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011 一ヶ月たちました。今日もご飯が美味しいです。

いや~なんだかもう、笑うしかないですね。お気に入り登録が1,080件。うん。粛々と書かせて頂きます。

 はい皆様おはようございます。今日も元気だ御飯がうまい。越谷優こしたにゆたか28歳でございます。


 いや~やっぱりフルタイムの仕事につくと、月日のたつのが早いですねぇ。異世界で出稼ぎ清掃人となってから、あっという間に一ヶ月たちました。幸いにして今日までのところ、ハーピー(肉は美味しく頂き、血や爪や毛などはルーカスさん経由で高値で売れたスズメくんですね!)クラスの魔獣駆除ばかりで、労災申請する必要はありません。


 ありがたやありがたや。




 しかしまぁ~この一ヶ月。ひとくちに魔獣と言っても、実にさまざまな形状、性質(攻撃方法含む)、味のものに出会えた。


 まず、わたし達の世界にいる哺乳類や爬虫類、両生類によくにた姿、ただし大きさは数倍から数十倍のもの。ハーピーのように火を噴くものもいれば、簡単な風や水の魔術を操るものもいた。これらは野趣に富むものの、味は大体わたしの世界の類似種(?)と同じだった。


 つまり、十分美味い。


 そうそう、まだ遭ったことはないし、ルーカス氏いわくそういうものはヒトを襲ったりは通常しないらしいが、魔導に近いものを操る種もいるらしい。



 それから、ゲームの世界そのままの、スライムもいたりする。こちらの世界のスライムは、身体の深部にある核を破壊しない限り、火でも水でも風でも石のつぶてでもをなんでも呑みこみ消化する悪食。


 そのくせ彼らの浄化した(身体を通過した)水はどんな泉の水より清浄で、酒の醸造に使われることもあるらしい。うん。呑んでみたい。水はもう何度か飲んだ。「大○の美味しい水」のように甘露で喉ごしすっきり。うまい。



 あとは昆虫。とりあえず外見的特徴は、大きさを無視すれば、我らの世界のトンボにセミに蜘蛛に蟻。アブやクマ虫、蜂に蝶といったおなじみのものによく似ている。あ、蜘蛛は昆虫じゃないか。 


 こいつらは身体の構造上むずかしいのか、火を吐くものはいないけれど、酸や毒を吐くものが多い。でもその酸や毒も魔導具、特に錬金には有益なものが多いとセバスチャン検索で教えてもらったので、せっせと回収して、相場をにらみながら売りさばいている。


 あ、回収容器はホームセンターで買ったバケツ(大)です。

 いや~ポリプロピレンって、異世界製の酸にも対応するんですねぇ。「混ぜるな危険」の洗剤容器にも使われているんだから、強いんだなと思っていたけれど……。


 化学って素晴らしい。で、蓋つきのそれを魔法で大きくして、ついでに四次元ポケット化して、キシャーとか言いながら吐いてくる虫くんたちに向けて、真空サイクロンよろしく酸だの毒だのバキュームして、分別して、回収。


 ありがとう。有効利用させて頂きます。その様は、「ゴース○バスターズ」に似てるかも。つなぎはもう着ていないけれど。トイレが大変だからね。



 そうそう、虫はまだ食べてはいない。


 いや~ねぇ? 全大陸制覇したわけではないけれど、生まれた世界の方々を旅して、昆虫料理に何度か行き合ったことがあり、ものは試しと食べたこともあるけれど。どぉ~も慣れない。


 同じ地球に住みながら、まったく別個の生き物としか思えないあの姿。キシキシと鳴る関節に、ぬらりぎらりと光る身体。複眼。変則的な飛行。どれをとっても「食べるな危険」と、声高に叫んでいるようにしか思えない。


 まぁもちろん、飢えるようなら食べるけど。いまのところは保留で。材料としてのみ利用させてもらいます。はい。




 このように摩獣の特性を考えていくうちひとつ言えるのは、ルーカス氏の世界の魔獣は一部の例外を除いてみな、大きいということだ。


 セバスチャン検索によると、わたしの世界に比べてルーカス氏の世界は、ヒトが少ないらしい。人口調査を定期的かつ徹底してやってはいないようだけれど、大体5億人程度。ヒト以外の魔族やほかの種族とあわせても7億はいかないそうで、我らの世界の10分の1以下。


 我々の世界の獣も、ヒトがこれほど繁殖する前は、現在の姿より数倍から数十倍大きかった。ヒトに狩られ、喰われて行くうち大きな個体は絶滅し、住環境の変化も加わって、いまの大きさに落ち着いた。と言われている。


 ということは、だ。ヒトが増え、住む場所を拡大していき、魔獣を狩っていきつづければ、彼らもいずれ、異世界の同胞とおなじ道をたどるのだろうか。そしてわたしのように喰うものが増えれば、それは加速していくのかもしれない。



 ―――うん、先に謝っておこう。そして頂くときはこれまで以上に、心の底から感謝して頂こう。いやだってね。元から運は良いほうだと思っていたけれど、やっぱり、なんちゃってでイメージしただけで法外な魔法の使える世界で仕事を得たのは、僥倖としか言いようがないからね。今更彼らを思ってやめるつもりはないからね!




 小学校の25メートルプールで泳げなかったと言えば、沖合1キロの海に救命胴衣つきで放りおとされたり。


 腹が減ったし夜まで誰もいないし、弟と遊びにきた従妹はうるさいしと。台所にいてあった「初心者さんでも簡単! 基本のキ」とやらの本と冷蔵庫とパントリーにある材料で、小さな手にはあまる包丁で指を切り落としそうになりながら、料理したり。



 そう言えば弟と違って、わたしは生まれたとき身体が弱かったらしく、50メートル走ではゴールにたどり着く前に倒れていたほど虚弱だったのに、「弱いなら鍛えればいい」と、色々教えられたよなぁ………。




 そんな、一瞬遠い眼をしたくなる苦労も修行もなく手に入る成果。ルーカス氏の話では「実践で使える」魔導士は少ないそうだから、この仕事をつづける限り喰いっぱぐれはしなさそう。しかもいま言ったように、狩った獲物は食ってよし、魔道具の原料として売ってよしと、その意味でも食いっぱぐれはない。


 ビバ! 異世界。


 これからもひょっこり得た大きな力に振り回されないよう、十分自重せねばと気を引き締める所存でございます。まる。

 そしてもうすぐはじめてのお給料日ですから、とても楽しみです。まる。






「おはようございます、ユタカさん」


 そんなことをつらつら考えていると、ルーカス氏登場。今日もきらきら眩しいですね。駅前のド○ールが、どこかの宮殿に早変わりしたようです。


 わたしの椅子ひとつ横に座るお嬢さん。朝から化粧に余念なく、ここでやるくらいならせめて化粧室いけよと思っていましたが、つけまつげ半分の状態でひとを凝視するのは、間抜けだからやめましょうね?




「おはようございます、ルーカスさん。そして、今日もわざわざお迎え頂き、ありがとうございます」


 彼の後ろにある自動ドアは、きっと毎日奇麗に磨いてあるんだろうけど、所詮は排ガスまじりの都会のすすけた光を通しているだけのはずなのに。

 後光がさしているとしか思えないその美麗なお姿に、椅子から立ち上がって挨拶をしたものの、頭を下げるふりしてすぐ目をそらしたのは、仕方がないんです。目を保護するためです。


 季節がら、そしてここは日本の室内ですから、サングラスなどつけていませんので、ええ。



「それではまいりましょうか」


 うん。本日も無敵の無表情笑顔ですね。頭をさげた後はさっさと横に並んで歩きだしたはずなのに、横顔に突き刺さる視線が痛いのですが。


 ついでに、どうせ向うで着替えるのだからと、今日もカーゴパンツにTシャツという非常にラフなスタイルのわたしが、オーダーメイドと察せられる、襟もと、肩のラインが芸術的に美しいスーツを颯爽と着こなす、美人兄さんにエスコート(つかず離れずしっかりと腰にそえられた手がポイントです)されている姿は、やはり奇異に映るのでしょうねぇ。


 まだつけまつげ半分の状態でルーカス氏を凝視しつづける隣のお嬢さんと、レジのお姐さんのかなり痛い視線は、忘れよう。そしてしばらく待ち合わせにあの店を使うのはやめよう。




「…セバスチャン、も、一緒ですね」


 手元をちらりと見られる。無意識に癒しをもとめて見てしまった、我が愛しの執事殿。と言っても今はもとのスマホ型で、手の中にすっぽりと収まっている。


 どういう仕組みか知らないし、探究する予定もいまのところないけれど、どうやらわたしは、生まれたこの世界では、魔導を操れないようで。

 ルーカス氏はできるようだ。騒ぎになったら困るだろうから、界渡りに使う程度のようだけど。



 とりあえずこちらの世界では、セバスチャンのあの素敵な姿は、スマホの待ち受け画面と、この脳内にループ再生されるのみ。あとは、もとからの筐体の色であるいぶし銀カラーくらいしかない。非常に残念だ。



「そりゃもちろんですよ。彼はわたしの指南役、いわば先生ですから。まだしばらくの間は(できればずっと)、そばにいてもらいます」



 スマホを撫でながら、(ええほんとは、セバスチャンのすっきりした大きな手や腕を撫でたいのですが、それだとパワハラですから~)、わたしがそう答えれば。



「…なんだかあちらにお連れしたくなくなりますね……」



 ぽそりとルーカス氏が呟いた。



 ふむ。やはり、ルーカス氏はセバスチャンのことが嫌いのようだ。 少なくとも、苦手ではあるらしい。



 彼を話題にする度に、美しく弧をえがく眉が真中によっているのを今日も確認して、わたしはそう結論づけた。そして思えばルーカス氏のこの反応は、初日の帰り際から始まっていた気がする。


ちょっと長くなりましたので、中途半端ですがこちらで切りまして。次の更新は明日中にはなんとか。

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