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013 罠にはまりました。

お気に入り1,165件、厚く御礼申しあげます。にも関わらず、予告より更新遅れて申し訳ありません。


スライディング土下座って、頭からつっこめば良いのでしょうか。

「魔導団を中心として研究をすすめてはおりますが、魔獣の発生はいまだ予想がつきません。その為団の人員では手の回らない地区を中心に出動頂いている我社の皆さまには、緊急対応頂くことがほとんどです」


「はぁ、確かにそうでしょうね」


 そこだけ申し訳なさそうな笑顔にかえたルーカス氏の言葉に、とりあえず頷いてみた。



 この試用期間の一ヶ月では、開始と終わりの時間の前後と泊まり仕事はあったものの、基本は朝出勤して夕方帰宅するスケジュールでわたしは動いていた。さらには、募集時点では週2日からという話だったが、身体をこちらに慣らそうと週4日以上にしてみた。が。

 駆除する魔獣はハーピー(スズメ)クラスだったから、一番時間のかかった10メートルサイズのムカデ君でも、ばらす時間と間の小休止含めて、3時間程度。平均すれば、一日2時間程度のコアタイムである。

 通勤時間はルーカス氏と待ち合わせする場所へ行く時間のみ、こちらへは一瞬で来れるから、ロスはない。


 あとは報告書をルーカス氏の指導のもと作成したり、魔獣を料理してさらなる味の開拓をしてみたり、ハッスナー隊長の団とかちあったらご馳走したり、セバスチャン検索で知った魔導試したり、金色の雲をつくって空をかけたりしていたわけで。実に暢気なものだった。



 しかし本来駆除の仕事は、でたら対応しに行くもので、きっちりスケジュールを組めるものでは、ない気がする。


 我が日本でも、猿や猪、鹿に熊の「被害」を受けた農家や民家から連絡が来て、役所の号令のもと、猟友会などが動いたはず。予想を立てると言っても、野生動物の食べ物である山の物が豊作か否かは、山に分けはいってみねばわからず。そして彼らが里に下りてくるのは、不作の時だけではないと、何度か手伝った(邪魔してご馳走になったとも言える)マタギのおやっさんが言っていた。


 それに、こちらの獣には「魔」がつくのだから、彼らがヒトの作ったものをあさって食べないように、農作物や家庭ごみを目につく場所に捨てない。なんて対策をしたところでどれほど効果があるだろうか。



 うん。ないだろうね。


 となると、やはり救急車やパトカーのごとく、指令がかかれば、緊急出動! となるはず。


 じゃあわたしは何故スケジュールを組んで動けていたのかというと、主に後処理を割り振られていた。のだと思う。

 スライムなんかは定住型というか、一度でたら結界で閉じ込めておいてあとから駆除なんてこともできるらしいので、それをしたり。罠にかけといた魔獣をさばいたり。昆虫型のなんかは、その処理をしていたらいきなり襲ってきたのでその場で狩ったのだ。


 ふぅむ。試用期間てこともあり、ルーカスさんがきっと簡単な作業のみで抑えてくれてたんだろうな。5人いるという先輩たちの誰とも会わなかったし。ちょっと会ってみたかったのに。





 先輩たちに会いたかった云々は省いて、わたしの予想(感想?)を言えば、


「さすがはユタカさん。こちらの状況をよくお分かり頂けているようで、話が早くて助かります」


 ルーカス氏の笑顔がさらに輝きだした。



 いやもう、帰っていいですかね。

 ご機嫌麗しいのはなによりですが、結論の見えない謎の面談なんてさっさと切り上げて、お掃除しに行きましょうよ。緊急対応以外でも、仕事はたくさんあるでしょう? 先輩方にばっかり負荷かけてたら、逃げられますよ?



「ルーカスさん、シフトの件でしたら多少変則的になってもわたしは」

 

 いいかげん笑顔がうっとうしくなってきたので、罠に自らかかることになったとしても、サクサク話を進めようと思ったらば。


「時にユタカさん。差支えなければ、貴女の家族構成をお伺いしても宜しいでしょうか」

 

 はい、また俺様にぶった切られました。しかも思わぬ方向に。

 



「……は? わたしの、家族ですか?」


 それを聞いてどうしようと?


「はい。いままでお聞きしたこともありませんでしたので」


 おんや~? 今度は腹黒笑顔ですよ~~?

 なんだかこの頃、笑顔のバリエーションが増えてきましたねぇ、ルーカスさん。


「……まぁ、お話しする機会もとくにありませんでしたしね。

 家族は父母に弟がひとり、従妹ですが、近所に暮らすのでよく家にくる妹みたいなのがひとり。猫と犬が計4匹。家族とは別に住んでいますが両方の祖父母は健在です。あぁちなみに弟は大学生ですが、遺跡の発掘調査隊にしょっちゅう参加してるんで、ほとんど家にいませんね。

 それから日本中にちらばった叔父叔母従妹にはとこ、その他親戚が山ほどいます」


「……ずいぶん、血族がおられるのですね。貴女の国では晩婚化と少子化、それに核家族化が進んでいると聞いていましたが」


 美人の弓型の眉が、意外そうにひょいとあがったが、わたしは肩をすくめて答えた。


「うちの一族は、繁殖能力が強いのでしょう。それと長寿の人間が多いですね。父方の祖父の姉が最近亡くなりましたが、100歳でした。ちなみにわたしが小学生の時分まで元気だった曾祖父母は110歳を超えていました」


「100歳に、110歳。確か日本の平均寿命はそれよりはるかに下だったと記憶していますが」


「ええ。恐らくうちの親族には『長寿遺伝子』なるものが働いているのでしょう。わたしもあやかりたいと思っています」


 100歳まで呑気に元気に生きのびて、最後は笑って死ぬ! それがわたしの目標です。


「なるほど……」


 おやおや。美人兄さんが今度は、満足そうな笑顔に表情を変えましたよ。

 もうここまで来ると、笑顔だけで何種類でるのか、見極めたくなりますよね!


 



 そんなことを呑気に考えていたのが悪かったのか。



「それだけ御親族がたくさんお在りならば、ユタカさんひとりが抜けても問題はなさそうですね」


 一瞬で獲物を狙うハンターの眼になったルーカス氏に、反応が遅れた。


「……は?」

「それに、ユタカさんはこの仕事に就かれる前、放浪の旅に出ておられたし」


 は?



「ユタカさん」


 はい、嫌です。


 そう言えたら、この罠から逃げられるだろうか。相変わらず笑顔を浮かべているはずなのに、蒼い、碧い瞳にからめ捕られてすぐ後ろにいるセバスチャンを、ふりかえることすらできない。



「現在魔獣駆除に従事して頂いている5名の方は、皆さんこちらに住んで頂いております。ユタカさんも、慣れたと仰っていただいた事ですし、そろそろ引っ越してきませんか」


「………は?」


「こちらに、この世界で、暮らして頂きたい。そう申し上げているのです。あぁ、住む場所に関してはご心配なく。この別宅には空きはたくさんありますので、貴女の執事ともども快適に暮らして頂けると思いますよ」



 うん、本当に、帰っていいでしょうか。


お陰さまで評価3000PTごえ致しましたのえ、ルーカス氏視点の小話をお届けしようと思います。


勢い余って2話思いつきましたが、まずは1話。明日中の更新を目指して。

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