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008 信用と信頼は、違うと思います。

またまたびっくり。お気に入り登録600件突破、誠にありがとうございます。毎日のごとくご感想も頂いておりまして、励みとプレッシャーを感じております。

誤字脱字修正しました(131031)

「さてユタカさん。わたしからもひとつ、お伺いしてよろしいでしょうか」

「はい。なんでしょう」



 尊敬する両親の教えのひとつ、「都合の悪いことは、聴かなかったことにする」を発動しまして。わたくし先程のダメージから素早く立ち直りました。

 あ、ちなみに。わたし達はまだ先程の書庫にいます。

 

 ここは主に、この皇都アナウの物産―――近隣でとれる食べ物からつくられている工芸品、それらを販売する工房や市場から皇帝御用達の店まで―――について書かれたものが納められているそうで、まさにわたしにうってつけ。

 閲覧禁止でないことをしっかり確認してから、気の向くまま、本棚から抜き出しては眺めております。



 あ、そうそう。

 何でこっちの言葉が読めるんだと突っ込まれた方も、おられますよね?

 もちろんこれも、魔法で解決です。

 サカスタン皇国は、現在のアメリカ合衆国やカナダ、スイスやかつての古代ローマのような多民族国家だそうで、主要言語だけでもふたつ。それをいちから覚えるなんて、大変じゃぁないですか。


 ルーカス氏は面接の時こそ日本語をはなしてくださいましたが、スズメ(ハーピーと呼んだ方が良い?)を料理した時にはハッスナー隊長たちがいたので、皇国公用語に切り替えてしまいました。で。わたしには、「できるとイメージしてみてください」。


 はい、無茶ぶりですね~。できましたけど。

 わたしがイメージしたのは、猫型ロボットのあれ、こんにゃくです。お肉との相性はまずまずでしたよ。



「契約させていただいた皆さんは、とても勉強熱心で、我が家の書庫をよく利用され、また私や家の者にもたびたび質問してくださいます。けれど、図書館に連れてきてほしいと言った方は、ユタカさんが初めてです」



 こんにゃくにしみた肉汁のうまさに思いをはせていると、ルーカス氏が、不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。


 

「ユタカさんは我が国、というよりこの世界は初めてですよね? おそらく豪胆で柔軟な思考回路のたまものと思いますが、界渡りをしてきたことにも、ハーピーにも魔法にも驚かれなかった」



 暗にお前は鈍いと言われている気がする。いや、単純に疑問をもたれただけ?

 悩ましいところです。



「そしてこの図書館のことを質問された。特にかん口令をしいていたわけではありませんからいいのですが、ユタカさんはもしかして、こちらの世界のことを誰かに聞くなどして、ご存知だったのでしょうか」



 すこし小首をかしげて質問するルーカス氏の花のかんばせには、例の無表情笑顔はなく。つまり警戒しているとかではなく、本当に疑問におもっているだけなのだろうなと、さっせられ。

 ならば素直に答えよう。

 わたしは開いていた本をそっと閉じ、ルーカス氏に向き直った。

 


「いえ。『異世界』とやらが存在すると、想像すらしたことはありませんでしたよ」

「想像すら、ですか」

「はい。わたしは本が好きで、物語も子供の頃から大好きで。何でも読みますし、その中にはファンタジー、たとえば『異世界トリップ』と呼ばれるジャンルのものもありましたが、まさか自分自身でそれを体験することになるとは、考えもしませんでしたよ」



 うん。そこまで空想じみた夢は持っていない。



「それから、もしこの世界からわたしの世界に帰った先輩方にお会いしたとして、こちらの話を聞けたとしても。単によくできたゲームかファンタジー小説の話だと思うだけです。話だけで異世界や魔法の存在を信じるひとは、いないと思いますよ」



 空想と現実をあえてまぜたい人はいるだろうけれど。幸運なことに、わたしはそこまで現実に疲れていない。



「まぁ、そうですよね……。ではこの図書館のことは何故」



 ふむ。何度もきくということは、ルーカス氏の一番聞きたいことはそこらしい。


 あれ? もしかしてこの図書館の存在自体が機密とか? だから要塞みたいなつくりになってるとか?

 あれれ? わたくし記憶を消されちゃいます?


 そこまで考えて、一瞬だけ焦ったものの。ちちさま、ははさま、ついでに弟よ。やっぱりわたしは鈍いようです。

 ま、いまさら慌ててもしょうがないし、存在自体機密なら、こんな目立つ建物つくらないでしょ。それにホイホイ簡単に連れてくる方が悪い。うんそうだ。

 そう思いなおしまして、素直に思ったままを答えることにしました。


 はい、考えるのが面倒になった。そう突っ込んだそこのあなた。正解です。




「え~図書館がないかとお聞きしたのは。単に、ルーカスさんのお手を煩わせたくなかったのと、わたしがケチだからです」

「……申し訳ありません。お話の前後が、つながらないのですが」



 予想外の答えだったのか、ルーカス氏がまた「美人困り顔」を浮かべている。ただしこれは餌ではない。

 と思う。



「えっと、ですね。ルーカスさんは、魔導団の30名を率いる中隊長さんですよね。わざわざ異世界まで来てリクルートするくらいですから、たぶん人手が足りないんですよね? つまりはとても忙しい、と。

 そんな方に自分で調べればわかることをいちいち訊くのもどうかな、と思いまして。で、調べられそうなところ、要は資料である本のたくさんある場所を聞いておこうと」



 ぶっちゃけわたしが面倒なだけです。疑問に思う度に人に訊くのが。日本でなら辞書をひくなり、ググるなりウィキるなりしてすぐ確認できるのに。

 さっき確かめたらどういう仕組かわからないけれど、携帯のアンテナは3本たっていました。が。日本の検索エンジンでこちらの情報は引っかからないだろう。


 まぁあと、ルーカス氏もしくはその周辺のみを情報源とするのはいやだな、と。


 だって情報はお金になります。武器にもなります。それをタダで、素直に正確に教えてくれるとは思えない。すくなくともわたしは、自分にメリットがない限りしない。

 いや友人や知己、恩のあるひとなどから頼まれれば出来うる限りこたえますよ?でもルーカス氏とわたしは本日初対面。現在口頭での契約を交わしているものの、それにどれほどの拘束力があるものか。試用期間を設けてもらったし。


 ルーカス氏は、たぶん、死なないようにはしてくれる。それは何となく感じるし、信じても良いと思う。

 でもそれが、彼の言うことをそのまま信じる事にはつながらない。ですよねぇ? みなさん。

 そしてそんな腹のうちを、本人に言うわけはありませんよねぇ?



「で、わたしはケチなので、ちょっとした調べものの度におカネは払いたくないし、本を買ったりしたくない。図書館なら本もたくさんあるだろうし、ただで借りれるもしくは調べられたりしないかな~と期待しまして。

 日本でも、旅先でもよく利用していましたから、ここにもあるのかどうかと、あるなら場所をお聞きしたかったわけです」

「……なるほどよくわかりました。わたしの手間までご配慮頂き、ありがとうございます」



 わたしのある程度正直な気持が伝わったようで、微妙に口角をあげながらも、ルーカス氏は頷いてくれた。

 たぶんぴくぴく震えるあの口元は、苦笑だとおもう。



「これから末長くお付き合い頂きたいので、いつでも何でも訊いてくださいと言いたいところですが……。おっしゃる通り、雑事に追われて中々時間がとれず、お待たせしてしまうこともありますね。それに、ユタカさんは独立心旺盛のようですから、ご自分でお調べになりたいというのも納得できますし、その点はできるだけご協力したく思います」

「ありがとうございます」

 


 末が長いか短いかはわかりませんが、仕事をともにするなら協力は大事ですよね!


 

「となると……やはり許可証が必要ですね。色々手をまわしてはみますが、なにぶん前例がない為、時間がどれだけかかるか……」


 

 根回しの方法でも考えているのか、ルーカスさんはそう言いながら弓型の美しい眉をひそめている。

 ふむ。ダメもとであれを提案してみましょうかね。



「ルーカスさん、何点か確認したいのですが、よろしいでしょうか」


中途半端になりましたが、長くなりすぎますので、一旦切ります。

次話は明日中になんとか。

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