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ランチ

作者: 竹仲法順

     *

 九月になると、少し冷え込み出す。その日も昼までオフィスに詰め、パソコンのキーを叩いていた。普通に会社の女性社員だ。一日中マシーンに向かう。合間にフロア隅にあるコーヒーメーカーに行き、コーヒーを注いで飲んだりするのだけれど、眠くなれば、その頻度が高くなる。

 お昼になり、同僚の佳那(かな)があたしに、

彩貴(さき)、今からお昼どう?」

 と言ってきた。

「ええ。……確か、最近目抜き通りに、新しいランチ店出来たわよね?」

「うん。あそこ結構安いわよ。手頃な値段で食べられるし」

 佳那がそう言ってスマホと財布を持ち、早くも行く気満々でいる。あたしも軽く息をつき、

「――行きましょ。佳那もお腹空いてるんでしょ?」

 と言ってみた。

「朝あまり食べないから、昼前にお腹空くのよね。仕方ないんだけど」

「じゃあ、今日はそのお店に」

 言った後、スマホや他の貴重品などを身に付け、歩き出す。女二人の昼食だ。別に変わったことはない。話題というものはそうないのだ。単に今見ているドラマの話や、流行っているネット上のサイトのことなどがメインになる。思っていた。佳那も会社でいろいろあって、疲れているだろうと。あたしも同じ事務員なのだけれど、仕事はきつい。

     *

 店に着き、

「ここね」

 と言うと、佳那が、

「ええ。ランチは日替わりだけど、値段の割にはなかなか行けるわよ」

 と言い、入っていく。追って入店した。中は小奇麗な感じで作ってあり、一際洒落ている。すぐに思った。いいところねと。佳那が窓際のテーブルに座り、あたしも向かいの席に座ると、

「日替わりとコーヒーでいいわよね?」

 と言ってきたので、頷く。佳那がウエイターにオーダーした後、お冷を一口飲み、持ってきていたスマホを見ながら、五分ほどディスプレイに目を落としていた。そして目を上げ、

「彩貴、今度の休みの日にまた食事しない?食欲の秋っていうぐらいだから、お腹空くでしょ?」

 と言ってくる。頷き「ええ」と返すと、佳那が、

「じゃあ決まりね」

 と言って笑顔を見せた。ものの数分ほどで食事が届く。その日のメインは魚だった。こんがりと焼いてあり、付け合せに彩のいい野菜サラダが添えてある。冷めないうちに食べ始めた。コーヒーを飲みながら、だ。店内は昼時なのだけれど、そう混んでない。揃って食事を取った。また午後からの仕事のことを考えると、幾分憂鬱になる。だけど、誰もがそう思っているだろう。実際、向かいの席にいる佳那も仕事での愚痴は抜けない。まあ、会社員なら誰もがそういった思いをするのに変わりはなかったのだけれど……。

 食事を取り終え、レジで会計を済ませてから、店を出た。外は来た時と同じように冷えている。あたしも思った。これから秋が深まっていくわねと。曇天の中、会社まで歩いていく。時間に余裕を持って、だ。

                                (了)


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