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009 よんで、飛びださせて、ジャジャジャジャン。

欲しいものは、ゆっくり妄想できる時間と、脳裏をよぎるイメージを自在に描写できる文章力。


お気に入り登録を700件以上頂いたのに。この文章って……。

「……確認。この図書館についてでしょうか」



 眉をひそめつつ片眉をあげるという器用なまねをして、ルーカス氏が問いかえしてきた。

 無表情笑顔がデフォルトだと思っていたけれど、この方は案外表情ゆたかなのかもしれない。

 いやまだあんのかよと、突っ込まれているだけかもしれませんが。



「この図書館について、と言うよりも、この世界の権利意識について、でしょうか。この世界に肖像権や著作権はありますか?」



 またまた予想外の質問だったのか。あがっていた眉がさがり、それが中央でクッと固定され。さらには首をかしげて顎にかるく握った手をあてるという、動作まで加わりましたよ。



「肖像権。……他人から無断で写真を撮られたり、無断で公表されたり利用されたりしないように、主張できるという権利。

 著作権は、言語や音楽に絵画、その他あらゆる表現形式によって自らの思想・感情を、創作的に表現した著作物を排他的に支配する、財産的な権利。という意味でよろしいでしょうか?」



 うん。まるで辞書の説明文でも読んでいるような、詳細ありがとうございます。それであってると思います。



「まず肖像権、ですが、ないと思われます。

 街中では皇帝陛下や皇后陛下、その他皇族の方々だけではなく、宰相に著名な将軍、才色兼備の誉れ高い令嬢の絵姿や魔力を流して見えるポートレートなどが売られていますが、それらを作成するのに特に許可はいりませんし、よほどひどいものではない限り、取り締まられることもない。

 著作権に関しても、強力な魔導や魔術は暴発防止のため秘されますし、各国独自に受け継いでいるものもあり、それらを国外に持ち出すことは固く禁じられていますが……。編み出した魔導や魔術、その理論を解説したものの権利を主張し、それを使用するものから金銭などを得るという考え方は………私が知るかぎり、ありません」



 ふむ、ふむ。下々の者がセレブリティや美人さんのブロマイドを欲しがるのは、世界が変われど同じなのか。

 真面目に考えながら答えてくれるルーカス氏の説明をききながら、そんな感想をもってしまうわたしです。ごめんなさい。

 まぁ予想していた答えでよかった。



「ということは、閲覧制限のある書物には結界がはってあるとおっしゃいましたが、制限のない本にコピーガード――複写するのを阻むようなものはかかってはいない、ということですよね?」

「そうです」



 ふむ、ふむ、ふむ。ならば問題はないな。

 わたしは非常に晴れやかな心持になり、満面の笑みをルーカス氏に浮かべてみせた。



「ご安心ください。当面の問題は解決しました」

「解決、ですか?……方法をお聞きしても?」



 うん。ロイヤルブルーの瞳がきらりと光りましたね。魔導師の隊長なんてやってるくらいだから、無表情笑顔で隠しながらもルーカス氏は好奇心が旺盛なのでしょう。

 実際できるかどうかわからないし、大した思いつきでもないのですが、ご説明しましょうかね。


  と、その前に。

 ここで蛇足と思いつつも、少々説明をば。


 皆さまお忘れかもしれませんが。わたくしスズメ(ハーピーですね、わかってますよ?)調理時と、その後の食事の際に着ていた、引っ越し屋さんかガススタのサービススタッフを彷彿させるツナギから、現在着替えております。


 いやだってね。募集していた職種が「清掃業」でしたし、わたしの世界では違和感ないですよ? ツナギは。

 しかし、こちらの世界では、盛大に浮いていたと思います。ハッスナー隊長も最初は怪訝そうに見ていましたし。あとで、「異国の魔導士だから」と納得していたようですが。


 ルーカス氏のところの執事さん? は慣れておられるのか、プロ意識のたまものか、スルーしてくださいましたが。街中を出歩くのだからまずかろうと、この図書館に来る前に、変えてみました。

 ルーカス氏は自分だけちゃっかりスーツから、まさに魔導師とよびたくなるような、黒に見えるほど深い藍色のローブに着替えてますしね。

 

 いじめか? ちょっとした遊び心なのか? 好奇の目にさらすことで、わたしの忍耐力を試そうとでも思っておられる?



 洋服を変えるにあたりイメージしたのは、猫型ロボットの着○替え○メラです。実は前から欲しいと思っていまして。

 自分にファッションセンスなどかけらもないことはようく知っていますし、半端な知識で「なんちゃって中世ヨーロッパ風」の洋服をだすくらいならと、ルーカス邸における従僕のお仕着せをみせていただき、それを念写してみました。ちなみに男ものです。


 ええ回りくどいことをした自覚はありますよ。イメージするだけで瓶でも袋でもだせるんなら、そのまま洋服だしゃいいじゃん。そうおっしゃりたい。うん、わかります。


 でも使ってみたかったんだもの。着○替え○メラ。そして使えて大満足です。また使います。はい蛇足説明は終了です。



「ルーカスさんはそれで人員募集をされていましたから、わたしの世界のパソコンやインターネットはご存知ですよね?」

「ええ。最初に見た時は、貴女の世界にも魔導が存在していたのだと思いました。その驚異の技術と仕組みについては現在解析中ですが、なにができるのかはある程度知っていますし、一通りの操作は覚えましたよ」

「よかった。それなら話が早いです。わたしがパソコンやネットを使うのは、おもに調べ物をするときですが、探していた文章やイメージなどのデータ容量が大きい場合やそれを保管したい場合、ダウンロード―――自分のパソコンに複写しています。

 わたしの脳の容量には限界がありますし、一度みたものをすべて記憶できる能力は残念ながら持ち合わせていませんので、それをパソコンにしてもらうわけです」



 説明しながら、お仕着せの上着の内ポケットに入れていたスマートフォンを取り出して、ルーカス氏との間にある机の上に置く。



「容量は制限されますし、パソコンでのネットに比べれば転送速度は遅いですが、この機械でもそれとおなじことができます」

「あぁ。スマホ、ですね。一時期買うべきかと悩みました」



 さらり答えたルーカス氏。思わずのけぞりそうになりましたよ。


 おおう。スマホ呼びするとは、一年半日本を離れていたわたしより、よほど詳しいじゃぁないですか。

 たぶんいまの説明だけじゃわからないだろうから、実際に見せてあげよう。そんな上から目線でロックを解除しようとしたスマホを、思わずゴトリと落としてしまいましたよ。



「え~……。わたしの解決策というのは、この子を少々いじりまして、こちらの図書館の閲覧制限がかかっていない本すべてを、ダウンロードしてもらおうと思ったんです」



 自分より詳しいかもしれない人に説明ってしづらいですよね?

 さらっと流してしまいたくなりますよね!?



「………私の認識不足だったら申し訳ないのですが、ダウンロードできるのは、デジタルと呼ばれる形式のものだけだったと思うのですが……? あぁ、スマホについているカメラで、本のページを写して保存するのでしょうか?」



 はい。流させてくれませんでした。

 金糸の髪をさらりと揺らして、ルーカス氏は小首を傾げておられます。


 

「―――本当に、よくご存知ですね」

「契約者の皆さまがお持ちで、何度か使わせていただいたことがありますから」



 お見それしました。

 じゃぁもういいですね。もうやっちゃいましょう。



「立体のものや一枚ものならそれもいいのですが、今回はこの図書館の閲覧制限のかかっていない蔵書全部ですから。とりあえず。カメラで写して、データ保存してなんてしてたら、何年かかることやら。なので、自分で読んで記憶してもらいます」

「………は?」



 うん。美人さんのあきれ顔は、心に突き刺さりますねぇ。「なにいってんだお前?」そんな副音声が聞こえる気がします。

 でもいいのです。ここはわたしのつたない説明を重ねるよりも、実際見てもらった方が早いんです。


 というわけで。わたしは手の中でもてあそんでいたスマホに片手をかざして、口をひらいた。


 

「おいでませ、セバスチャン!」



 ルーカス氏に説明している間に十分、イメージは固まっていたので、若干変なテンションになっていたかもしれません。

 それは認めます。







「――お呼びでしょうか、ご主人さま」



 よんで、飛びださせて、ジャジャジャジャン。 


 入口以外の壁を覆う棚は、すべて重そうな革表紙の本で埋め尽くされ、あとはわたしとルーカスさんが座っている硬い木の椅子と、長方形の簡素な机がひとつ。それでいっぱいの小さな書庫。

 そんな小さな部屋に、わたしの変なかけ声で忽然とあらわれたのは。


 長身痩躯、こめかみに銀髪のまじる朽ち葉色の髪をうしろにとき流して。けぶるようなグレイの瞳を笑みの形に細めた、ナイスミドルな口髭のおじ様でございました。

 

ふぅぅぅ………。ようやっとセバスチャンをだせました。

しかし情景描写、会話文ともにいまいち気にいらないので、その内書き直すと思います。

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