり)”!」


 聖属性と水属性の二重属性魔法!

 ……という訳ではなく、染まりやすい聖属性の性質は水属性が付与されたことで“変質”する。

 つまり、聖属性は水属性と同じ性質になった。

 水属性の重複属性魔法! この封印魔法を選んだのはこれの為!

 水色に光る鎖が3方向の魔法陣から数え切れない程伸びてきて、光の本を何重にも何重にも縛り付ける。

 この時点で既に充分な束縛だけど、さらに。突然現れた蒼く透明な石が、縛った鎖ごと、目標を飲み込む。まるで何かの水晶のような石は、中にある飲み込んだ全てのモノに容赦なく圧をかけていく。そして、普通なら光に還って消えて失くなる筈の魔法陣がぐにゃりと歪曲し、鍵を掛けるかのようにその石の表面を覆った。

 僕の腕にある紅い模様と蒼い模様が徐々に薄くなり、やがて見えない程になっていった。

 バタッ……

 光の柱は消え、天界式魔法陣も消え、蒼い鎖と石が残った。

 これで魔力を使い果たした僕は安心して気を失え──

魔力譲渡(トランファリィ)……無茶をするなとあれほど……」

 ──る訳ではなかった。

「マキア!?」

 何故マキアが魔力を!?

 ガバッ! と身体を無意識に起こしてしまった。

「海翔の事だから魔力を使い切ると思ってね。水妖魔(ウェンディーナ)は魔力を感じ取れるんだ。必要最低限の魔力だけ贈って、残りは唱えた後に贈る……最善策だと思わないか?」

「……はい、全くその通りです……」

 マキアの優しさに触れて、暖かい気持ちと申し訳無い気持ちが混じる。

 けど、まだ終わってはいない。

「晴香ー! 頑張ってー!」

 光の柱の跡地に近付いていく晴香にエールを贈る。

 そう、晴香の無効魔法がまだ唱えられていない。

 これから晴香はあの水属性の塊を無効魔法で消す。

 それはとても難しい事だけど晴香はやってのけるだろう。

 ──っていうのは嘘で、実はすごく簡単なお仕事。晴香は呼吸のようにこなすだろう。

 何故簡単なのかって、消すのに必要な魔力は「封印魔法の魔力 (引く) 光の柱のエネルギー」だから。

 マキアが必要最低限の魔力に調節したらしいから限り無く0に近い量だと思う。

 晴香が拡げた手のひらをそれにかざし、

「秘伝魔導書、無効の項より──」

「──打消し一重陣の型」

 文字を読むように晴香が言うと、「キゥン」と小さく高い音を鳴らして手のひらに魔法陣が現れた。

「“基本動作”、無力化」

 パァン!

 蒼い鎖も石も砕け、破片が空を舞い、溶けるように消えていった。

 作戦成功。

 ようやく騒動が収まって、何も変わらない日常が取り戻される……と、思っていた。

 無効魔法を唱えた晴香が、何故か焦ったようにこっちへ走ってきた。

「晴香? そんなに慌ててどうしたの?」

 僕が晴香に問い掛ける。

 もう対処は全部終わって、一件落着した筈なのに……

「はぁっ……はぁ……」

 息を整えた晴香が口を開き、声を出す。

「柱の本にいた人が……」

「いた人が……?」

 一拍おいて、続き。


「私や海翔と同じ......“黒髪”なの……」

「え……?」


 ──“黒髪”

 それは、“第三次魔法国際戦争”でこの国、「(やまと)」が敗ける前、独特な文化を持ち、独自の誇りを持っていた“黒髪の一族”の特徴。

 そしてそれは、『純血の証』

 対戦国から落とされた惑星魔法(プラネタ)は一族の人口を半分まで減らす程に強過ぎる、狂気染みた魔法だった。

 それを終止符として戦争は終わったが、敗けた倭はそれから半世紀程植民地として支配され、生き残った黒髪の一族にほとんど純血はいなくなった。

 この学校には僕と晴香しか純血はいないし、そもそも全国にさえ八家しかいない。

 まぁ、純血とか混血とか、別に大して変わらないんだけど。


「“基礎魔法(ベーシック)回復(セラ)。取り敢えず海翔も来て!」

 晴香が回復魔法で僕を動けるようにすると、僕の手を引いてそっちに向かう。


 突然の暴走、光の柱、天界式、全属性、黒髪……

 一体何者なんだ……!?

 ◼◼です。遅れてしまってすいません。

 詠唱って考えるのすごい大変なんですね。皆さんどうやってあんなに考えてるんでしょう?

 えー、今回は世界観の設定を認知してもらおうと思いまして、謎っていうか、伏線もどきというか、自分なりに色々残してみました。

 多分次回は謎の答えが、違和感の言い訳が、色々と解(説)かれると思うので、待っていてくれると幸いです。

 それと、海翔と晴香は黒髪です。ラノベみたくカラフルなイメージで読んでた人には謝らないといけませんね。この場を借りまして、謝罪致しましょう。すいません。

 ......これからも「僕は運命に逆らう為に魔法を駆使する。」をよろしくお願い致します。

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