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030  突撃皇宮訪問~!(嫌だけど)

ちょっと更新に間が空きました。

間が空いて休んでたはずなのに、優さんがキレ気味です。


「ルーカスさん」

「……はい、なんでしょうかユタカさん」

「帰っていいですか」

「ユタカさん……」

「え、いいですよね、まだ扉開けてないし、中にいる人にはわたしが来たことなんて分からないだろうし」


 言いながら、まわれ右して来た道をさっさか帰ろうとしたわたしの手を、上司にして本日の引率役であるルーカス氏が、表面上はそっと、内実はかな~り力を込めて引いた。


「……残念ながら、先触れはもう告げられていますから、この控えの間にユタカさんが来られていることは、中にいる方々にも知られています。それに、今日帰ったところで日が変わるだけで、陛下が好奇心を満足されるまでずっと呼びつけられますよ」



 チッ


 風のうわさで、ルーカス氏は「麗しの(おぼろの君」なんぞという典雅なお名前を、この宮廷内でつけられているらしい。

 その綽名もかくやと言いたくなるような美しい憂い顔に、わたしは盛大な舌打ちで応えてあげた。



 行儀が悪い? 知ってま~す。だってしょうがないでしょ。わたし、確かお願いしたよね~、ルーカスさん?


 皇帝と会ってもいいけど、出来るだけ少人数、まぁ一対一は無理にしても、お付きの武官と宰相、それとルーカス氏程度の内輪でなきゃ会わないよって。

 それに、こちとら「異国」の一般庶民。物珍しさで呼びつけるんだから、礼儀作法については期待しないでね? 服装もそれなりに礼はつくすけど、好きな物着てくよって。

 そして、会うならこの3日の内のどれかにしてちょと、日にちの候補をこちらからあげて、断ってくれるように、わざわざ誘導してあげたのに。


 みょ~にすんなりこっちの条件呑んで、しかも一番近い日付を指定してくるから疑ってはいたけれど。この、やたらでかくて金ぴか縁取りで飾られた扉の向うから聴こえるざわめきは、なんなのでしょうねぇ~~~?


 あぁちなみに。わたし達は控えの間に二人きりなわけではなく。開ける係なのか、クリーム色の上下に、金モールだのリボンだのでごてごてと飾られ、真っ赤な羽飾りのついた銀色の兜までつけた騎士? さん達が扉の両側におられますがなにか?

 ついでに言うと、ルーカス氏の憂い顔に、二人ともすこし頬を染めているようにも見えますが、なにか?



「ユタカさん。こちらで座って待ちましょう」


 「朧の君」ルーカス氏は、憂い顔のまま、控えの間と言っても10畳くらいはゆうにありそうな部屋の、壁際に置かれた椅子にわたしを促してくれる。が。


「あぁ~やだやだメンドクサイ。やっぱり受けるんじゃなかった謁見なんか」


 ルーカス氏がさした、わたしの世界で見かけたら国宝級と思われる、猫足の詰め物がみっしりつまった豪奢な椅子にドスンと腰掛け。最大限感じの悪さをだすべく、足をぶらぶらさせてながら、わりと大きな声で独り言、というより繰り言を呟いてみる。


 いや正直、監視役だかなんだか知らない騎士さん達に聞かれようが、どうでも良いので。なんなら不敬とか言って、この場で追い返してくれるのも

ウェルカムですよ? と、彼らに目を向ければ。さらに憂い顔になった気がするルーカス氏は、まるっと無視する方向で。



 呼びつけられたにも関わらず(「お目通りは呼ばれるまで待て」ってヤツですかねぇ~? 何様だゴラ、あぁ皇帝様でしたね)、騎士君たちは目をそらすし、まだしばらく待たされるようので暇だし。

 手持無沙汰なわたしは、宮殿ウォッチングを続けることにした。



 サカスタン皇国の国力から、皇宮はヴェルサイユ宮殿を想像していたのだけれど………あえて挙げるなら、トプカピ宮殿だろうか。

 いたるところが無駄にキラキラして、そのくせ妙にだだっ広く感じる。そして妙に天井が高い。こりゃ冬は光熱費が大変だろうな~いや、いつも便利でありがとうな、魔導でなんとかすんのかな~~。なんて、この控えの間に来るまでに、田舎者丸出しで天井や壁をじろじろ眺めながらそう思った。


 建国の歴史をみれば、この国は遊牧民からスタートしたもの。だから牧畜もすれど基本は農耕民族であったおフランスの宮廷よりは、同じく馬で駆ける戦闘民族であるオスマン・トルコの宮殿に似てくるのは当然かな? とも思ったり。


 って言うか、待たせるなら茶の一杯も出したらどうだろう。っく……こんなことなら遠慮(一応これでもしてるんですよ?)なんてせずに、セバスチャンを連れてくれば良かった。そうすれば待つ間、彼の素敵笑顔をじっくり堪能できたし、美味しい紅茶とアヌリン印のクッキーかパイに舌鼓を打てていたものを……。



「おなか減った……」


 昨日のおやつで味わった、薫り高いセバスチャンの紅茶とアヌリン特製のプラリーヌクッキーを思い出して、思わずため息。


「ユタカさん………」


 隣の椅子に背筋をぴんと伸ばして優雅に座るルーカス氏は、同じくため息を、でもわたしと内心はだいぶ違うだろうため息を吐いているけど、やっぱり無視の方向で。


 だって、ヤなことは朝のうちにさっさと済まそうと、午前中を指定したのが裏目に出て、もうすぐお昼だってのに、ちょっと顔合わせするだけで何時間かけんねんっ。いつも正確な腹の虫がそう泣いておりますもの。


 だよね~。意味分かんないよね~。ルーカスさんだって、お腹すいてるでしょ? 正直。


 


 そうやって、自分自身嫌味なことこの上ないなと思いつつ、ルーカス氏に無言と独り言で八つ当たりをすること数分。ようやく、動きがあった。




「クラヴェト隊長殿、……異国の魔導士殿、どうぞ」


 騎士君のうち、向かって右側のお兄さんが、兜の羽をゆさゆさ揺らして歩いてくると礼をとり、わたし達を促した。


 あ、追い返してはくれないんですね。


 わたしの好みからすれば、少々肌が白すぎるものの、黒の強い褐色の髪に、はしばみ色の目。なかなか端正なその顔を期待をこめて見上げれば。くるりと華麗にその場でターンして、扉の脇に戻ってしまった。



 ちっ。根性なし。


 往生際が悪いとは分かっているけれど。心中そう呟いてのろのろと立ち上がれば、ルーカス氏に手をとられた。たぶん逃亡防止だろう。




「皇国魔導団第二中隊隊長、ルーカス・ルリストン・クラヴェト隊長ならびに、魔導士ユタカ・コシタニ殿ご到着です」


 誰だか知らないけれど、扉の向う側にいるらしい人間が、そんな口上(コシタニはやっぱり呼びづらいらしく、『コシャタニィ』になってたけど)

を述べ。

 扉のこちら側に控えた騎士君たちが、真面目くさった表情で開け放った扉の中に足を踏み入れた瞬間、わたしは盛大に毒づきたくなった。



 おやおやおや……。偉っそうな方々が大勢、雁首揃えてお出ましですよ~。暇なのかこの国の上層部は?



 ヴェルサイユ宮殿の鏡の間か、はたまたエカテリーナ宮殿の舞踏の間か。

 いまいる入口からでは、玉座と思われる天蓋つきの椅子が霞んで見えるほど大きな広間を埋め尽くす、格好だけは煌びやかな人々の群れをひと渡り見渡せば、好奇心と色んな思惑に彩られた老若男女(男性率80%)の視線とぶつかる。


 「嫌な予想が大的中☆面倒なことこの上なしだね!」な、状況に付き合う気を完全になくしたわたしは、セバスチャン検索で確認した、王族に対する挨拶を一応とって、その場に控えることにした。


 つまり、右足をひいて~、左足の後ろで交差させ~。上体を30度ばかり下げ~、右手で帽子をとって胸の前にあてるという、あちらの歴史映画で似たもの見た格好をして、動かないことにしたのである。



 あぁぁ~~もう。めんどくさ。

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